岩政大樹監督が東京学芸大を指揮「自分が今必要な経験というのがここにある」母校で選手の成長に挑戦
[4.26 関東大学L3部第4節 東京学芸大 2-4 山梨学院大 東京学芸大総合G]
東京学芸大のレジェンドが監督として戻ってきた。今季から母校を率いる岩政大樹氏は選手に上のレベルへ行くための「マインドセット」を形成しながら、成長の一助を担っていく意気込みだ。
岩政監督は現役時代、東京学芸大から鹿島アントラーズへ進んで長年にわたってJ1で活躍した。その後はタイやファジアーノ岡山、東京ユナイテッドFCでプレーして2018年限りで現役を引退。引退後は文化学園杉並中・高や上武大で指揮を執り、以降は鹿島、ハノイFC、北海道コンサドーレ札幌とプロクラブの監督を担当。昨年には監督らと面識があった龍谷富山高で10月から11月にかけての3週間限定で臨時コーチを務めると、今季から母校の東京学芸大で監督に就任した。
東京学芸大に指導者として加わるのは、2024年の後半戦でコーチを担当して以来のこと。岩政監督は就任経緯について、一昨シーズンにコーチを務めていたことを理由の一つに挙げるとともに、「現場の責任者としての監督の役割をちゃんとやれるところでやりたい」と語る。一言で「監督」と言えど、特にプロレベルではフロントスタッフらの意向も影響してチームを指揮する上での自由度に一定の制限がかかることも珍しくない。
「同じサッカーという括りの中の監督という職業は、意外と中間管理職みたいな仕事もあれば、ちゃんと全責任をいただいて自分の責任のもとで決断できるところといろいろなグラデーションがある。それ(自分の責任で決断)をやらないと自分の中のトライアンドエラーもできない。そういう面で『自分が今必要な経験というのがここにあるのではないか』ということが一番大きな理由ですかね」
また、「僕はJクラブの監督にこだわっていない。どちらかというと他の仕事も併せてそろそろ始めたいなというところもあった」と岩政監督。東京学芸大は夜に練習を行っているため、昼間はスポーツを通じた教育をテーマとする「教育×スポーツ」の分野でも活動している。「僕はもともと教育畑」という指揮官は「そういう人生のサイクルにしたいなというのも合わさっていいんじゃないかなと」と説明。キャリアの新章に突入するなかで東京学芸大の監督を引き受けることになったようだ。
プロに限らず学生サッカーでも様々なレベル感のチームを指導してきたなか、目標からの逆算で日々指導していくために「どのチームでもどこに彼ら(選手)の目標を置かせるかということを考えている」と力を込める。
東京学芸大は岩政氏がコーチを務めた2024シーズンに関東大学リーグ復帰を果たし、関東3部を戦う昨季は第2節から7連敗と苦しみながらも残留を達成したチーム。率いる上で「近年なかなかJリーガーが出ていないし、2部に上がる競争もなかなかできていない」と現状を見つめつつ、プロ志望の選手が複数いることも踏まえて「まずは2部に上がるようなレベルに持っていくこと。そこからJリーグのレベルにとなると、日々どういう取り組みをしなければいけないのかという問いかけが決まってくる」と展望する。選手がそれぞれの目標に向かうなか、課題に対して「僕がやらせるよりも一人一人に気づかせて、逃げずにトレーニングさせることの繰り返し」で高い基準の「自分たちの当たり前」を作って成長させていく構えだ。
関東3部といえど、今季は順天堂大ら強豪私立大が居並ぶ過酷なリーグ編成になっている。さらに東京学芸大は第2節から関東2部からの降格組と4連戦を行う試練の序盤戦になった。その4連戦の3試合目となった今節は山梨学院大と対戦。先制しながら複数のチャンスを作ったものの、昨季インターハイで4戦7発の規格外ルーキーFWオノボフランシス日華(1年)にゴールを許すなど2-4で敗れ、シーズン最初の1か月を1勝1分け2敗の戦績で終えた。
