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[MOM751]拓殖大FW山中麗央(4年)_大学“バーター入学”から掴んだプロ内定

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FW山中麗央(4年=市立長野高/長野内定)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.29 1部参入プレーオフ 拓殖大1-0東京学芸大 浦安]

「今年のチームで一番大切なプレーヤー」と言い続けてきたFW山中麗央(4年=市立長野高/長野内定)のゴールで決まった初の1部残留に、拓殖大の玉井朗監督も「今年を象徴?全くその通り」と笑みをこぼした。

 引き分けでも1部残留を決めることができた拓大は、「先制点」が勝敗を分けることを肝に銘じて試合に入っていた。コイントスで風上を取ると、迎えた前半36分、右サイドからFW加賀美右京(4年=甲府城西高)がシュート性のボールを斜めに入れると、ファーサイドに詰めた山中が流し込んだ。

「右京がシュートモーションに入ったときにファーに入ること、こぼれを狙うことはチームの決まり事だった。そこに自分が行けたことが良かった。引き分け以上で残留でしたが、それ以上に難しい試合だったけど、そういう試合で残留を決められて良かったです」

 4年間で這い上がってきた選手だ。AC長野パルセイロの下部組織出身で、高校2年生から市立長野サッカー部に転入。同年のインターハイで同校初となる全国大会でのゴールを決めるなど活躍したが、知名度では同学年で同じ長野の下部組織から転入したFW新井光(現鳥取)の陰に隠れることが多かった。

 また大学進学時も、拓大は“市立長野の心臓”と言われたボランチのMF島田直弥の獲得を希望。山中は“バーター”としての入学だった。山中本人がそれを知ることは入学後になるのだが、玉井監督は「彼が一年生で入ってきたときは全く期待していなかった」と苦笑いで明かすほどだ。

 ただ大学での急成長は目を見張るものがあった。大学2年生の終盤、2部後期第20節の立教大戦で後半33分から出場して大学リーグデビューを飾ると、MF池田廉(現琉球)のアシストから決勝点を記録。初陣を華々しく飾ると、3年生シーズンは16試合に出場して3ゴール2アシスト。11年ぶりの1部昇格に貢献した。

 そして自身初の1部リーグを戦った今季は、全22試合に出場すると、リーグ6位の10ゴールを記録。チーム得点王の活躍をみせると、古巣でもある長野を認めさせる選手にまでなった。

 玄人好みの選手。「優しいし、後輩の面倒見もいいし、慕われる性格。サッカーでは攻守両面において運動量が一番。相手のゴールから自分のゴール前までの間を本当に良く走る。どのチームでも重宝してもらえると思う」。4年間の成長に目を細める玉井監督は、プロでの活躍に太鼓判を押す。

 山中自身もプロ生活に胸を躍らせる。「小さい頃に長野のスタジアムに行って、パルセイロの選手を観てきた。今度は自分が子供たちに夢や希望を与えられるような選手になりたい」。幼心に抱いた夢を叶えた22歳は、新しい夢に向かう決意を新たにした。

(取材・文 児玉幸洋)
●第95回関東大学L特集

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