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「10分あれば…」指揮官の期待に応えた全日本大学選抜の“切り札”MF松木

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[3.20 デンソーカップ第13回大学日韓定期戦 全日本大学選抜2-1全韓国大学選抜 等々力]

 指揮官の、チームの期待に応えてみせた。全日本大学選抜は全韓国大学選抜に2-1の逆転勝利を収めた。1-1に追いついて迎えた終了間際の後半44分、決勝点をアシストしたのは途中出場のMF松木駿之介(慶應義塾大1年=青森山田高)だった。

 この日の全日本大学選抜は前半から相手に圧倒されると、思うようにボールを動かせず。2トップのFW松本孝平(国士舘大3年=藤沢清流高)とFWジャーメイン良(流通経済大2年=流通経済大柏高)は厳しいマークに苦しみ、足元へつけるボールは強く狙われ続けていた。そして前半26分に失点。1点を追う中でも攻撃の糸口を見つけることはできず、苦しい戦いを強いられた。

 そんななか、ベンチの選手たちは「この雰囲気を変えられるのは途中出場の選手しかいないだろう」と自分たちを奮い立たせていたという。松木も「前半で力負けしていて、中でやっている選手は相当ストレスを感じているなと思っていました」と外から見ていた印象を振り返る。そして後半もなかなか得点は生まれず。0-1の後半37分に松木は3人目の交代カードとして、ピッチへ送られた。

 チームは後半42分に1-1に追いつき、同点弾の2分後に松木が仕事を果たす。左サイドからドリブルで持ち込み、サイドをえぐってカットイン。「最初は自分でシュートを打つつもりでした」と振り返ったが、正面で待ち構えていたMF重廣卓也(阪南大2年=広島皆実高)とアイコンタクトすると、マイナスに折り返した。これを重廣が決めて、全日本大学選抜は2-1の逆転に成功。殊勲のアシストを果たしたMFは「最後に出させてもらって、ああいう形でカットインまで持っていけたのは嬉しかったです」と微笑んだ。

 チームを率いる宮崎純一監督(青山学院大)は「非常に短い時間でも結果を出すことができるし、得点を取るポイントに入っていって、そこで結果を残すことができる集中力を持っている」と松木の評価をコメント。

 この日の起用についても「今回の試合に関しては、10分あれば何かしらチャンスがあるんじゃないかと、松木を投入して、期待通りに彼が自分の気持ちをピッチで発揮してくれた」と称えた。

 日韓定期戦直前に行っていたマレーシア遠征。14日のアルビレックス新潟シンガポール戦でも、松木は後半39分に出場すると同45分に3-0に突き放すゴールを決めており、16日のジョホール・ダルル・タクジム・セカンド戦では先発すると後半アディショナルタイム2分に5-0とするゴールを決めていた。

 疲労が見えてくる時間帯で仕事を果たし続けるMF。マレーシア遠征を通じては「最後の最後で仕事ができるというのは、自分のなかで自信になりました」と振り返る。だからこそ、この日の試合で投入されたときには「今日も自分を信じてくれて、ああいった状況で使ってくれて。信頼を感じましたし、期待に応えないといけないとは感じていました」という。そしてしっかりと信頼に応えた。

 ルーキーイヤーとなった昨季の慶應義塾大では、開幕戦で先発デビューを飾ると、前期リーグは1試合を除いて11戦中10試合に先発出場。日ごろから“ジョーカー”的な役割をしているわけではないゆえ、全日本大学選抜での起用には葛藤があるのかと思いきや、本人は「ラスト5分でも仕事できると自分に言い聞かせて割り切ってやっていたので」と淡々と話す。

「(今まで)スタメンで出て調子が悪くても、最後まで貪欲に点を狙っていましたし。今日も残り数分で使っていただけたと思う。そういう姿勢は自分のなかで大切にしていきたいなと思っています」

 170cmと決してサイズは大きくないものの、脅威的な跳躍で力強いヘディングをみせたと思いきや、鋭いドリブル突破で推進力をみせるMF。誰よりも計算できるからこそのジョーカー。松木が全日本大学選抜の最高の切り札となるべく、その存在を日韓戦で示した。

(取材・文 片岡涼)
●2016年全日本大学選抜特集

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