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[MOM998]慶應義塾大FW香山達明(4年)_覚悟とともに引き継いだNo.9「重みは人一倍意識してプレーしている」

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魂の同点ゴール

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.27 関東大学L2部第19節 慶應義塾大 1-1 早稲田大 下田G]

 決意新たに9番を引き継いだFW香山達明(4年=慶應志木高)が魂のゴールを奪い、慶應義塾大の1部復帰と2部優勝に近づく勝ち点1をもたらした。

 首位の慶應義塾大はホームで早稲田大との早慶戦を戦った。多くの観客が足を運んで仮設スタンドが増設されるなど盛り上がりを見せた一戦は後半2分に失点。相手にペースを握られる時間も続いた。

 それでも後半17分、MF田中雄大(3年=三菱養和SCユース)が蹴ったFKを香山が頭で合わせて追いついた。「全員の思いを形にしたゴール」と振り返った香山は「自分のワンプレーで流れを変えるところは今シーズンずっと意識してきた部分なので、しっかりと決められてよかった」と笑顔を見せた。ただ試合は1-1で終了。得失点差を考えると勝てば今節で昇格をほぼ確定できただけに、悔しさも残るゲームとなった。

 香山は今季を背番号15番でスタートさせたが、現在は9番を背負っている。この番号は夏にNECナイメヘン(オランダ)へ加入したFW塩貝健人が担当していたものだ。8戦12発のエースが大学を離れる中、「健人の代わりに慶應のストライカーとして点を取るところが自分の役割かなと思った」と覚悟の背番号変更を決断。「9番の重みは人一倍意識してプレーしている」と責任感とともに後半戦を戦っている。

 また、チームは「Dank je wel Kento(オランダ語で“ありがとう健人”)」と記した横断幕を製作してグラウンドに張り出しながらリーグ戦を行っている。香山は「僕たちのチームにもたらしてくれたこと、刺激してくれたことは本当に大きかった。チームからは感謝と頑張ってこいよという思いで送り出した」と塩貝のチーム最終戦になった国立競技場での早慶戦終了後を振り返った。

「僕たちは絶対に一番、2部の中で“出ていない人たち”が頑張っている組織」(香山)という慶應義塾大はチーム力を武器に、エースの離脱後も首位をキープ。次節にも2部優勝と1部復帰が決まる状況となる中、香山はもう一人の“健人”から感じた凄みを思い出す。OBで現在アルビレックス新潟に所属するDF橋本健人だ。

 橋本は香山の3つ上の先輩にあたり、当時1部を戦っていた慶應義塾大で主軸として活躍していた。香山は1年生のときに応援部員として橋本のプレーを見る中で「スーパーな選手で、自分とは世界が違うようなところだと本当に思っていた」と圧倒されていたという。そういった凄みを肌で感じ、4年間で1部、2部、3部とすべてのカテゴリを経験したからこそ目の前に迫った昇格切符への思いは強い。

「リーグや環境で成長できる幅は決まってきてしまう中で、後輩に1部を残すところは僕たちの最大目標。(橋本のような)そういう選手がもっと慶應から出てきて、より強く1部の中でも上位に食い込んでいけるようなチームになることが、今僕たちができる最大の貢献だと思う」

 現実主義者だという香山は2部昇格1年目の今季開幕前、優勝を目指すことに幾ばくかの迷いもあった。しかしシーズンが進むにつれて、また覚悟の背番号変更を決断したように、そういった気持ちは完全に払拭済み。「ちょっと身に余るかもしれないですけど」とキャラクターを覗かせつつ、「今個人で7得点であと3試合あるので、1試合1点を取って10点の大台に乗せてベストイレブンを取れたら」と個人の目標も掲げて集大成となる残り試合に意気込んだ。

(取材・文 加藤直岐)

●第98回関東大学リーグ特集
加藤直岐
Text by 加藤直岐

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