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強い柏レイソルを取り戻すために…東京国際大MF落合陸は長い道のりを経て、23シーズンに古巣帰還へ

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東京国際大MF落合陸は23シーズンに柏へ

 柏レイソルへの思いは、間近で「強い時代を見てきた」からこそ。「クラブがあるべき場所はそこだと思っている」と語るのは、2023シーズンの加入が内定した東京国際大3年のMF落合陸だ。小学校から柏の育成組織でプレーを続け、柏レイソルU-18まで進む。しかしトップ昇格を逃すと、高校卒業後は関東サッカーリーグのVONDS市原で一年間を過ごした。そして現在は東国大に進学し、再来年の古巣入りを掴み取る。長い道のりも諦めず、ひたすら成長。柏にこだわるその熱い理由を聞いた。

 すでに優勝と1部昇格を決めた東国大は、10月30日の関東大学2部リーグ最終節で2位・東洋大と対戦した。上位対決は拮抗状態のまま、後半アディショナルタイムに突入すると、東国大は試合終了間際に失点。0-1で敗戦を喫し、有終の美を飾ることはできなかった。落合は先発出場も、後半14分に途中交代。自身の出来に「いいプレーができていなかった。そこらへんは来年に向けて課題」と悔しさをにじませた。

 最後を勝利で飾ることはできなかったが、落合は今季大きく躍進し、5年ぶりの2部優勝と4年ぶりの1部昇格に貢献。リーグ戦全22試合に出場すると、7得点2アシストをマーク。得点源のひとつとして、チームを牽引した。来季はいよいよ1部に挑戦。「準備はかなり大事なので、リーグ戦が終わったところから始めたいと思います」と気持ちを切り替えていた。

 3年生の落合は、10月27日に23シーズンの柏加入内定が発表されている。小学校から柏一筋。クラブのリリースでは熱い思いを明かし、話題になった。「小中高と在籍し、想い入れのある柏レイソルにプロサッカー選手として戻ることができ、とても光栄に思います」とコメント。「強い柏レイソルを取り戻す為に覚悟を持ってここに来ました。私自身、簡単な道ではなく険しい道のりを辿ってきました。様々な壁を乗り越え、成長し逞しくなって柏レイソルに戻ってきた自信があります。一番最高で大好きなサポーターの皆様の前で新しい落合陸の姿をピッチの舞台で表現し、期待を結果として応えられるように精進してまいります」と力強く古巣復帰への意思を表明した。

 当時、柏U-18からのトップ昇格を逃した落合は、それでもプロ入りを諦めていなかったという。「レイソルでは最後の最後で上がれなくて。それでもプロを目指したくて、ほかのJチームで練習参加をしていた」。しかし返答は来ない。ひたすら待ち続け、大学進学も断っていた落合は、高校卒業後の進路を失った。次年度の東国大受験までは無所属に。プレーできる場所を探した落合を拾ったのは、VONDS市原だった。「それでもいいっていう形で支えてくれた」。

 そして翌年、落合は一年遅れで東国大に進学する。「すごく焦りはあったんですけど、東京国際大に行ってからは前田(秀樹)監督の指導のもと、かなり厳しく言われたことをやり続けた」。1年生時にはリーグ戦21試合に出場して1得点。2年生時にはリーグ戦全22試合に出場し、2得点を挙げる。そして今季も全試合出場で7得点2アシスト。「絶対に戻ってやるぞっていう気持ちがあったので、ここまで来れた」。そして、全日本大学選抜のトレーニングキャンプなどに選出されると、柏の練習に参加。思いが通じ、念願の古巣帰還が叶った。

 強くなったのは、古巣への思いだけではない。前田監督は落合の攻撃面を評価しつつ、守備面の強化を徹底した。1年生時にはボランチで起用。「自分がやったことがなかったポジションだったんですけど、とにかく守備を意識してやって、体が覚えるまで守備の能力を手に入れようと思ってやっていた」(落合)。3年になると、徐々に実力を発揮する。落合は「まだまだですけど、形に出てきたんじゃないかなと思います」と成長を実感。柏加入も守備力向上が決め手のひとつになった。前田監督は「前から守備を積極的にやるという、その点がネルシーニョ監督に評価された」と明かしている。

 「取り戻したい」強い柏。落合は育成年代でプレーしていたとき、2010シーズンのJ2優勝から翌シーズンのJ1優勝、天皇杯やナビスコ杯優勝、ACLでの躍進など、輝かしい時代を目の当たりにした。「強い時代のレイソルを見てきたので、あるべき場所はそこだと思っている」。憧れのチームの黄金時代を取り戻すために。たとえトップ昇格を逃しても、落合は常に柏のことだけを考えてきた。

「(ユースから)トップには上がれなかったですけど、ずっと試合を観ながら、自分がどうやってレイソルにプラスになれるかとイメージしながら過ごしてきた。まだまだ自分には足りないものばっかりなんですけど、自分がプラスになって、必ずそこに持っていくっていう強い気持ちがある。そういう気持ちで、あのリリースは出させていただきました」

 帰還までにはまだ一年間、時間がある。来季は初の1部リーグ挑戦となる。来年の目標は「一人ではがすところを意識したい。得点まで持っていくこと、アシストまで持っていくこと、数字の部分を今年は意識したんですけど、1部の選手と比べてもまだまだ。Jリーグで活躍するためには、ここで結果を出さないといけない。目に見える結果、そこを求めて、やっていきたいと思っています」。長い道のりを歩くのにはもう慣れた。残り一年をさらなる成長に費やし、柏で実力を発揮する。

(取材・文 石川祐介)
●第95回関東大学L特集

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