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[MOM383]明治大MF佐藤亮(1年)_FC東京へ「帰る約束」胸に、紫紺のルーキーがまず1点

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.15 関東大学リーグ1部第7節 明治大2-2専修大 味スタ西]

 華やかな道ばかりを歩んできたわけではないからこそ、一つのチャンスの重みはわかっていた。明治大のU-19日本代表MF佐藤亮(1年=FC東京U-18)は専修大戦の1-1で迎えた後半17分に途中出場すると、出場から1分後に2-1の逆転ゴールを決めた。直近2試合では途中出場で1、2分のみのプレー時間だったが、この日は約30分を与えられると起用に応えた。

 炎天下での一戦で足が止まる選手も出てきた時間帯。明治大は2トップの一角を担っていたFW岩田拓也(4年=FC東京U-18)に代えて、佐藤を投入。最近の試合では右サイドでの起用が多かったが、この日はMF土居柊太(3年=浜松開誠館高)の後方に位置する2列目左サイドへ入った。

 栗田大輔監督は「練習から調子が良く、得点力がある選手なので」と評価を語り、「2列目でしっかりボールを受けられる選手がいた方がいいと思った」といつもよりも早い時間帯にルーキーを投入した理由を明かす。

 これまでの最多プレー時間は開幕戦のわずか17分。その後は13分、1分、2分とささやかな時間しかピッチに立つことは許されてこなかった。それでもこの日は後半17分に出番はやってきた。「ずっと出場時間が短かったけれど、今日は少し長めだった。そういうなかで自分がやらないといけないのは結果を残すことだった」。ルーキーは仕事を果たすと強く誓い、ピッチへ足を踏み入れた。

 すると出場から約1分後にチャンスはやってくる。MF柴戸海(3年=市立船橋高)から受けたMF道渕諒平(4年=仙台ユース)が右サイドから仕掛ける。「中で待っていたけれど、道渕さんがもう一つ中に来てくれたので。動きを変えてマイナスで受けられるかなと、一瞬の判断で変えたら、フリーで受けることができて、やさしいボールがきたので決めるだけでした」。ゴール前左に待ち構えていた佐藤は冷静に右足シュートを決めた。

「ユースのときからああいう形はあったので、あそこにボールが来るのは想定内。落ち着いて決めることができた」とシュートシーンは冷静そのものだったが、ゴールネットを揺らした瞬間には喜びを爆発させた。右手を高く突き上げ、応援スタンド前に一目散に走り寄ると高くジャンプしてのガッツポーズ。ベンチの先輩たちに抱きとめられ、笑顔を弾けさせていた。

 昨年はFC東京U-18で10番を背負っていた佐藤。その経歴だけ見れば、常に陽の目を浴び続けてきたように思われがちだがそうではない。「ユースの1、2年生では途中出場ばかりでした」と自ら話す通りだ。だからこそ「途中出場の難しさや厳しさは十分にわかっているし、どれだけアップが大切なのか自分の中ではわかっているので」と言う。この日も淡々と出番が来ることを想定して準備に集中。そして、出場直後のファーストプレーで結果を出した。

「アップに専念しすぎて得点シーンを見逃しちゃうことが多いんですけどね」と苦笑したルーキーだったが、「でも今、自分がどうすべきかは自分でわかっているし、まずは自分の準備をしっかりしないといけないので」と持論を口にした。

 明治大で新たなスタートを切っている佐藤だが、高卒でプロ入りしていた可能性もゼロではなかった。FC東京U-18では比較的遅咲きだったこともあり、高校3年生の春頃は「プロは上のまた上の世界」と捉え、大学進学しか考えていなかったという。しかし高校最終年で結果を残したことで、シーズン後にはクラブから「トップにいきたいか、大学にいきたいか」と問われた。道が拓きかけたが、自らの足元を見つめた佐藤は大学進学を決めた。

「高卒でプロに行くよりも、大学で4年間鍛えなおして、自分は背も身体も小さいので、そういった面で一回りも二回りも大きくなってFC東京に帰る約束をしました」

「自分は高卒でプロへ行くのは難しいと思っている部分があって。もしつぶれたときに将来どうするかなど先に考えてしまったんです。4年間でもう一度鍛え直して、戻りたいと思っています」

 まずは大学リーグ1点目を挙げた。1年目の目標について問われたルーキーは「早くスタメンを取って、どこの大学生よりも、もちろん4年生に限らず、誰よりも点を取ることを目標にやっています」と力を込め、「それと代表に定着し続けること。世界と戦える選手になることが1年目の目標です」と前を向く。

 青赤軍団の10番を背負っていた佐藤亮から、紫紺のユニフォームをまとった新たな佐藤亮へ。愛すべき青赤のユニフォームへ再び袖を通す日、FC東京のサポーターから「おかえり」と声をかけられる日がやってくると信じて。そしてその先には……2020年の東京五輪で日の丸を背にピッチへ立つ日を見据えて。一歩ずつ、一歩ずつ、夢を実現させるために結果を残し続ける。

(取材・文 片岡涼)
●第90回関東大学1部L特集

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