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[関東]清水内定FW齊藤聖七「明治を断り流大を選んだ」…恩師・明大栗田監督に“恩返し弾”

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明治大戦に出場したFW齊藤聖七

[6.15 関東大学L1部第10節 流経大1-2明治大]

 前半終了間際から途中出場したMF齊藤聖七(4年=清水ユース/清水内定)は、1点ビハインドの後半35分、味方が獲得したPKを蹴って同点弾を決めた。2試合ぶりとなる今季4点目。しかし流通経済大は終了間際に勝ち越し弾を許して、1-2で敗戦。昨年度、12年ぶりにリーグを制した王者が、最下位転落と厳しい戦いを強いられている。

 明治大は齊藤にとって、意識を十分にさせる相手だった。高校時代は清水エスパルスの下部組織で過ごした齊藤だが、出身は神奈川県横浜市。中学時代は同市を中心に活動するFCパルピターレで過ごした。そして何を隠そう、同クラブを設立し、指導にあたっていたのが、明大の栗田大輔監督だった。

 しかし入団当時はそれほど目立った選手ではなかったようだ。栗田監督曰く、「中学校の時なんか、どこのクラブのセレクションも落ちて、ピラミッドで言うと4番手、5番手層の選手だった」。ただ努力を重ねた齊藤は、高校入学と同時に清水ユースへの入団を勝ち取ると、静岡県選抜でも活躍するなど、王国静岡の中でも指折りの選手にまで成長する。

 トップ昇格が見送られたことで進学先を探す際も、栗田監督には声を掛けられた。「ずっと明治には誘っていただいていて、正直、明治と流大で悩みました。でもあえて流大を選びました。自分の中では流大の方が競争が厳しい場所というイメージがあったし、明治を倒したいという思いがあったので、流大にしました」。

 だが齊藤の前に、明大は高い壁として立ちはだかった。入学して間もない4月に早くも対戦に恵まれ、齊藤はその試合で先発出場したが、前半41分で途中交代を命じられた。チームも0-5で大敗。そこからチームの2部リーグへの降格や、自身も怪我にも見舞われたことで、リベンジの舞台に立つことも出来ていなかった。

 大学最終学年を迎えた今季、名門校の背番号10を背負うことになった齊藤は、プロ内定を決めた選手としてようやく恩師の率いる明大と対戦。PKではあったが、栗田監督の前でゴールネットを揺らした。「(明治を断った時も)栗田さんは聖七が決めた道ならと尊重してくれた。感謝しています」。

 今でも特別な師弟関係で結ばれている。「僕のクラブから出た初のJリーガー。エスパ、流経まで行ってプロを掴んだ奇跡に近い選手だと思う。試合の時は関係ないですが、いつも頑張っているかなと思ってみていますけど」。栗田監督にとっても、愛弟子の成長は楽しみで仕方がない様子だ。

 齊藤自身も栗田監督に成長を見せることが恩返しになると分かっている。「中学校のころに栗田さんがみていた自分と、今は全然違うと思うし、大学に入ってさらに自分の中で違う武器ができたと思っています」。後期の対戦では必ず、大学選択時に掲げた「倒す」という目標を達成する。

(取材・文 児玉幸洋)
●第96回関東大学L特集

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