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[MOM468]専修大MF小林岩魚(3年)_亡き恩師への誓い、甲府復帰の夢

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ユース時代を過ごしたヴァンフォーレ甲府への入団の夢を持つMF小林岩魚(3年=甲府U-18)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.1 関東大学1部L第14節 専修大3-1慶應義塾大 佐倉市岩名運動公園陸上競技場]

 正確なキックを武器とする“左足の魔術師”が、専修大に後期リーグ戦初勝利を呼び込んだ。プレースキッカーを任されるMF小林岩魚(3年=甲府U-18)は、前半39分の先制点を演出。さらに同44分にはDF大西拓真(3年=FC東京U-18)の頭にピタリと合わせるアシストを記録した。「クロスの質はもっと高めていけると思う」と個人の評価は厳しい岩魚も、「順位が近い慶應に勝てたのは大きい」とまずは素直に勝利を喜んだ。

 岩魚(いわな)という名前は、渓流釣りが好きな父親の影響で付けられた。一人っ子で、幼少期は父親に連れられて渓流釣りによく出かけたという。ただ付いて行っても、横で父親の姿を見守るだけ。結局、釣りに興味を持つことはなかった。

 サッカーと出会ったのは小学生の時。「周りの友達がやっていたから」という理由で何となく始めたが、徐々にのめり込んでいった。甲府生まれ甲府育ち。サッカーが上手かった少年にとって、地元のヴァンフォーレ甲府の下部組織に入団することは必然だった。

 ユースまでを過ごした甲府への思いをさらに強くする出来事が昨年夏に起こった。ヴァンフォーレ甲府U-18時代の指揮官だった小佐野一輝さんががんで他界してしまったのだ。38歳の若さだった。

「どれだけいいゴールやアシストを決めても、小佐野さんには常に岩魚はもっとやれると言われ続けてきた」

 頭に残る恩師の言葉。「今日もアシストしましたけど、こんなんじゃ満足できない。常に向上心を忘れないでやらないといけないということを小佐野さんに教わったので」。

 甲府U-18時代の1学年先輩で、日本体育大のFW太田修介は先日、甲府への入団内定を発表した。太田も小佐野さんへの思いを強く持つ選手の一人だった。「自分もその思いをブレさせないようにやっていきたい。絶対に甲府に帰りたいなと思います」。

 甲府に帰る。しかし左SHと左SBを主戦場とする選手だが、明確な課題があり、源平貴久監督は「とにかく守備。もう1ステップどころか、2ステップ、レベルを上げないとプロでは通用しない」と厳しい評価を下す。

 ただ本人も「守備面を上げていかないとプロで通用しない」と強く理解していることで、周囲のこういった声にも「言ってくれるということは、それだけ自分に期待してくれているということ」と意識を高くもって受け止めている。

 今夏には甲府のトップチームの練習に参加。期間が短かったこともあり、不完全燃焼に終わったというが、それでも来年の甲府入団の夢をより身近に感じることが出来た。

 そのためには残りの大学生活の過ごし方が重要になってくる。来年ももちろん1部で戦うことは最低条件、そして大学選手権(インカレ)に出場して、大学サッカー界で存在感を示していきたいところだ。「チームとしては状態は悪くない。あとは結果が付いてくるかだけだと思う」。攻撃に勝る防御なし。課題はあるかもしれないが、岩魚の左足にそれ以上の魅力があることは間違いない。

(取材・文 児玉幸洋)
●第91回関東大学1部L特集

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