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「安全なプレーしかしていない」全日本大学選抜、1年生FW仲川同点弾も関東選抜Bとドロー

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[2.23 練習試合 全日本大学選抜1-1関東大学選抜B たつのこ]

 13年のユニバーシアード・カザン(ロシア)大会金メダルを目指す全日本大学選抜が23日、茨城県のたつのこフィールドで関東大学選抜Bと練習試合を行い、1-1で引き分けた。全日本大学選抜は25日まで茨城県内で合宿を行い、一度解散した後、3月1日に再集合。3月2日から宮崎県で開催されるデンソーカップチャレンジサッカー宮崎大会(地域選抜7チームと全日本が参加)に出場し、その後4年生を加えて再構成されたメンバーがインドネシア遠征(3月16~21日)とデンソーカップサッカー2012第9回大学日韓(韓日)定期戦(3月25日)に臨む。

 来年開催される”学生のオリンピック”、ユニバーシアードを想定してMF長澤和輝(専修大2年=八千代高)やMF茶島雄介(東京学芸大2年=広島ユース)、FW仲川輝人(専修大1年=川崎F U-18)ら全て新3年生以下の若いメンバーで構成されている今回の全日本大学選抜。デンソーカップチャレンジでも対戦する可能性のある関東選抜Bとの練習試合は激しい雨と重いピッチの中で行われた。

 はじめに相手ゴールを脅かしたのは全日本選抜だった。前半4分、右SB北爪健吾(専修大1年=前橋育英高)からのパスを中央で受けたMF上村岬(筑波大2年=磐田ユース)が左足シュート。これがDFに当たり、ゴール右ポストを叩く。左MF長澤のキープ力、逆サイドの仲川の動き出しの速さとクイックネス、そしてMF下田北斗(専修大2年=大清水高)の展開力やCB車屋紳太郎(筑波大1年=大津高)が再三見せる攻撃参加などを絡めてゴールへと近づいていく。21分にはSB二見宏志(阪南大2年=奈良育英高)が相手のマークを外して左サイドをえぐると、MF山崎直之(東京学芸大2年=F東京U-18)が決定的な形で合わせる。またFW山崎凌吾(福岡大1年=玉野光南高)が左足ミドルを放つ場面もあった。

 ただ前半、多くの時間帯で主導権を握っていたのは関東B。MF佐々木陽次(東京学芸大1年=F東京U-18)と昨年のユニバーシアードMVPのFW河本明人(流通経済大3年=流通経済大柏高)、MF碓井鉄平(駒澤大1年=山梨学院高)らを中心に押し込むと、右サイドからMF澤田崇(中央大2年=大津高)が個人技で仕掛けるなど、敵陣でプレーし続けた。28分に佐々木が放った右足FKは全日本GK本永絃(愛知学院大1年=東京学館新潟高)の好守に阻まれたが直後の30分、右サイドのスペースを突いた澤田がゴールラインぎりぎりのところから中央へ折り返すと、飛び込んだ河本がゴールへと押し込み先制した。

 リードを奪われた全日本だが、すぐにゴールを奪い返す。32分、長澤のスルーパスに反応した仲川がGKシュミット・ダニエル(中央大2年=東北学院高)との1対1を制して、左サイドから左足シュートをゴールへと流し込む。大学日本一の専大ホットラインで生み出した同点ゴール。仲川も「ミスが多かった。でも点が取れたことは良かった。結果を出せて良かった」と満足げに話した一撃で試合を振り出しへ戻した。

 しかしこの後、試合は停滞。全日本の指揮を執る吉村雅文監督(順天堂大)も「3点取っても4点、5点を狙うチームでないと向上しない。向上心を持っていくことが大事。今日は点を取りに行くところは淡白。ポゼッションも大事だけど、もっと前見てよ、と言う面を促さないといけない」と厳しく指摘していたが、全日本は雨中でも技術の高さを活かしてボールをつなぐものの、その一方で迫力がない。「シュート数は話にならない。安全なプレーしかしていない」(吉村監督)というレベルで、チームを動かすほど強烈な存在感で引っ張る選手がいなかった。
 
 後半は弾丸アタッカー、MF泉澤仁(阪南大2年=新潟ユース)が強引な突破で左サイドを破ったほか、右SB廣木雄磨(東京学芸大1年=F東京U-18)や車屋の攻撃参加でチャンスをつくる場面もあった。ただショートパスをつないで攻める全日本選抜は「(技術が高いので)一人ひとり自分を出して、それをお互い合わせていくといいチームになると思う。自分のチームでやっているのと違って、自分がいないところでも上手く回してくれたし、ほかのところでボールが回っている分、自分も次に何をしたらいいか考えやすいのでやりやすいなと思った」という司令塔・茶島やMF椎名伸志(流通経済大2年=青森山田高)らを起点にボールがスムーズに動いていた時間帯もあったが、ゴールは奪えず。27分に廣木が右サイドをえぐり、37分には椎名が左サイドを抜け出すなど得点機はあったものの、関東BのCB鈴木雄也(専修大3年=武相高)の的確なタックルなどに阻まれてしまった。対する関東BもMF中山雄登(流通経済大2年=広島ユース)の左足シュートや左CKからSB須藤貴郁(平成国際大2年=矢板中央高)の放った決定的なヘディングシュートがGK正面を突くなど勝ち越すことができず。1-1の引き分けに終わった。

 全日本選抜にとって今回の合宿とデンソーチャレンジカップは「まずはアピール。(個人として)どれだけできるか」(吉村監督)というメインバー入りへのサバイバル合戦。結果は引き分けに終わったものの、チームの完成度を高めるよりも、それぞれが力を出すことに重きが置かれている。チームでの活躍を評価されて全日本入りを勝ち取った選手たち。今後デンソーカップチャレンジを経て有力な4年生たちとの入れ替えが実施される予定だが、同じプレーを全日本でも続けてアピールに成功した選手が、全日本の今春のターゲットである日韓戦へ生き残ることになりそうだ。

[写真]全日本選抜の仲川は同点ゴールを決めるなどアピール
(取材・文 吉田太郎)

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