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東京五輪候補トライアングルがブラジルを翻ろう!決勝の圧勝劇呼び込んだ三笘薫の突破力

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ブラジル戦で高パフォーマンスを見せたMF三笘薫

[7.13 ユニバーシアード決勝 日本4-1ブラジル]

 史上最多となる7度目の優勝を果たし、“最後のユニバーシアード”で金メダルを獲得したユニバーシアード日本男子代表には、強固なホットラインがある。MF三笘薫(筑波大4年/川崎F内定)を中心とした、FW上田綺世(法政大3年/鹿島内定)、FW旗手怜央(順天堂大4年/川崎F内定)とのトライアングルだ。

「いつもどおりといえばいつもどおり。僕は常に薫くんのドリブルしている姿を思い浮かべながら、どこに走るか、どう背後をとるか考えている」。決勝でハットトリックを決めた上田は、2ゴール目のアシストについてそう語る。3点目を挙げた旗手も「薫がアウトサイドから来るのは分かっていた」と、三笘との“阿吽の呼吸”を強調。トゥーロン国際大会で、またアジア大会でも躍動した三笘を中心としたホットラインは、決勝でもブラジルを翻弄した。

 立ち上がりから5バック気味で守りを固めてきたブラジルに対して、日本はサイドを起点に攻撃を仕掛けた。なかでも前半から積極的にドリブルでの突破を狙ったのが三笘だった。

「相手のコンディションもあるが、自分のコンディションもよかった。崩しという意味でも、前半からいってやろうと思った」

 前半18分には50m近い距離をドリブルで独走。ゴール前で相手DFにクリアされたものの、そのドリブルと最後までボールに食らいつくファイトに会場が大きく沸いた。その後もたびたびチャンスを演出。ブラジルが“やっかいな相手”と三笘を認識するのに、そう時間はかからなかった。

 ブラジルの警戒は的中した。後半序盤の11分、三笘は「(山原)怜音と(旗手)怜央がサイドに開いて前にスペースが空いた」と、中央からペナルティエリアに侵入。ブラジルは2人がかりでこれを止めようとするが、止めきれずにファウルをおかし、日本はPKを獲得する。これを上田が決めて、待望の先制点。「ブラジルはしたたかな相手。1点入れば流れはくると思っていたが、前半のように決めきれないままだと厳しいもと思っていた」という松本直也監督の懸念を、三笘の獲得したPKが見事に吹き飛ばした。

 さらに、このプレーでブラジルのDFが2枚目の警告を受けて退場に。数的優位に立った日本はその後、緩急を織り交ぜたボール回しで中盤を圧倒。さらに3点を追加し、最終的に4-1でブラジルを下した。圧勝ともいえる勝利のターニングポイントとなったのは、後半序盤の、この三笘の突破だった。

 三笘はさらに上田、旗手のゴールをアシストし、4得点中3得点をお膳立て。自身でも「ドリブル、スルーパス、アウトサイドからのパスと、自分の特長を出すことはできた」と振り返るように、“三笘らしさ”を存分に披露してブラジルを下した。無得点に終わったものの、この試合のキーマンが三笘であることに、疑いの余地はないだろう。

 だが、試合後には「最後のところで決めきれなかった。得点にはこだわっていかないと」と、反省も口についた。東京オリンピック代表の候補メンバーとしてたびたび世代別代表に招集されているが、目の覚めるようなプレーを見せる一方、体調不良や怪我などで十分な活躍を見せられないことも多い。特に大会中に高熱を発した昨年のアジア大会後には「大事なときにコンディションを崩す選手だと思われた。監督の信頼を失ったと思う」と危機感を顕わにしている。今もなお、その危機感が三笘を駆り立てる。

「五輪の候補としてはまだまだ下のほうだと思っている。ここからプロになって、どれくらいできるかはわからないが、もっと成長して大きな選手にならなければ、オリンピックに関わっていくのは難しい」

 王国・ブラジルを翻弄した稀代のドリブラーは、優勝の喜びを噛み締めつつも、次なるステージに視線を向けている。

(取材・文 飯嶋玲子)

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