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[関東]「竹内涼真が在籍」の枕詞はもういらない…立正大はJ1内定2選手を輩出する強豪に 田中宏武、孫大河は経験をチームに還元

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MF田中宏武

 立正大がここに来て2試合連続“ウノゼロ”勝利と安定した戦いぶりをみせている。順位は7位だが、勝ち点は20。試合数の違いはあれど、3位まで勝ち点3差と、インカレ出場ラインを十分に狙える位置につけている。

 数年前までは俳優の竹内涼真さんが在籍したことで話題を集めることが多かった立正大だが、その年代の前後からスカウトなどのテコ入れを開始。2017年に関東リーグに昇格すると、19年に1部初昇格。FW人見拓哉(現長野)がリーグ得点王を獲得した同年は初のインカレ出場を果たすなど、急成長をみせている。

 選手個人が注目されることも多くなった。今季は春先にMF田中宏武(4年=桐生一高)の北海道コンサドーレ札幌への入団が内定。さらに主将DF孫大河(4年=正智深谷高)のサガン鳥栖への入団が決まるなど、初めてJ1内定選手を複数擁すシーズンになっている。

 両選手はJ1クラブでの経験を還元する形で、チームに好影響をもたらしている。田中も「自分や大河はどれだけチームを勝利に導けるかを意識している。まずは走って、僕は鼓舞するタイプではないけど、背中でみせられるようにしたい」と意識を十分にしている。

 3月末に入団内定が発表になった田中は、特別指定選手としてすでにルヴァンカップ3試合に出場。Jの舞台を一足早く経験している。今夏は総理大臣杯の出場が叶わなかったこともあり、8月末から2週間ほど、札幌の練習に合流。大学とは逆の右サイドでのプレーが多かったというが、MF金子拓郎やMFルーカス・フェルナンデスらから多くのことを学んだという。

 その甲斐もあってか、大学に戻ってからは右サイドで先発することも多くなった。「自分的には左の方が打開できるけど、右サイドでも仕掛けることが求められると思う。大学では突破して抜くのは当たり前くらいのレベルにならないといけない。プレー原則は大学に合わせながら、その上でプロ基準を意識していきたい」と力説する。

 孫は内定発表してすぐのころは「見られること」を変に意識してしまうことが多かったというが、最近は「自分の特長に対してどれだけ質高くこだわれるかを意識するようにする」ことで、一つずつ課題を克服していっているという。

 そんな孫も8月中旬に1週間ほどの日程で鳥栖の練習に参加した。そしてその意識改革のおかげで進化した「ボールの出し方、持ち方」に変化がみられたことで、鳥栖のスタッフからも高評価があったと明かす。また練習参加では尊敬するDFエドゥアルドのプレーに刺激を受けたといい、「ポジショニングだったり、どういうパスを出すかを目で見て感じてという風に、最近は一番手本にしています」と憧れの眼差しを向けた。

 2選手には今後、大学リーグでより明確な“違い”をみせることが求められる。田中が「相手が早い選手を自分のマークで置いてきたり、ボールを持った時に2枚3枚と来る。周りがそこをおとりにしてくれているけど、そこを打開していかないと上のレベルで通用しない」。孫も「相手は自分といかに戦わないかということでやってくる。そういう相手に対してこれからどう対応できるかが大事になってくる」と力を込める。

 須永俊輔ヘッドコーチによると、現4年生世代は「やんちゃだった」という。それでも「全員がプロになれるわけではないので、人間としていい男になれるように」という指導方針のもと、人間的にもプレーヤーとしても確実な成長を遂げてきた。「立正大学は4年生が活躍するチーム。彼らも背中をみてきている」と期待するように、1部残留だけでなく、より上位に導くことが、強豪校への階段をのぼる立正大サッカー部の歴史を紡ぐことになる。

(取材・文 児玉幸洋)

●第95回関東大学L特集

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