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[関東]昨季主将が覚悟の5年目…桐蔭横浜大DF鍋田純志「今、凄く楽しい」

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DF鍋田純志(4年=水橋高)

[4.9 関東大学L1部第3節 順天堂大 0-2 桐蔭横浜大 保土ヶ谷]

 初戦の7得点に代表されるように好調な攻撃陣がけん引しているようにもみえる桐蔭横浜大だが、何より3戦連続無失点の守備陣の安定感が、開幕2勝1分と好発進を決めたチームを支えている。

「大学として守備を大事にしている。さらに今年は個の能力も高いと思うので、そういった要因があって、3試合連続完封になっていると思います。DFラインは2年の時に社会人チームでやっていたメンバーなので、こうやってトップで無失点でやれたことは嬉しいです」

 精神的な支柱になっている。DF鍋田純志(4年=水橋高)は昨年度も4年生を経験。主将に任命され、プロ注目選手として充実のシーズンを過ごすはずだった。しかしシーズンイン直前に右膝前十字靭帯を断裂。ほぼリハビリ期間として過ごしただけで、“大学最終学年”を終えてしまった。

「キャプテンにも指名してもらったので、やってやるぞと思っていた中での怪我でした。大学サッカーをやり切れた気持ちが全くなくて、最後の3試合だけ出させてもらったけど、インカレにも出られなかったので、もう終わっちゃったんだって」

 声をかけてくれたのは安武亨監督だった。「もう一年、うちでやらないか」。留年して大学サッカーが続けられることも知らなかった。大卒プロは諦めて、地域リーグのクラブを探そうとも考えていた時期だった。「即決は出来なかったけど、嬉しかった」。同級生、後輩、恩師、そして家族。多くの人に相談したが、最後は自分の夢への近道になることを優先した。

 安武監督は「あまりにもかわいそうだった」と鍋田の境遇を思いやる。「いろんなチームからチャンスが貰えるはずだったのがすべてなくなった。思ったより治らなくて、最近ようやくコンディションが戻ってきた。社会に出るのが22歳である必要はないと思っている。彼の将来のために、ここでもう一年やってから、自分の望むチームに行ければということで残ってもらいました」と明かした。

 全国高校選手権6回の出場を誇る富山県の強豪、水橋高出身だが、母校は県立高校の再編・統合にともない、22年3月で閉校。「水橋」の名前を残さないといけないという使命も少なからず感じている。「名前を残すためにもプロに行くしかないと思っています」。チーム成績が伴う今がアピールの最大のチャンス。「覚悟を決めてやらせていただいている。今、凄く楽しいです」。“5年生”はにこやかに微笑んだ。

(取材・文 児玉幸洋)
●第96回関東大学L特集

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