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[デンチャレ]仲間の“帰還”も刺激に「歴史の創造」を期す大学ラストイヤー。関東選抜BMF田邉光平のベクトルは常に自分へ向けられる

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関東選抜Bの中盤を支えるMF田邉光平(中央大3年=名古屋U-18)

[3.2 デンチャレ グループA U-20全日本選抜 2-0 関東選抜B ひたちなか市総合運動公園]

 柔和な表情の下には、人一倍負けず嫌いな素顔を携えている。決して平坦な道ではなかった大学での3年間を経て、勝負の1年に向かうその気概は、ピッチに明確な形で現れていくはずだ。

「自分にできることはもっとレベルを上げていかないといけないですし、そういう意味では今回の大会のように周りに上手い選手がいて、対戦相手にもいる中で、もう年齢は関係ないので、いろいろな選手からも良いところを吸収してやっていきたいと思っています」。

 口にした貪欲な成長欲に滲む、さらなる飛躍への覚悟。關東選抜Bの中盤を支えるプレーメイカー。MF田邉光平(中央大3年=名古屋U-18)は約束の場所へと帰還する日を意識しつつ、すべてのベクトルをきっちりと自分に向け続けていく。

「得点が欲しいですね。チャンスはあるので、決め切るところが大事ですし、1点入れば全然違う大会になっていたと思うので、決め切る力やアシストの部分で当たり前のように結果を出さないと上に行けない世界で、そこはこだわってやっていかないとダメだなと改めて実感しています」。

 田邉は悔しさを噛み締めながら、そう言葉を紡ぐ。デンソーカップは3日間に渡って繰り広げられたグループリーグが終了し、タレントを揃えた関東選抜Bはまさかの3連敗。加えて3試合で1つのゴールも奪えないという、厳しい結果を突き付けられる。

 初戦の東北選抜戦は途中出場。キャプテンマークを託された2戦目の関西選抜戦と3戦目のU-20全日本選抜戦ではともにフル出場を果たした18番は、「この大会はプロの舞台に行くための大きなチャンスではあって、自分個人としての評価を上げていかなくてはという想いはあるので、積極的にやっていこうとは思っていたんですけど、なかなか結果が出ていないので、そこにはこだわってやっていかないといけないかなと思います」ともどかしい気持ちを明かす。

 U-20全日本選抜戦でも、前半はMF渋谷諒太(流通経済大1年=流通経済大柏高)にMF田中克幸(明治大3年=帝京長岡高)と、後半はMF吉尾虹樹(法政大3年=横浜FMユース)と田中と、それぞれ中盤でトライアングルを形成し、攻守のコネクト役を担ったものの、決定的なチャンスは作り切れず。田邉も自ら果敢に狙ったミドルも枠を越えていく。

 結果的には後半に2点を奪われ、0-2で無念の黒星。「ゴールまでの違いを出すところであったり、エリア内に入っていくところは、今日はなかなかできなかったですけど、少しずつできてきているところではあるので、そこで自分が結果を残すことにこだわって、それでチームが変わっていけばなと思います」と最終日へ気持ちを切り替えた。

「自分は1年生の頃から試合に出させてもらってきましたけど、1年目で2部降格で、2年目は1年で1部へ上がることができず、去年は監督が代わって、(中村)憲剛さんもコーチで来て、そこで1部へ上がれたという、本当に色々な経験をしている波乱万丈な3年間なので、個人のプレーの幅も広がりましたし、成長というのは実感できています」と語る中央大での時間で、田邉は『結果を残すこと』の重要性を意識してきた。

 昨シーズンは関東リーグ2部で全22試合に出場し、5ゴール7アシストという数字を叩き出して、アシスト王も獲得。「去年もリーグ戦で結果を求められて、それに応えたからこそ、ここに来られていると思うので、『本当に結果次第でいろいろなことが変わるな』というのは感じています」。明確な結果が自分のステージを押し上げることも実感することができたという。

 とりわけ影響を受けているのは、中村憲剛テクニカルアドバイザーの存在だ。「憲剛さんはチーム全体にアドバイスをくれて、戦術や立ち位置のところをみんなに伝えてくれているので、自分もそれでやりやすくなりましたし、あとはゴール前の結果のところは常に言われているので、自分も良くはなってきていると思います。やっぱり説得力が違うので、自分たちのサッカーの見え方も変わってきていることは感じます」。同じボランチを任されてきたレジェンドの金言を得て、より自分の考え方も整理されてきているようだ。

 名古屋U-18時代は“グラウンドマネージャー”という役職を担いながら、クラブユース選手権とJユースカップの全国二冠を獲得した田邉だったが、トップチームへの昇格は叶わず、同期からは石田凌太郎三井大輝の2人がそのままプロの世界へ。さらに今回のデンソーカップにも参加している、関東選抜AのMF榊原杏太(立正大3年)と関西選抜のMF倍井謙(関西学院大3年)も、来季からの“名古屋帰還”を勝ち獲っている。

「シンプルに凄いなと。自分の代のグランパスは『全員上手いな』と感じながらやっていましたし、『うらやましいな』という気持ちはありますけど、彼らに追い付け追い越せというか、負けないようにやっていきたいと思いますね。自分も名古屋に帰りたい気持ちはもちろんあります。でも、まず自分は個人のレベルアップが大事だと思っているので、そこを頑張りたいと思っています」。

 自らの将来を切り拓く上でも、大切な4年生の1年間。田邉の決意が力強く響く。「中大として、日本一は何年もの間獲れていない中で、ユースの時のように『歴史を創る』というのは自分たちでも話していることなので、今年はタイトルを獲ることにこだわってやっていきたいですし、個人としてはプロの舞台に行けるようにやっていきたいと思います」。

 新たな歴史の創造を期す大学ラストイヤー。結果を出し続けたその先に、望んだ未来が待っていると信じて、田邉は日常から自分自身と向き合っていく。

(取材・文 土屋雅史)
●第37回デンソーカップチャレンジサッカー茨城大会特集

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