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“空白の11人目”明治大FW岩田拓也は献身的プレーで全2得点に絡む

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全2得点に絡んだFW岩田拓也

[10.15 第90回関東大学リーグ第18節 明治大2-1慶應義塾大 江戸陸]

 “空白の11人目”が全得点に絡んだ。明治大慶應義塾大に2-1の逆転勝利を収め、6年ぶり4度目の関東大学リーグ1部優勝を果たした。同点弾をアシストし、決勝点につなぐパスを送ったのはFW岩田拓也(4年=FC東京U-18)だった。

 前々節の流通経済大戦(2-1)、前節の日本体育大戦(2-1)でいずれも先発した岩田だったが、決定機を外していた。それゆえ、優勝決定のかかった今節では先発落ちの可能性があった。

 慶大戦の前日練習前に行われたミーティング。先発メンバーの名が読み上げられたが、その数は10名。「あと一人はきょうの練習を見て考えたい」と栗田大輔監督は話した。名前を呼ばれなかった岩田は「その前の試合で何度もチャンスを外していたので、自分のなかでは悔しさもありましたけど、納得している部分はありました」と指揮官の判断を受け入れたという。

 そして前日練習を終えた後のグラウンド。栗田監督から「自分のなかで拓也はプレーの重みが足りていない」と声をかけられた。シーズン開幕当初から指摘されていた部分だったこともあり、この言葉は響いた。その後に改めて先発が発表。滑り込んだ岩田は優勝決定のかかるピッチへ立つことになった。

 迎えた慶應義塾大戦。開始2分に岩田が決定機を迎えた。敵陣PA内で相手DFから奪い、前に持ち出してシュート。これはGKに止められた。チャンスを逃した瞬間に「またか……」と一瞬は嫌な思いも過ぎったが、「初っ端のチャンスを外してしまったので、そこは割り切って、しっかり泥臭くやろうというなかでやっていました」と前を向いてプレーした。

 懸命に相手を追い、こぼれたボールを誰よりも粘り強く拾うなど献身的に動いた。チームは前半15分に失点し、1点を追う展開。必死に駆け回る泥臭い姿勢は結果を生む。0-1の前半28分、DF河面旺成(4年=作陽高)の左クロスをニアサイドの岩田が頭で逸らす。ゴール前右のMF土居柊太(3年=浜松開誠館高)が決め、1-1に追いついた。

 そして前半終了間際の45分。土居のパスを受けた岩田はPA右で待ち構えていたFW丹羽詩温(4年=大阪桐蔭高)へクロス。強引な突破から放った丹羽の右足シュートはゴールネットを揺らした。これが決勝点。後半はスコアは動かずに明治大は2-1の逆転勝利で優勝を果たした。

 栗田監督は岩田を先発起用した背景について、「前の2試合で拓也だけ決定機を2回外していたので。土居は決めていますし、そういう意味では富田(富田光(2年=中京大中京高)と岩田は迷っていました」と明かす。

 「きょうも1発目で拓也が外したので……」と苦笑した指揮官だったが「そのあと献身的にやってくれて、彼のプレーから得点が生まれたので良かったなと思います」と労った。

 全2得点に絡んだ紫紺の11番。優勝が決まったもののどこか浮かない表情をみせ、「優勝は嬉しかったですけど、正直まだまだ個人としては納得できていないです」と言う。

「栗田さんは信頼して使ってくれたので、本当に得点という形でチームに貢献したかった。1本目のチャンスを外してしまって、その後の2得点に絡めたので最低限は良かったですけど。自分のなかでは結果でチームに貢献できていないので、まったく納得いっていない。悔しいのが現状です」

 11連勝で関東大学1部リーグ史上最速優勝を果たしても、まだまだ物足りない。自らゴールネットを揺らし、勝利へ貢献したいという思いは募っていく一方だ。「このままだとスタメンも全然外れてもおかしくない。得点というところにこだわって、危機感を持って、一日一日を過ごしていきたい」。4年生FWは浮かれることなく、残り少ない大学サッカーの日々を見据えた。

(取材・文 片岡涼)

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