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エース不在とは言わせない…山田新が全日本大学選抜で自らの価値を示す2発「こういう経験がいつか日本を」

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日韓戦で2得点を決めた山田新

「ハットトリック以上のゴールを目指していたんですけど……」

 敵地・韓国で2ゴールを挙げたFW山田新(桐蔭横浜大4年=川崎U-18/川崎F内定)は悔しげに呟いた。

 6月に行われた日韓戦で、日本は5-0で韓国に大勝。山田もダメ押しのゴールで日本の勝利に貢献した。だが、その試合でハットトリックを挙げる活躍をしたFW木村勇大(関西学院大4年=大阪桐蔭高/京都内定)はいない。U-21日本代表の欧州遠征メンバーに選ばれたからだ。

「木村勇大がいないから負けたとか、日本は点を取れなかったと言われるのではないか。そういう気持ちがあって…」

 前半から積極的に仕掛けた。時間が経つにつれ、相手の激しいチェックを受けるようになったが、武器である推進力を生かして強引ともいえる突破で好機を演出。韓国にとっては実にイヤな選手だったろう。それでも、敵地でのゴールは2得点に留まり、日本を勝利に導くことはできなかった。

 ゴールシーン以外にもあった決定機を逃したことは、大きな反省点。「精度を上げていくことは永遠の課題」という言葉は、アウェーの地で日本の代表として戦う経験をしたからこそ、より重みを増す。「こういう経験をしたことが、いつか日本を勝たせるということに繋がるのかもしれない」。

 川崎U-18出身だが、チームスタイルからは異色ともいえる“ゴリゴリ”のプレーを、指導者たちは根気よく伸ばしてくれたという。それは桐蔭横浜大でも同様で、スタッフたちや山田の実力を認めながらも、1年時はIリーグで試合経験を積むことを優先させた。桐蔭大の安武亨監督は当時、「トップチームのベンチでチャンスを待つより、試合に出させたほうが伸びると思った」と語っている。

 昨年、関東大学選抜に選ばれたときは「自信もなかったし消極的なプレーも多かった」という。それでも力強さと前への推進力を評価されて全日本大学選抜に選出された。「指導者に恵まれた」という山田だが、先日、特別指定選手としてJリーグデビューを果たし、これまでと同様では通用しないことも実感している。

「(プロは)競り合いのときや体を当てるときのタイミング、駆け引きのレベルが1段階違う」。フィジカル面では通用する自信はあるが「それ以外の部分。技術、頭、ディフェンダーとの駆け引きなど、まだまだやるべきことはたくさんある」と実感している。

 大学でサッカーをするのも4か月を切った。その短い期間で、どこまで伸びることができるのか。厳しいアウェーでの敗戦の悔しさを糧に、山田新はさらなる成長を経てプロの扉を叩く。

(取材・文 飯嶋玲子)

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