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[MOM857]関西選抜DF濃野公人(関西学院大3年)_ 「SBとして世界まで」。転向1年弱の右SBが圧倒的な動きでサイドを攻略

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関西選抜の右SBDF濃野公人(関西学院大3年=大津高)は右サイドで抜群のパフォーマンス

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[3.1 デンチャレグループA第2節 関西選抜 1-0 関東選抜B ひたちなか市総合運動公園]

 右SB転向からまだ1年足らず。関西選抜のDF濃野公人(関西学院大3年=大津高)が右サイドで抜群のパフォーマンスを見せた。前方の右SH福井和樹(京都産大3年=G大阪ユース)とのコンビネーションの良さも活かし、再三サイドを攻略。まるでアタッカーのような動きで相手ゴールへ迫り続けた。

 前半37分、インナーラップからニアゾーンを突いて決定的なクロス。後半4分には巧みなドリブルコースを取って相手の守りにズレを生み出すと、そこから福井とのワンツーでPAへ侵入し、右足を振り抜いた。

 そして、11分にはMF食野壮磨(京都産大3年=G大阪ユース)からの好パスを引き出し、右エンドライン際からマイナスのラストパス。こぼれ球に反応して左足シュートを打ち込んだ。また、FW西村真祈(関西大3年=C大阪U-18)とのワンツーで右サイドを完全に抜け出し、MF倍井謙(関西学院大3年=名古屋U-18/名古屋内定)へ決定的なラストパスを通すシーンも。止まらない存在になっていた印象だ。

 福井とのコンビで相手の懐へ幾度ももぐり込み、逆にタッチライン際へ開いて福井にニアゾーンを狙わせるなど使い分けも秀逸。「相手が何番を掴むとかの頭になる前に、こっちが仕掛けられたのが結構デカかったのかなと思います」。守備面では背後のスペースを狙われたシーンも見られたが、関東選抜Bの“切り札”MF川畑優翔(流通経済大1年=流通経済大柏高)との競り合いでマイボールに変えるなど好守も。課題として取り組んできた部分での進化も示した。

 本人は良いプレーができたという手応えを持っていた一方、「ゴール前で質の高いプレーをもっとできたと思います」。2つ3つのアシストがついても不思議ではない90分間だったが、本人は自身で仕留めることも含めてラストの質を上げることを誓っていた。

 九州の名門・大津高(熊本)時代は主将、10番を担ったアタッカー。関西学院大進学後、壁にぶつかった時期があった。万能性を発揮していた一方、自分の存在を確立しきれず、昨春に右SBへ。公式戦ではGK、CBを除く全てのポジションでプレーしたという。後ろ向きになることなく、気持ちを切り替えて新ポジションに取り組んだからこそ、今がある。

「最初はSBとしての自分で、プロのスカウトの人とかどう評価するのかと考えたら全然自信がなかったんですけれども、逆に割り切って。自分、大学に入って全部のポジションをやってきて、それが自分の強みだなと思って、右SBというところを磨くしか無いなという気持ちになれたことが大きかった。(色々な思いを)飲み込んで、このポジションで自分の良さを活かそうと切り替えました」

 同じアタッカーからの転向組で「境遇が似ているなと思った」という日本代表右SB山根視来(川崎F)のプレーを動画でチェック。どのようにプレーすれば良いのか、どのような動きが有効なのか、学習した。努力が実り、優勝した関西リーグ1部やインカレで活躍。J1、J2の複数クラブが関心を寄せる選手になった右SBは、今回のデンチャレ初戦、第2戦で抜群の動きを見せている。その濃野は、SBのポジションでの目標として「世界」を掲げた。

「SBとして世界まで目指したいなという思いが強くなったので、SBからの攻撃参加というのが自分の特長だと思うので、上がっていくタイミングや上がっていくスペースだったりというのは誰にも負けないくらい磨きたい。そして、ゴール前の質の部分は他と違いを出せたらなと思います」

 目標とするステージに立つためには課題も克服しなければならない。1対1の守備や、ゴール前で相手の決定打を身体に当てて防ぐこともまだ甘いと考えている。「SBはまず1点もやらせないところから入っていかないといけない。プロや世界に出たら、“ただ攻撃できる人”で終わってしまう」。武器を磨き、課題を改善して上へ。まずは今回のデンソーカップチャレンジでアピールし、自身の可能性を広げる考えだ。
 
「今までだったら『どうせ自分は』という思いがどこかにあって、踏みとどまっていたんですけれども、もっと貪欲に『オレはできるんだ』というのを周りに示して、プロの世界や全日本だったり、もっともっと高みを目指してやっていきたいというのは感じています」。コンバートから1年弱。壁を一つ一つ乗り越えてブレイク中の右SBが進化を続け、「オレはできるんだ」とJリーグ、世界で示す。

(取材・文 吉田太郎)
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