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鈴木徳真が「ついに」全日本選抜入り!“王様”から“怖い選手”に進化

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鈴木徳真がついに全日本選抜入りを果たした

 「ついに」という思いを抱く人も少なくないだろう。MF鈴木徳真(筑波大3年)がようやく全日本大学選抜に選出された。原則的にユニバーシアード代表の強化チームである全日本大学選抜で、“ユニバーシアード大会のない年”に最高学年の選手が選ばれるのは『DENSO CUP SOCCER 大学日韓(韓日)定期戦』だけ。現在3年生で4月に4年生、つまり最高学年となる鈴木にとっては、これが本当に最初で最後のチャンスだった。

「これまでも全日本大学選抜に選んでほしいという気持ちはあったし、当然、選んでもらえなくて悔しい気持ちもありました。ただ選手の選出については監督が決めること。自分が結果を出したからといって、必ずしも選ばれるとは限らない」

 そう語る鈴木だが、この3年間少なからず焦りもあっただろう。高校サッカー選手権で準優勝した前橋育英高のキャプテン、そしてU-19代表にも名を連ねる注目選手として筑波大入り。しかし入学当初は怪我もあってなかなか試合に出られず、気がつけば世代別代表からも遠のいた。

「1年のときは全国大会である総理大臣杯に出られても、自分が出場できない試合もあった。関東選抜に選ばれて『デンソーカップチャレンジサッカー』には参加できたけれど、その後にユニバーシアード代表には選ばれなかったし、U-20W杯にも出ることができなかった。そのたびに悔しい思い何回もした。自分が大学に入る前に思い描いていたレールに乗れていない。その物足りなさはあります」

 それでも「毎回毎回最善の準備、最善の選択はしてきた。だからこそ、すべてが自分の経験値となったとポジティブに考えている」と鈴木。その悔しい経験が、プレーヤーとしての成長に大きく影響したことも確かだ。

 もともと足元の技術と判断力、そして中盤でボールを奪う力に長けていた鈴木は「“うまければいい”、“パスを取られなければいい”という感じでプレーしていた」という。ボランチとしての守備意識が高く、プレーに安定感があるともいえるが、1年のころに「遠藤保仁(G大阪)のように怖い選手になりたい」と言っていたのとは程遠い、“うまいけれど意外性のない”選手だった。

 だが3年生になると「自分が結果を残したいというという気持ちと、チームを絶対に勝たせたい、という気持ちが強くなってきた」。そのために自分のプレーの特徴、スタイルを見直し「守備ばかりではなく、攻撃的なアクションを起こしていこうと思った。前で仕掛けるプレーを増やして、その中でも自分のよさを消さない、というやり方を考えました」。

 筑波大ではそんな鈴木のプレーが、チーム全体の攻撃のスイッチ、ギアを上げるスイッチになることも多い。

「全体を俯瞰(ふかん)しながら攻撃のスイッチを入れることで、全員が合わせられる瞬間をなるべく多く作ろうというのは意識しています。個人技で打開できるところは個人にまかせるけれど、全体的に見て試合の流れが止まっていると感じたときは、攻撃のアクションのスイッチを増やします。自分の位置から、全員をつなげられるようなボールの動かし方はイメージできているので」

 今の鈴木は、中盤の底にどっしりと構える“王様”ではない。自らがアクションを起こすことでチーム全体を動かす、対戦相手にとって文字どおりの“怖い”選手だ。

 18日の日韓定期戦では「試合に出られたら、どちらかといえば個人のアクション回数を増やしていきたい」という。「中盤のラインを自分ひとりで突破する。トラップでもドリブルでもなんでもいいから突破する。スペースを使って突破するのもあり。そうやって局面を打開することで、ほかの選手たちがスイッチを感じとってくれれば、自然と全体のギアも上がるはず。そういう回数を増やすことが、僕の役割なので」。

 このタイミングでの全日本大学選抜選出を、正直に「もちろん『遅いよ』という気持ちもあります」と口にしながらも、「全日本大学選抜は大学でサッカーをするうえで、いちばん上にある代表のチーム。そこでプレーできるのは、素直にうれしい。それは自分の中でもすごくポジティブにとらえている」と語るのは、悔しさよりも楽しさのほうが上回っている証拠だろう。

 最初で最後の全日本大学選抜、そして大学日韓定期戦だ。“あの”鈴木徳真が大学生の代表として、どう全韓國大学選抜と対峙するのか。それはきっと、これまでの鈴木の大学サッカーそのものを表すプレーとなるだろう。

 鈴木が全日本大学選抜の一員として参加する第15回大学日韓定期戦は、今週末、3月18日に柏の葉陸上競技場で行われる。キックオフは12時30分。未来のJリーガー、日本代表選手を見逃すな!入場料は一般は当日1500円。前売りは1200円。高校生以下は入場無料となっている。

(取材・文 飯嶋玲子)

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