[関東]優勝王手の筑波大で凄みを増すDF小川遼也、プロクラブ大注目の現代型CB「いろんな選択肢の中で…」
[11.1 関東大学L1部第20節 筑波大2-0国士舘大 筑波大学第一サッカー場]
開始数秒で筑波大をアクシデントが見舞った。競り合った際にDF小川遼也(3年=富山U-18)の顔面に相手選手に頭が入ってしまう。鼻出血を負った小川は治療のために一旦ピッチ外に出ることになった。
しかし5分ほどでピッチに戻ると、前半27分にはMF矢田龍之介(1年=清水ユース)が蹴った左CKを頭で合わせる。シュートは惜しくもポストを叩いて得点にはならなかたが、勝った方が優勝に大きく近ずく2位・国士舘大との天王山で好守に存在感を発揮した。
「血が止まらなかっただけで、痛さは大丈夫でした。10人にして入りで難しい時間を作ってしまったけど、ゼロで抑えてくれたし、自分が入った時はチームに安定感をもたらそうと思った。サッカー人としてこんなにワクワクする舞台はないですし、こんなに素晴らしい観客が来てくれて、部員も応援してくれて、絶対にやってやろうと、それだけでした」
小川が凄みを増している。今季はここまでリーグ戦19試合、天皇杯や総理大臣杯など出場した試合はすべて先発フル出場を果たしている。開幕前にDF諏訪間幸成(横浜FM)、DF安藤寿岐(鳥栖)、MF加藤玄(名古屋)の主力3選手、今夏にはFW内野航太郎(ブレンビー)が途中退部したこと、さらに前期好調だったMF廣井蘭人(3年=帝京長岡高)の負傷離脱と心配事の多かった筑波大だが、小川が不動のCBとして関東大学リーグで最少失点を記録する堅守で牽引している。
自他ともに認める大学での急成長がある。高校までは「粗削りだった」と振り返る通り、「フィジカルでなんとかできていた」。ただ筑波大蹴球部のメソッドが小川の潜在能力を引き出した。特に23年4月からテクニカルアドバイザーを務める中西哲生氏との出会いが大きかった様子で、「自分でもこれは無理でしょと思うことでも、『遼也ならできるよ』って、すごく言ってくれて。自分はそこに期待してという繰り返しで、いいサイクルが大学で作れているなと思います」。入部当初は蹴ることが出来なかったという左足のキックも、今では両足のキックが武器と思えるほどになっている。
もっとも言われたことを理解する頭の良さがある。富山U-18でプレーした高校時代から世代別代表候補に選出された実績を持っていた小川だが、大学には一般受験でやってきた。富山県内随一の進学校である富山中部高出身で、両親ら家族の多くが医者という家庭で育ったことからも、サッカー選手とともに医師になる夢を持ち続けている。「大学に来てから戦術的に考えてサッカーをするのってこんなに楽しんだと思えるようになりました」。
大学は一般入学だったために、推薦組が早くから合流する中で、蹴球部への合流は入学式翌日だった。「初めて見た試合でウッチー(内野航太郎)がここ(筑波大学第一サッカー場)で点を決めて。あいつマジかみたいな。俺と同世代だよなと思って。1年生のころはスタンドからみることが多かった」。1年生の5月からトップチームでベンチ入りしたが、出場時間はトータルで5分ほど。ただ2年生になって一気に頭角を現して、欠かせない戦力へと上り詰めた。
当然のようにJクラブスカウトも熱視線を送っている。今夏もヴィッセル神戸や清水エスパルスなど4クラブの練習に参加。「大学で何を目指すべきなのかという物差しが分かる練習参加だった。ビルドアップのところで左右の両足長短のパスが蹴れるのは強みだなと思ったし、その中でも一人外すところは伸びしろだと思った」。以前も話していた「筑波で4年間を過ごす」ことを基本線に考えながらも、「いろんな選択肢の中で、プロに挑戦する選択をしたい」と柔軟な姿勢も見せ始めている。
「(大学を)抜けたいとは思っていないし、(するなら)プロに挑戦する選択をしたい。何が正解か分からないけど、自分が覚悟を持って決めた道ならたとえ試合に出られないとなっても、後悔じゃないけど、どちらを選んでもないのかなと思う。その時に考え抜いて出した決断なら、たとえ苦しい経験ができたと前向きに捉えているはず。難しいと思いますが、置かれた場所で精いっぱいやることは変わりません」
注目度は日に日に増しているが、まずは筑波大での活動に集中する。1日の国士舘大との天王山を制したことで勝ち点差を4に広げた筑波大は、8日にホームで行う流通経済大戦に勝利すれば、2年ぶり17回目の優勝を決める。10月29日の東洋大戦に引き分けたことで前期から続いていた連勝は8で止まった。「かなりショックでした」と振り返る小川だが、中2日で迎えた大一番にしっかりと気持ちを切り替えて臨むことができていたと胸を張る。
頂点まであと少し。「一昨年、自分がスタンドでみていた景色をみたいなと思うし、去年は自分たちの目の前から優勝が滑り落ちた感覚だった。あの悔しさをもう一回思い出して、チーム全体で共有して、絶対ホームで決めるんだという思いで臨みたいと思います」。大学サッカー界屈指の現代型CBが今季の頂を掴む。
(取材・文 児玉幸洋)
