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[MOM774]関東大学選抜B齊藤聖七(3年)_「全治不明」の怪我から復帰

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FW齊藤聖七

[3.9 デンチャレ グループ1 U-20全日本選抜0-1関東選抜B]

 決勝点となった先制点は、FW齊藤聖七(流通経済大3年=清水ユース)の積極的な仕掛けから生まれた。前半13分、DF三浦颯太(日本体育大3年=帝京高/甲府内定)が左サイドのスペースに出したパスに斜めに走り込んだ齊藤は、1対1を仕掛けてクロスを上げる。これがオウンゴールを誘発した。

 シュート数は関東大学選抜Bが2本だったのに対し、U-20全日本大学選抜は7本。その他のスタッツでも分かるように、内容ではU-20選抜の方が上回っていたかもしれない。しかし最後まで集中を切らさなかった関東Bは、しっかりとリードを守り抜いた。

 そこにあったのは「上級生のプライド」だった。相手は1、2年生で編成されたチームとあって、川津博一監督が「上級生のプライドをみせなさいよと送り出していた」と話せば、齊藤も「自分は最高学年なので上級生のプライドがあった。絶対に負けたくなかった」と充実の表情を浮かべた。

「まずは初戦で持ち味を出せたのはいいスタートが切れたと思います。個人的にはずっとリハビリ生活を送っていて、サッカーに関われず、どうしたらいいか分からなかったけど、シーズン前にフル出場できるまでに復帰できたのは良かったと思います」

 流通経済大が関東2部を戦った一昨年に、齊藤はリーグ4位の12得点を記録。復帰した昨年度の1部リーグでは、更なる飛躍が期待されていた。しかし関東1部を12年ぶりに優勝した瞬間のピッチに、齊藤の姿はなかった。

 右膝が悲鳴を上げたのは5月のことだった。もともと手術した影響で、「半月板がほぼない状態でサッカーをしていた」というが、軟骨がすり減ってしまい、痛みが限界を超えた。当時の診断は「全治不明」。絶望の淵に突き落とされたと振り返る。

 それでも地道にリハビリを続けると、リーグ優勝決定には間に合わなかったが、最後の大会になる大学選手権(インカレ)で復帰。3回戦の先発を含む全3試合に出場し、1学年上はJリーグ内定者12人を輩出した世代だったが、そんな中でも欠かせない戦力の一人であったことを証明した。

「悔しい気持ちの方が強かった」と素直に認める昨季だが、齊藤聖七の存在価値を大学サッカー界で再び示すためにも、最終学年の今季は並々ならぬ思いで臨んでいる。昨年度までポジションを争ったFW満田誠は広島でプロ初ゴールも記録。「違う世界に行っちゃった感じもするけど、それは刺激にもなる。早く自分もという気持ちにさせてくれる」と闘志に変えている。

 右膝の状態はまだ万全ではない。さらに言えば今でも痛みは残っているという。しかし「夢」のために必死に頑張らないといけない年だということは十分に理解している。そしてやはり一番に意識するのは「エスパルス」。予定していた今春のキャンプへの参加は新型コロナウイルスの影響もあって見送られたが、夢を掴むためのアピールは続けていくつもりだ。

「もちろん他のクラブでもという考えはありますけど、ユース出身なのでこだわりは強いです。岡山に期限付き移籍しているGK梅田透吾が同期で、今は岡山で1番を背負っている。彼はエスパルスの守護神になっていく選手だと思うし、一緒にやっていた選手とまた同じユニフォームを着てプレーするということが今の夢です」

 アピールという意味では今大会以上のものはない。この日も会場には70人超のスカウトが集結。注目選手たちのプレーぶりに目を光らせていた。注目度という点では、10日には日本高校選抜との対戦は一番になるはずだ。齊藤自身も「正直一番楽しみにしていて、大学生と高校生は違うんだぞというところを自分たちが示していかないといけない」と気合十分に話す。ここでも必ず、「上級生のプライド」を示してみせる。

(取材・文 児玉幸洋)
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