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[総理杯]関西学院大、積極采配で昨季の悔しさ晴らす初優勝

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[8.16 総理大臣杯決勝 明治大0-2関西学院大 キンチョウ]

 夏の大学日本一決定戦「第39回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント」の決勝戦が16日にキンチョウスタジアムで行われ、関西学院大(関西1)が2-0で明治大(関東1)を下して初優勝を飾った。

 関西学院大は、J1ヴィッセル神戸に入団内定のMF小林成豪を累積警告による出場停止で欠いたが、MF森俊介の左足の鋭いキックを武器にセットプレーでチャンスを量産。ともに後半に投入したMF池田優真、FW中井栞吏が74分、86分、ともにミドルシュートで相手GKの頭上を射抜いてゴールを奪った。

 関西学院大は、積極采配が奏功した。成山一郎監督は「後半は、点を取りに、勝ちに行った。去年のインカレ(全日本大学選手権)の決勝戦で流経大と対戦したときに、試合が0-0で進んで、完全に僕は采配をビビっていた。采配を失敗して負けたらどうしようとかいうことばかり考えていた。そこで先に失点して慌てて交代したけど、そのまま負けてしまったという悔しい思いがあった。だから、今年は自分から決断して、勝ちをつかみに行こうと思った。最後は0-0の状況だったけど、点を取るための選手を入れた」と後半に選手交代を続々と行った理由を話した。

 試合は、全体的にボールを保持して攻める時間は明治の方が長かったが、決定機の数では関西学院大が上回った。前半の30分が過ぎる頃には、前線でキープできない関西学院大に対し、明治大が連続攻撃を仕掛ける場面が増加。しかし、関西学院大は主将の井筒陸也を中心とする強固な守備で決定的なシュートを許さずに耐えた。

 一方、明治大も右DFでフル出場した室屋成が「前半は全体的に動きが硬かったけど、想定内。チャンスを決めきれなかったところが、相手との差。攻撃はいつものような調子ではなかったけど、守備陣では失点をせずに延長戦やPK戦になっても良いと思いながらやっていた」と前半を振り返ったように焦れずに攻撃を展開した。

 前半の山場は、37分に訪れた関西学院大の左CKだった。森俊介のセンタリングを左DF小川原一輝がヘッド。しかし、明治大のGK服部一輝が好守でしのいだ。

 両チーム無得点で迎えた後半は、打ち合いとなった。関西学院大は53分、63分と立て続けにエースの呉屋大翔がゴールを強襲。明治大は72分に室屋のクロスを瀬川祐輔がダイビングヘッド、76分には再び室屋のクロスでチャンスを作ったが、相手DFの背後で待ち受けたFW藤本佳希にはわずかに合わず、打ち切れなかった。直後、関西学院大は中井と小野晃弘を同時投入。55分の池田投入と合わせ、積極的な交代策で攻撃を加速させた。そして79分、呉屋からのパスを左サイドで受けた池田がセンタリング。

「雨が降ってスリッピーだったので、GKとDFの間を狙ったクロスだった」というボールは、相手に当たってコースが変わったこともあり、GKの頭上を射抜く弾道となってゴールへ飛び込んだ。思わぬ形で先制点が生まれ、明治大は選手交代で4バックから3バックに変更し、室屋、高橋諒の両DFの攻撃参加を生かす形を取ったが、83分に高橋の左クロスを藤本が合わせた決定機も相手GKの好守に阻まれて実らなかった。

 すると、86分に今度は関西学院大GK上田智輝のロングキックを受けた中井が、ミドルレンジから思い切った山なりのシュートを放ってゴール。勝利を決定付ける追加点を奪った。

 2-0でタイムアップを迎え、関西学院大のイレブンは熱い抱擁をかわした。得点自体は幸運にも恵まれたものだったが、監督の采配と同様に積極性が実ったものだ。主将の井筒は「あのゴールが入らなくても、どれかは入ると思っていた」と話し、エースの呉屋も「自分たちの雰囲気で試合をやれた。普段ならあり得ないようなゴールシーンだったけど、引き寄せられたのは、自分たちが頑張って取り組んで来た結果だと思う」と試合の流れを引き寄せていた自負をのぞかせた。

 2回戦、3回戦と退場者を出し、決勝では主力MFが欠場。とにかく困難がつきまとった大会だったが、最後まで積極性を失わず、昨冬からの成長を証明する初優勝で幕を閉じた。

[写真]FW中井の決めた2点目のシーン

(取材・文 平野貴也)

●第39回総理大臣杯特集

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