岩政監督は残留争いに巻き込まれた昨季よりも、チームとして質や目標設定が高くなっていることを評価。前節は3人のプロ内定選手が所属する順天堂大と対戦して0-2から2-2の引き分けに持っていった。昨季の22試合29得点から4試合8得点と攻撃力が向上しており、指揮官は攻撃的にトライする姿勢を称えるとともに「いわゆるマンモス私立大学に対等以上に試合ができるようになっているのは昨年との大きな違い」とここまでを総括する。
だが、4試合10失点と失点が重なって勝ち切るには至っていないことは課題。選手が2部昇格やプロ入りを目指しているからこそ「山梨学院大と良い試合をした、順天堂大を2-2に持ち込んだことを良い結果と受け取っているようでは上には行けない」とも指摘する。
もっともリーグに質の高い選手やチームがいることは、日常の過ごし方を決める「マインドセット」を形成する上で大歓迎だ。
「良い戦いをしながらも個々の力で持っていかれたことを見ると、『Jリーグに行く』と目標を言っている子としてはどうなんだと。(今日はオノボとも対戦して)あれを止められなければJに行けないし、彼でも今のJのトップレベルではないわけなので、『完璧にシャットアウトしてJに行けるかだ』という話をうちの選手にできる。そういう話ができる面ではありがたいレベルの選手だし、チーム力でしっかり勝てるようにすることが今のウチの現状ですね」
岩政監督は試合を経て選手が成長していくなか、「コンサも鹿島もそうだったが結局時間との戦いになってくる。目標設定に間に合うかどうか」も今後のポイントに挙げる。シーズンが進むにつれて試合中に成長への気づきを得るのではなく、成長ぶりを発揮して目標に近づくフェーズへと早く移行していく考え。本来は今節からそのフェーズに入りたいところだったが、「現実を突きつけられなければ分からないこともある」と受け止めてリスタートを切る意気込みだ。
東京学芸大は「遂行能力、理解力がある」選手が多いという。「僕は選手を補強してチームを勝たせるよりも、選手をいかに成長させるかにトライする監督だと思っている」という岩政監督は選手自らが現状の課題を認識し、挑戦していくことも期待。チームと個人が地道な努力を重ねて目標達成に向かっていく。
(取材・文 加藤直岐)
●第100回関東大学リーグ特集
東京学芸大のレジェンドが監督として戻ってきた。今季から母校を率いる岩政大樹氏は選手に上のレベルへ行くための「マインドセット」を形成しながら、成長の一助を担っていく意気込みだ。
岩政監督は現役時代、東京学芸大から鹿島アントラーズへ進んで長年にわたってJ1で活躍した。その後はタイやファジアーノ岡山、東京ユナイテッドFCでプレーして2018年限りで現役を引退。引退後は文化学園杉並中・高や上武大で指揮を執り、以降は鹿島、ハノイFC、北海道コンサドーレ札幌とプロクラブの監督を担当。昨年には監督らと面識があった龍谷富山高で10月から11月にかけての3週間限定で臨時コーチを務めると、今季から母校の東京学芸大で監督に就任した。
東京学芸大に指導者として加わるのは、2024年の後半戦でコーチを担当して以来のこと。岩政監督は就任経緯について、一昨シーズンにコーチを務めていたことを理由の一つに挙げるとともに、「現場の責任者としての監督の役割をちゃんとやれるところでやりたい」と語る。一言で「監督」と言えど、特にプロレベルではフロントスタッフらの意向も影響してチームを指揮する上での自由度に一定の制限がかかることも珍しくない。
「同じサッカーという括りの中の監督という職業は、意外と中間管理職みたいな仕事もあれば、ちゃんと全責任をいただいて自分の責任のもとで決断できるところといろいろなグラデーションがある。それ(自分の責任で決断)をやらないと自分の中のトライアンドエラーもできない。そういう面で『自分が今必要な経験というのがここにあるのではないか』ということが一番大きな理由ですかね」
また、「僕はJクラブの監督にこだわっていない。どちらかというと他の仕事も併せてそろそろ始めたいなというところもあった」と岩政監督。東京学芸大は夜に練習を行っているため、昼間はスポーツを通じた教育をテーマとする「教育×スポーツ」の分野でも活動している。「僕はもともと教育畑」という指揮官は「そういう人生のサイクルにしたいなというのも合わさっていいんじゃないかなと」と説明。キャリアの新章に突入するなかで東京学芸大の監督を引き受けることになったようだ。