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開始数秒で筑波大をアクシデントが見舞った。競り合った際にDF小川遼也(3年=富山U-18)の顔面に相手選手に頭が入ってしまう。鼻出血を負った小川は治療のために一旦ピッチ外に出ることになった。
しかし5分ほどでピッチに戻ると、前半27分にはMF矢田龍之介(1年=清水ユース)が蹴った左CKを頭で合わせる。シュートは惜しくもポストを叩いて得点にはならなかたが、勝った方が優勝に大きく近ずく2位・国士舘大との天王山で好守に存在感を発揮した。
「血が止まらなかっただけで、痛さは大丈夫でした。10人にして入りで難しい時間を作ってしまったけど、ゼロで抑えてくれたし、自分が入った時はチームに安定感をもたらそうと思った。サッカー人としてこんなにワクワクする舞台はないですし、こんなに素晴らしい観客が来てくれて、部員も応援してくれて、絶対にやってやろうと、それだけでした」
小川が凄みを増している。今季はここまでリーグ戦19試合、天皇杯や総理大臣杯など出場した試合はすべて先発フル出場を果たしている。開幕前にDF諏訪間幸成(横浜FM)、DF安藤寿岐(鳥栖)、MF加藤玄(名古屋)の主力3選手、今夏にはFW内野航太郎(ブレンビー)が途中退部したこと、さらに前期好調だったMF廣井蘭人(3年=帝京長岡高)の負傷離脱と心配事の多かった筑波大だが、小川が不動のCBとして関東大学リーグで最少失点を記録する堅守で牽引している。
自他ともに認める大学での急成長がある。高校までは「粗削りだった」と振り返る通り、「フィジカルでなんとかできていた」。ただ筑波大蹴球部のメソッドが小川の潜在能力を引き出した。特に23年4月からテクニカルアドバイザーを務める中西哲生氏との出会いが大きかった様子で、「自分でもこれは無理でしょと思うことでも、『遼也ならできるよ』って、すごく言ってくれて。自分はそこに期待してという繰り返しで、いいサイクルが大学で作れているなと思います」。入部当初は蹴ることが出来なかったという左足のキックも、今では両足のキックが武器と思えるほどになっている。
もっとも言われたことを理解する頭の良さがある。富山U-18でプレーした高校時代から世代別代表候補に選出された実績を持っていた小川だが、大学には一般受験でやってきた。富山県内随一の進学校である富山中部高出身で、両親ら家族の多くが医者という家庭で育ったことからも、サッカー選手とともに医師になる夢を持ち続けている。「大学に来てから戦術的に考えてサッカーをするのってこんなに楽しんだと思えるようになりました」。
大学は一般入学だったために、推薦組が早くから合流する中で、蹴球部への合流は入学式翌日だった。「初めて見た試合でウッチー(内野航太郎)がここ(筑波大学第一サッカー場)で点を決めて。あいつマジかみたいな。俺と同世代だよなと思って。1年生のころはスタンドからみることが多かった」。1年生の5月からトップチームでベンチ入りしたが、出場時間はトータルで5分ほど。ただ2年生になって一気に頭角を現して、欠かせない戦力へと上り詰めた。
当然のようにJクラブスカウトも熱視線を送っている。今夏もヴィッセル神戸や清水エスパルスなど4クラブの練習に参加。「大学で何を目指すべきなのかという物差しが分かる練習参加だった。ビルドアップのところで左右の両足長短のパスが蹴れるのは強みだなと思ったし、その中でも一人外すところは伸びしろだと思った」。以前も話していた「筑波で4年間を過ごす」ことを基本線に考えながらも、「いろんな選択肢の中で、プロに挑戦する選択をしたい」と柔軟な姿勢も見せ始めている。
「(大学を)抜けたいとは思っていないし、(するなら)プロに挑戦する選択をしたい。何が正解か分からないけど、自分が覚悟を持って決めた道ならたとえ試合に出られないとなっても、後悔じゃないけど、どちらを選んでもないのかなと思う。その時に考え抜いて出した決断なら、たとえ苦しい経験ができたと前向きに捉えているはず。難しいと思いますが、置かれた場所で精いっぱいやることは変わりません」
注目度は日に日に増しているが、まずは筑波大での活動に集中する。1日の国士舘大との天王山を制したことで勝ち点差を4に広げた筑波大は、8日にホームで行う流通経済大戦に勝利すれば、2年ぶり17回目の優勝を決める。10月29日の東洋大戦に引き分けたことで前期から続いていた連勝は8で止まった。「かなりショックでした」と振り返る小川だが、中2日で迎えた大一番にしっかりと気持ちを切り替えて臨むことができていたと胸を張る。
頂点まであと少し。「一昨年、自分がスタンドでみていた景色をみたいなと思うし、去年は自分たちの目の前から優勝が滑り落ちた感覚だった。あの悔しさをもう一回思い出して、チーム全体で共有して、絶対ホームで決めるんだという思いで臨みたいと思います」。大学サッカー界屈指の現代型CBが今季の頂を掴む。
(取材・文 児玉幸洋)
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