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[MOM568]明治大MF佐藤亮(3年)_復活ののろし

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関東リーグ戦では2年半ぶりのゴールを奪ったMF佐藤亮

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.27 関東大学L1部第18節 明治大4-0流通経済大 たつのこ]

 明治大のMF佐藤亮(3年=FC東京U-18)は、2-0とリードした後半26分から登場。そして終了間際のアディショナルタイム3分、MF森下龍矢(3年=磐田U-18)からのパスをエリア内で受けると、得意の左足で豪快にゴールネットを揺らし、ダメ押し点を奪った。

「明治のいつもの練習だったらシュートまで持っていくのも難しいくらい相手に寄せられたと思うんですけど、ボールを持った時にそんなに寄せてこなかった。自分の特長の左足もそこまで警戒されていなかったので、半歩かわしてシュートをファーに決めるイメージがあった。イメージ通りかなと思います」

 注目を集めたルーキーイヤーだった。佐藤亮は高校3年時、FC東京U-18で15年度のプレミアリーグを戦い16得点を記録。堂々得点王に輝いた。トップ昇格は見送られたが、U-18日本代表候補に選出されると、大学入学後の5月にはU-19日本代表(現U-21日本代表)に初招集。今ではFW旗手怜央(順天堂大)やMF三笘薫(筑波大)が注目を集めるが、当時、大学生は佐藤とGK小島亨介(早稲田大)の2人だけだった。

 ただ、順風満帆かと思えたが、道のりは甘くはなかった。5月には専修大戦で関東リーグ初ゴールを記録したものの、大学サッカーの壁にぶち当たる。そして2年時の総理大臣杯の決勝では、先発のピッチに立ったが左足首を痛めて前半16分で負傷交代となった。

 当初は「病院に行かなくてもいい」と高をくくっていたが、なかなか回復に向かわなかったことで病院に行くと、「靭帯が8割くらい切れていた」。結果的に半年以上の離脱を余儀なくされ、今季開幕に間に合わせたものの、ポジションを空けて待っていてくれるほど、明治大のサッカー部は甘くはなかった。

 そして今年度の総理大臣杯でも試練が襲う。期間中、体調不良に悩まされると、決勝の前日に腹痛が我慢の限界を超えたことで病院に急行。尿膜管遺残症と診断され、2年連続で大会中の離脱を余儀なくされた。「本来であれば生まれてなくなっていく、おへその部分のものがなくならずに中にあり続ける病気で、決勝の当日にへその下を切るような、ちょっとした手術をしました。帰ってきてからも手術をして、年明けにまた手術をすることが決まっています」。

 そんな負の連鎖を断ち切るかのような2年半ぶりのリーグ戦ゴール。「今日みたいに自分がゴールを取って勝てれば一番いい。逆に自分が結果を出せば、チームが結果を出していけるんだなと改めて実感したので、そこは続けていきたいなと思います」と点取り屋としての本能も呼び起こされた様子だ。

ダメ押し点を決めたMF佐藤亮


「個人的に巻き返したい」

 2年前、U-19日本代表に初めて招集され、韓国遠征を経験したメンバーには、先日、日本代表で初ゴールを決めたMF堂安律(フローニンゲン)や、今年度のルヴァン杯でニューヒーロー賞を獲得したMF遠藤渓太(横浜FM)らがいた。一時期でも彼らと同じ位置にいたからこそ、「自分も同じステージで」という思いを強めている。「明治でサッカーをやっていれば、確実に高いレベルでやれる。ほかの大学より成長できると思っている。だからこそまずは明治内での競争には負けたくないです」。

 同僚のMF安部柊斗(3年=FC東京U-18)は中学時代から同じチームで切磋琢磨してきた仲。ポジションは違えど、ライバル意識は強いという。ただ「活躍を喜び合える存在」でもある。「今日なんかも得点したら喜んでくれるし、あいつが結果を出せば自分も嬉しい」。大学を卒業するまでの10年間。そしてその後のプロでも同じチームでやりたいという夢が広がる。「たぶんあいつはFC東京に戻ると思う。自分もそれに続いて、11年目を一緒にやっていければいいなと思っています」。

 夢に向かうためには、これから結果を残し続けることが大事になる。怪我をしたことで、「今までは自分の自由な時間を遊び時間に使ったりとかでしたけど、今はサッカーから逆算した生活を常にしている。万全の状態でサッカーが出来るかを考えて、どういうもの食べて、どういう休み方をして、どういうケアをして、どういう筋トレしてとかを常に考えるようになった」と意識改革も行えたという。復活へののろしは上げた。逆襲の時は近い。

(取材・文 児玉幸洋)
●第92回関東大学L特集

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