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国際プロ選手会、女子サッカー支援の姿勢強調…あえて“コロナ禍”に伝えた意味

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2019年の女子W杯を制したアメリカ代表

 国際プロサッカー選手会(FIFPro)は29日、女子サッカーに関する調査『Raising Our Game』を公表し、労働基準や大会規定などさまざまなグローバル基準を構築するよう求めた。新型コロナウイルスの世界的流行でサッカー界が停滞を強いられている中、当初予定していた2月の公表を控えていたが、今回はあえて「パンデミックの最中に公開することを決めた」という。

 FIFProのヨナス・バエル・ホフマン事務局長は、この時期に公表した理由について「非常に不確かで、心配が絶えない時期にこのレポートを発表していることを理解している。しかし、われわれはサッカー選手に指針を示す責任、ならびに彼らの産業への責任を負っている」と説明した。

 その上で「われわれはこの新型コロナウイルスのパンデミック後に産業をリスタートするため、あらゆる利害関係者と協力体制を組んで、一致団結したやり方で関係づくりを行っている。なかでも多くの場合でわずかな報酬と補償しかない中、女子サッカーに多くの時間と情熱を注いできたプロ選手たちは再建プロセスの中心になる」と女子サッカー関係者への支援の必要性を強調した。

 調査では各国リーグ、クラブ、スポンサー、大会主催者からFIFAや地域連盟を通じて得たデータの他、18か国186人の各国代表選手にも独自の聞き取りを実施。世界中の女子リーグ、女子クラブではプロ意識に差があり、シーズンが短すぎることや財政上の問題が選手に転化されていることが「頻繁にある」ことが分かったという。

 調査対象者からはリソース不足の声が上がっており、78%は所属クラブが明確な成長戦略を持っていると認識していなかった。その背景には「クラブの透明性と選手のコミットメントに欠如がある」とのことだが、「最悪の場合、クラブに戦略がないことを意味している」との危機感もにじませた。

 一方、女子サッカーへの商業的な関心は高まっており、トップクラブの賃金は上昇傾向にあるとようだ。その流れを受けてFIFProは「長期的な成功を確実なものにするために、それを支える適切な構造と持続可能なリソースが必要だ」と指摘。女子部門のアマンダ・バンダーボルト氏は「現状の勢いを変革に変える手助けとなることを望む」と述べている。

FIFProが発表した主な提言は以下のとおり

・グローバルな労働基準の確立。プロ選手が適切な契約、補償、労働負担、トレーニング、試合環境、健康と安全基準、結社の自由、治療へのアクセスなどを保証すること。

・グローバルな国際トーナメント基準の確立。これによりクラブチーム、代表チームの両方において、トップレベルの国際大会に参加する選手が保護され、平等に良い状態でパフォーマンスを発揮できるようになる。

・世界中のサッカー選手がスポーツを進歩させるために公平な発言ができるような、一般的な産業基準と同様の団体交渉権。

・プロ選手が長く、持続可能なキャリアを楽しむことを可能とするため、グローバルなクラブチームと代表チームの競技形式とスケジュール。

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