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慶大卒のなでしこリーガー籾木結花が目指すもの…「女子サッカー選手の価値を発信していきたい」

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来月のW杯でも活躍に期待が集まる籾木結花

 なでしこリーグで5連覇を目指す日テレ・ベレーザの10番は籾木結花が背負っている。これまで名だたる名選手が背負って来た伝統の背番号だが、彼女は「過去の10番を背負った方々を、新しい形で超えていきたい」という。新しい形。今春、慶應義塾大を卒業して社会人になった23歳が目指す姿を聞いた。

■女性アスリート像

―籾木選手が契約するNIKEは女子アスリートへの支援を積極的に行っています。
「女性で盛り上げて行こうという考えで、すごく共感できる部分が多い。その中で自分を選んでくれていろんな活動をして下さっているというのがすごく嬉しい。自分にしかできないことを一緒にやっていきたい。チャンスを無駄にしないように、自分自身、いろいろな案を出していきたいなと思っています」

―籾木選手は今春まで慶應義塾大に在学。またクラブの『5000人満員プロジェクト』に参画するなど、プレーヤーだけにとどまらない女性アスリート像を築かれています。
「もともと勉強は得意ではなかったのですが、メニーナ(ベレーザの下部組織)にいたときに当時の監督の寺谷さんがサッカーだけじゃなく、勉強もやらないとサッカーをやらせないという方針で、そこで勉強もしっかりやるというのが身につきました。でも中高の勉強は大人になって生きてくる勉強ではないな、と勝手に思っていて。大学では自分の勉強したいことと向き合いたいなと思っていたんです」

「その考えを掘り下げたときに、高校の時になでしこジャパンがW杯を優勝してからの観客の変動を肌で感じたことを思い出しました。スポーツビジネスの観点で、何かやりたいなとずっと思っていて。それで慶應のSFCだったらそれを軸に研究を進めながらも、全然違う分野を掛け合わせた研究も進めることができると思ったんです。あとはメニーナの時もそうでしたけど、自分よりレベルの高い環境に身を置くことで、自分が何かを選択するときの基準ができた。確かに高校の時は青春っぽいことを羨ましいなと思った時期もありました。でも自分の戦っているフィールドは違うなと思っていて、そこは吹っ切って行動していました。火曜から金曜まで1限から3限で授業を入れて、夕方練習に行ってという生活の繰り返しでしたが、充実していたと思います」

「ベレーザの集客プロジェクトに携わったのは、何で女子サッカーを観てもらいたいのか、何で男子サッカーではなくて女子サッカーなのか、女子サッカーに価値が本当にあるのかということを考えたかったからです。今は表面的な魅力を出すしかないのかなと感じていていますが、価値があるものはもっと中にあるもので、選手一人ひとりのストーリーや人間性に価値があるのではないかなと思っています。4月から(ビジネスコンサルティング事業などを手掛ける)クリアソンという会社に入社したのですが、クリアソンに決めたのもその考えに出会ったからです。クリアソンの活動を通じて、女子サッカー選手の価値というのをもっともっと発信していきたいと思っています」


■W杯イヤー

―今年は女子サッカー界にとって、4年に一度のワールドカップイヤーです。現在のコンディションはどうでしょう?
「4月の欧州遠征は足裏を痛めてしまい辞退したのですが、少し休むことで復帰することができました。怪我が軽くてよかったなと思っています。復帰後も問題はありませんし、昨年序盤も怪我で休んでしまっていたのですが、ぎこちなさが取れてからはすごくコンディションはいいと思います。それを今年、新しいシーズンに入ってからも継続できているのかなと思いますし、今回の怪我で一回流れを止めてしまったというのはあるんですけど、そこまで落ちていない。体の状態は良いんじゃないかなと思っています」

―2月に行ったアメリカ遠征には参加されていて、強豪国を相手に1勝1分1敗という成績でした。
「アメリカ遠征では強豪国と3試合出来るということだったので、そこで100%の状態で試合に臨みたいというのはみんなの意図としてありました。でもブラジル戦で1勝しましたが、世界一を目指すチームとしては1分1敗の部分に向き合わないといけない。特に最後のイングランド戦はW杯のグループリーグでも当たりますし、0-3で終わったということは、世界一を目指すチームがやってはいけないことだったのかなと思います。そのあたりはすごく危機感というか、W杯に向けてというところではまだまだチームが出来上がっていないのかなと思いました」

―一方で高倉監督は若手選手の成長に手ごたえを感じていました。
「自分より年齢が下の子たちは世代別で世界一になっていて、それが自信になっていると感じます。経験がないからこそぶつかっていけるフレッシュさも感じます。いいものを持っているなと思うので、チーム内の競争はすごく激しい。自分も世代別を含めるとW杯は3回目。その経験を活かしたい。どんなことが起きても臨機応変に対応できるようにしたいなと思います」

―2011年の“なでしこブーム”を考えても、結果を残し続けることが重要になる。
「先輩方が優勝を見せてくれなければ、自分たちが優勝するという目標を立てることも出来なかったと思います。それが現実的に出来るんだという可能性を見出してくれたのは先輩たちだったので、自分のサッカー人生において、そういう先輩がいてくれたことは嬉しいことです。これからの女子サッカーの価値を上げるためにも、頑張りたいと思います」

●籾木結花
1996年4月9日、アメリカ・ニューヨーク生まれの23歳。小学校の時はバディFCに所属。2学年先輩の村松智子を追って、中学進学と同時に日テレ・メニーナに入団した。中学3年生だった2011年には日テレ・ベレーザでトップチームデビューも飾った。学業では都立杉並高、慶應義塾大に進学。バディFCにともに在籍したディサロ燦シルヴァーノ(ギラヴァンツ北九州)は高校のクラスメイト。入学式で再会し、「お互い『何でいんの!?』みたいになった」。今春より株式会社クリアソンに入社。

(取材・文 児玉幸洋)

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