プロに限らず学生サッカーでも様々なレベル感のチームを指導してきたなか、目標からの逆算で日々指導していくために「どのチームでもどこに彼ら(選手)の目標を置かせるかということを考えている」と力を込める。
東京学芸大は岩政氏がコーチを務めた2024シーズンに関東大学リーグ復帰を果たし、関東3部を戦う昨季は第2節から7連敗と苦しみながらも残留を達成したチーム。率いる上で「近年なかなかJリーガーが出ていないし、2部に上がる競争もなかなかできていない」と現状を見つめつつ、プロ志望の選手が複数いることも踏まえて「まずは2部に上がるようなレベルに持っていくこと。そこからJリーグのレベルにとなると、日々どういう取り組みをしなければいけないのかという問いかけが決まってくる」と展望する。選手がそれぞれの目標に向かうなか、課題に対して「僕がやらせるよりも一人一人に気づかせて、逃げずにトレーニングさせることの繰り返し」で高い基準の「自分たちの当たり前」を作って成長させていく構えだ。
関東3部といえど、今季は順天堂大ら強豪私立大が居並ぶ過酷なリーグ編成になっている。さらに東京学芸大は第2節から関東2部からの降格組と4連戦を行う試練の序盤戦になった。その4連戦の3試合目となった今節は山梨学院大と対戦。先制しながら複数のチャンスを作ったものの、昨季インターハイで4戦7発の規格外ルーキーFWオノボフランシス日華(1年)にゴールを許すなど2-4で敗れ、シーズン最初の1か月を1勝1分け2敗の戦績で終えた。
岩政監督は残留争いに巻き込まれた昨季よりも、チームとして質や目標設定が高くなっていることを評価。前節は3人のプロ内定選手が所属する順天堂大と対戦して0-2から2-2の引き分けに持っていった。昨季の22試合29得点から4試合8得点と攻撃力が向上しており、指揮官は攻撃的にトライする姿勢を称えるとともに「いわゆるマンモス私立大学に対等以上に試合ができるようになっているのは昨年との大きな違い」とここまでを総括する。
だが、4試合10失点と失点が重なって勝ち切るには至っていないことは課題。選手が2部昇格やプロ入りを目指しているからこそ「山梨学院大と良い試合をした、順天堂大を2-2に持ち込んだことを良い結果と受け取っているようでは上には行けない」とも指摘する。
もっともリーグに質の高い選手やチームがいることは、日常の過ごし方を決める「マインドセット」を形成する上で大歓迎だ。
「良い戦いをしながらも個々の力で持っていかれたことを見ると、『Jリーグに行く』と目標を言っている子としてはどうなんだと。(今日はオノボとも対戦して)あれを止められなければJに行けないし、彼でも今のJのトップレベルではないわけなので、『完璧にシャットアウトしてJに行けるかだ』という話をうちの選手にできる。そういう話ができる面ではありがたいレベルの選手だし、チーム力でしっかり勝てるようにすることが今のウチの現状ですね」
岩政監督は試合を経て選手が成長していくなか、「コンサも鹿島もそうだったが結局時間との戦いになってくる。目標設定に間に合うかどうか」も今後のポイントに挙げる。シーズンが進むにつれて試合中に成長への気づきを得るのではなく、成長ぶりを発揮して目標に近づくフェーズへと早く移行していく考え。本来は今節からそのフェーズに入りたいところだったが、「現実を突きつけられなければ分からないこともある」と受け止めてリスタートを切る意気込みだ。
東京学芸大は「遂行能力、理解力がある」選手が多いという。「僕は選手を補強してチームを勝たせるよりも、選手をいかに成長させるかにトライする監督だと思っている」という岩政監督は選手自らが現状の課題を認識し、挑戦していくことも期待。チームと個人が地道な努力を重ねて目標達成に向かっていく。
(取材・文 加藤直岐)
●第100回関東大学リーグ特集


