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衰え、世代交代、時代の終わり…メッシがクラシコで示した批判への答え

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改めて世界一の選手であることを示したリオネル・メッシ

 衰えとは無縁――。そんなことは現実としてあり得ない。

 しかし、リオネル・メッシは改めて人並み外れた能力が健在であることを示した。宿敵レアル・マドリーとのクラシコでバルセロナをけん引し、リーガ・エスパニョーラの優勝争いに踏みとどまる勝利を呼び込んだのだ。

 イタリアの名将、マルチェロ・リッピはクラシコを前に「メッシが衰えたと思うか」という質問に対してこう答えていた。

「バルセロナの結果を見ると、いまだにいつもメッシがゴールやアシストを挙げている」

「彼が衰えたとは思わない。むしろ、バルセロナの他のメンバーに当てはまることではないか。最近は(その影響からか)ディフェンスの質が低下している」

 リッピの指摘は正しかった。サンチャゴ・ベルナベウで行われた一戦でメッシは輝き、バルセロナのディフェンスは脆さを見せた。バルサにとって幸いだったのは、メッシが守備陣の出来を補って余りある活躍をした、ということだ。

 神童だったメッシは、気づけば今年で30歳になる。最近は「衰え」に関する議論が過熱する一方だった。事実、少なくともここ数戦ではかつてほど、ドリブルの切れ味は鋭くなかった。

 だが、そんな議論があることを笑い話にしたくなるほど、クラシコにおけるメッシは輝いていた。彼の活躍を否定できる者がいるとすれば、それはよほどのひねくれ者か、マドリディスタに違いない。

 舞台はクラシコなのだから当然のことだが、決して簡単な試合ではなかった。先制したのはレアル・マドリーだったし、メッシがマルセロから肘鉄をくらって流血するシーンもあった。

 しかし、メッシはひるまなかった。サンチャゴ・ベルナベウで受けた“歓迎”に反撃したのだ。もちろん、暴力をもってではなく、極めてスポーツ的な意味で、である。

 前半33分、メッシはカゼミーロのマークを外した。イバン・ラキティッチからパスを受けると、滑らかなタッチと軽やかなステップでルカ・モドリッチとダニ・カルバハルをかわした。そして、ケイラー・ナバスの守るゴールマウスにシュートを流し込んだのである。

 その後、マドリーが息を吹き返すシーンもあった。バルセロナが1点をリードして迎えた後半40分、ハメス・ロドリゲスが同点ゴールを決めたのである。

 だが、クラシコの主役はハメスでも、レアルでも、もちろん退場したセルヒオ・ラモスでもなく、メッシだった。第4審判によって告げられたアディショナルタイムの2分を迎える13秒前、ジョルディ・アルバから送られたラストパスに反応すると、左足を振り抜いてゴールネットを揺さぶったのだ。通算500ゴール目となるメモリアル弾により、バルセロナに歓喜を、サンチャゴ・ベルナベウに沈黙をもたらしたのだった。

 メッシはユニフォームを脱いでスタンドに掲げ、自分がいまだに熱狂をもたらすことができる選手だということを誇示した。ユベントス戦の傷が癒えないファンやチームメイトたちに、喜びと感動を与えたのだ。

 かつてレアルの監督を務めたファビオ・カペッロはこの瞬間をテレビ解説のブースで見ていた。メッシがワルツを踊るように決めたゴールのあと、「彼は今なおサッカーの天才だ」と感嘆していた。マドリーに関わる人間でさえ、彼の輝きを否定することはできなかったわけだ。

 当たり前のことだが、物事にはいつか終わりがやってくる。アルフレッド・ディ・ステファノも、ペレも、ディエゴ・マラドーナも、永遠ではなかった。バルセロナの黄金時代に限りが見えているように、メッシの時代もいつかは終わる。しかし、クラシコで放った輝きが続くことになるのなら、時代の閉幕はまだ先のことになりそうだ。それだけの説得力が、この日の彼にはあった。

文=マーク・ドイル/Mark Doyle

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