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34年ぶりVへ、中央大が攻め抜いて首位守る:関東

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第86回関東大学サッカーリーグ戦
関東1部リーグ

[5.12 関東大学リーグ1部第7節 中央大0-0日本体育大 夢の島]

 JR東日本カップ2012 第86回関東大学サッカーリーグ戦1部リーグは12日、第7節1日目の5試合を行い、東京・夢の島競技場では4連勝中の首位・中央大と日本体育大が激突。0-0で引き分け、中大は首位を守った。

 前節首位に浮上した中大にとって今季初めて1位として迎える一戦。ただ34年ぶりのリーグ優勝を狙うチームはプレッシャーを感じることなく、攻撃的なサッカーを貫いて「最低限」の勝ち点1を手にした。白須真介監督は「(首位として臨む試合が)簡単でないことは分かった。甘くない、と言われたゲームだと思う」。08年度に大学日本一を勝ち取っている中大にとっても関東タイトルは悲願。前線からGKまでタレント揃う今年は優勝争いのプレッシャーと常に対峙しながらの1年間となる。その中で日体大戦に関しては結果がついてこなかったが、指揮官は首位として戦うことができたこと、それをキープできたこと、そして非常に攻撃的だった90分間に前向きだった。

 ジュビロ磐田をJリーグ王者へ導いた経歴を持つ鈴木政一監督率いる日体大は、昇格組ながら前節に首位・筑波大を下すなどここまで6試合で1敗のみ。落ち着いたボール捌きで攻撃の起点となっているMF新井純平主将(4年=つくば開成高)も「チーム的にはやれている。攻撃も守備もバランスいい。1試合1試合成長できている実感がある」と手ごたえを口にするなど、14年ぶりに復帰した1部で存在感十分の戦いを見せている。ただ中大はその相手に対して序盤からボールを支配。別格のプレーでチームを引っ張る全日本大学選抜MF六平光成(4年=前橋育英高)中心に最終ラインの選手を含めたドリブルとショートパスで相手を切り崩すと、完全にサイドアタッカーと化していた右の今井智基(4年=大宮ユース)と左の古賀鯨太朗(3年=大津高)の両SBが何度もスルーパスに走りこむ。リスク覚悟の攻撃を繰り出す一方で田仲智紀(4年=浦和ユース)と細見諒(3年=C大阪U-18)のダブルボランチが危険を的確に消していた。

 前半は中大がシュート2本で日体大はゼロ。立ち上がりにFW砂川優太郎(2年=広島ユース)が迎えた決定機を除くと日体大の堅い守備の前になかなか得点機をつくることのできていなかった中大だったが後半は一転、2桁近いビッグチャンスで日体大ゴールを襲い続けた。まずは4分、六平の強引な中央突破から右クロスをFW安柄俊(4年=東京朝鮮高)が逆サイドへつなぐとフリーのFW奥山慎(4年=帝京高)がPAから左足シュート。10分には右サイドから切れ込んだMF田辺圭佑(3年=成立学園高)の左足シュートがポストをかすめ、13分にはゴールライン上でDFにクリアされたCB安田隆(4年=三菱養和SCユース)のヘディングシュートのこぼれ球を安が豪快なバイシクルショットで叩きつける。そして21分には六平のスルーパスに走りこんだ今井が右足を振りぬいた。だが日体大はGK小川駿(4年=伊奈学園総合高)がビッグセーブを連発。ほとんどが決定的だった中大の至近距離からのシュートを驚異的な反応でことごとく跳ね返していった。

 日体大は守護神の好守だけでなく、切れ味十分のカウンターでも中大を苦しめる。強風が吹き付けたこの日、風上だった前半は前線へのボールが流れて好機につながらなかったが、後半は鈴木監督が「(向かい風で)ボールが止まる。後半の方がチャンスはあると思っていた」と振り返ったとおりにチャンスの数が激増。16分にスピードのあるFW北脇健慈(3年=東京Vユース)が投入されると、スペースへの攻撃がより効果を増し、決定機につながった。中大の攻撃がやや雑になったこともあり、「意識していた」(新井主将)セカンドボールを手繰り寄せる回数を増やすと、新井とMF稲垣祥(3年=帝京高)を起点に切り替え速く敵陣へ飛び込んでくる右SB田中優毅(4年=四日市中央工高)や左MF平野又三(4年=F東京U-18)が決定的なクロスを配球。FW渡辺亮太(4年=調布北高)が打点の高いヘッドで何度も撃ち抜く形ができていた。

 ただ、日体大は決定的な一撃がGKの正面を突くか、枠を外れるなどシュートの精度を欠いてしまう。オープンな撃ち合いとなった終盤もスコアは動かず。中大は44分に奥山のヒールパスで交代出場のFW皆川佑介(3年=前橋育英高)が抜け出したがシュートは再び小川にはじき出され、直後の左クロスにファーサイドの六平がフリーで反応するも右足ボレーは枠を越えた。一方の日体大はロスタイムに平野がゴール正面から決定的な右足シュート。直後にはセカンドボールを拾った稲垣の右足シュートがクロスバーを叩く。そして右サイドを突破したMF梅村徹(3年=野洲高)のクロスを北脇がダイビングヘッドで狙ったがゴールを捉えず試合終了。終盤だけで10度近く決定機をつくった日体大だったがこちらも白星を掴み取ることはできなかった。

 中大は勝ち点3こそ逃したが、勝ち点1を重ねて首位キープ。後半は決定機を何度もつくられたが、中大らしく90分間攻め抜いた。大当たりだった日体大GK小川の存在によって引き分けに持ち込まれたが、決して悲観するようなものではなく、今後に期待を抱かせる内容だった。奥山は「決めるべきところで決めるという課題が残ったけれど、プラスに捉えている。目の前の試合にだけ集中してできている。(次戦へ向けて)またいい準備をするだけ」。第2節で筑波大に2-6で敗れて“本気になった”タレント軍団に油断は見られない。魅惑の攻撃サッカーを全面に押し出しながら結果も勝ち取り、今年こそ歴史を塗り替える。

[写真]右サイドから何度もゴールへ迫ったSB今井(左)ら中央大はリスクを怖れずに攻め抜いた

(取材・文 吉田太郎)
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