beacon

[関西]スタメン落ちにトップ昇格を逃してより理解した「ちゃんとやる」ことの価値。関西学院大の1年生GK亀田大河が携えるのは「大学で絶対プロになる」という覚悟

ポスト
Xに投稿
Facebookでシェア
Facebookでシェア
URLをコピー
URLをコピー
URLをコピーしました

1年生ながら早くも定位置を掴みつつある関西学院大GK亀田大河(1年=神戸U-18)

[7.5 関西学生L第10節 関西学院大 1-1 甲南大 関西学院大学 第4フィールド]

 ゴールキーパーという1つしかないポジションで試合に出ることの意味を、きっと今の自分は誰よりもよく理解している。練習から切磋琢磨するライバルたちの、最後の砦を任せてくれるチームメイトたちの想いを全部背負って、守るべきゴールの前に、背筋を伸ばして、堂々と立つ。

「ユースからプロにはなれなくて、『大学で絶対プロになる。1年から絶対に試合に出る』という気持ちで大学に進学することにして、今はいい形で試合に出られているので、このままユースの1年生の時みたいに、試合に出続けられるように頑張りたいなと思っています」。

 圧倒的なビルドアップ能力を誇る、関西学院大に現れたルーキー守護神。GK亀田大河(1年=神戸U-18)は強い覚悟を抱いて足を踏み入れた大学サッカーの世界で、改めて自分の力を証明するための時間を積み重ねている。


「今日は甲南が5バックということもあって、関学が押し込む状況が続いていたんですけど、一発でやられたのがもったいなかったなって。それ以外はほぼ完璧に守備陣が守ってくれたので、僕もほとんど何もすることがなかったのに、カウンター1本でやられたなという感じでした」。

 これで5試合続けてリーグ戦のゴールマウスに立っている亀田は、少し悔しげな表情を浮かべて、終わったばかりの90分間を振り返る。関西学生サッカーリーグ前期1部第10節。関西学院大は押し気味に試合を進めながら、前半42分に先制点を献上。追い掛ける展開を強いられる。

 丁寧に後ろから攻撃を組み立てていくチームにとって、正確な左足を有する背番号31が最後方にいるのは大きなアドバンテージ。本人も「やっぱり評価されているのはビルドアップなので、高3のうまくいっていなかった時に比べたら、だいぶ良くなってきましたし、周りは上級生が多いですけど、自信を持ってやれていると思います」と、強みを生かせている実感があるようだ。



 もともとこのチームに合流してから、すぐに今の立ち位置にたどり着いたわけではない。始動日に振り分けられたのは、AチームではなくBチーム。ただ、「とにかく全部本気でやるというか、ちゃんと努力していたらAに上がれると思って、1つ1つのプレーを全部本気でやっていました」とすぐに現状を受け入れ、ステップアップするために必要なことを見極め、真摯に向き合っていく。

 きっかけは関学恒例の“ダービー戦”だったという。「関学は月に1回ぐらいAとBで“ダービー戦”をするんですけど、そこで活躍したら結構メンバーが入れ替わることはわかっていた中で、4月にあった2回目のダービーで活躍できて、Aに上がれたんです」。

 リーグデビューは5月5日に開催された、第6節の関西大戦。その試合は1-2で競り負けたものの、翌節の大阪体育大戦もスタメンに指名されると、完封勝利にきっちり貢献。以降は一貫して先発出場が続いており、徐々に周囲の信頼も勝ち獲りつつある。

 だからこそ、今節も勝利を引き寄せるセーブを繰り出したかった。試合は終盤にオウンゴールで追いつき、1-1のドローで勝点1を手にしたものの、「どフリーで打たれたシュートで、ノーチャンスみたいなところもあったんですけど、あれを止めれるか止めれないかで勝敗が変わってくると思うんで、止めたかったですね」と亀田は失点シーンに言及。自身にベクトルを向ける雰囲気が印象的だった。



 亀田が高校時代を過ごしたのは、タレントの揃うヴィッセル神戸U-18。1年時からレギュラーを掴み、プレミアリーグWESTでも躍動。年代別代表にも招集されるような立場だったが、最高学年となった昨季は途中から1学年下の胡云皓にポジションを奪われる形で、公式戦出場から遠ざかっていく。

「ちょうどスタメン落ちした時期が、プロに上がれるか、上がれないか決まる時期で、結局プロにはなれないことがわかって、結構落ち込んだ時期がありました。そこでちょっとサボったというか、それまで練習には一番早く来たりしていたんですけど、ちょっとギリギリに行ったりしたこともありましたね」。

「でも、『そんなことをやっていても意味ないな』って。すぐに今までと同じように、やることをちゃんとやって、チャンスが来るまで待つしかないなと思いながら、『自分はちゃんとやっているよ』ということをアピールし続けていました」。

 結果的にスタメン落ちしてから、リーグ戦の出場機会は一度も巡ってこず、PK戦の末に敗れたプレミアリーグファイナルも、ベンチから見届けることになった。それでも、もちろん試合には出たかったけれど、やるべきことはやり切った確かな実感は、自分の中に残ったという。

「1年の時から試合に出られていたので、サブキーパーの気持ちはあまりわかっていなかったですけど、自分が最後の学年で出られなくなった時に、今まで先輩が声を出してくれる姿も見ていたので、それを見習って、自分もヨンハオ(胡)を支え続けられたのかなと思います。まあ、出たかったですけどね(笑)」

昨季のプレミアWEST優勝決定直後。チームメイトと神戸賛歌を歌う亀田


 4年後のプロ入りを見据えて、身を投じた大学サッカーの世界。さまざまな経験を経て、今はまた試合に出る時間を手にしているが、そこに一喜一憂せず、自分の力を着実に、地道に、高めていく。

「最初は1年から選抜とか入ったろうと思っていたんですけど、他の大学も京産とか関大でも1年で出ているキーパーがいて、関西のキーパーはレベルが高いと思うので、そういう選手に勝っていけたら、またプロも見えてくると思いますし、まずは自分が成長することが大事ですけど、同じ1年のキーパーには負けないように頑張りたいなと思っています」。

 周りの環境は、自分が望むと望まざるとにかかわらず、否応なく変わっていく。ゆえに試合に出ていても、出ていなくても、できることは決まっている。関西学院大を最後尾から支える1年生ゴールキーパー。亀田大河はシビアなポジション争いの荒波にも、悠々と、しなやかに、立ち向かう。



(取材・文 土屋雅史)

●第104回関西学生リーグ特集
▶お笑いコンビ「ヤーレンズ」がサッカーをしゃべり倒すポッドキャスト「ボケサカ」は毎週金曜配信
土屋雅史
Text by 土屋雅史

「ゲキサカ」ショート動画

TOP