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堂安律が示す“オレヲミロ”メンタリティ「俺が常に一番やと思ってピッチに立っている」

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堂安律がゲキサカの独占インタビューに応じた

 6月某日。梅雨の晴れ間が差す中で、堂安律は気持ちよくボールを蹴っていた。「いいシュート!」「これは完璧!」。ビジュアル撮影だったが、カメラマンの要求に何度も応じる。「サッカーがしたくなりましたよね」。同時期に開催されていたコパ・アメリカに刺激を受けたという21歳は、思いの丈をボールにぶつけていた。

 堂安は今年5月からプーマとのパートナーシップをスタートさせた。プーマは今春より「オレヲミロ」と題した高校生世代のフットボールプレーヤー向けのキャンペーンを企画。たとえ失敗しても、たとえ控えでも腐らないメンタル、“俺を見てくれ”という強さを求めている。

―俺が常に一番やと思ってピッチに立っている―

―プーマ担当者の話によると、堂安選手を『オレヲミロ』のキャンペーンに起用する際、メンタルに注目したといいます。
「『オレヲミロ』の話を聞いたときも自分にピッタリというか、そういうメンタルで海外で戦っているなと思いました。やっぱり海外に行くと優しいだけじゃ通用しないんですよね。一回失敗しただけで落ち込んでいるようでは、次のチャンスはやってこないんです。人種差別などいろんなことがあっても、俺が常に一番やと思ってピッチに立っている。だからこういう企画はピッタリやなと思ったし、ぜひ高校生もハングリーさを大事にしてほしい。多少わがままと思われてもいいと思うので、そういう気持ちでやってほしいなと思います」

―差別を受けた。
「しょっちゅうですね。試合中もそうですし、普通に人種として差別されます。俺の名前はリツやのに、『スシ』って言われますからね。そういういじり方はされないようにしてきました。イタリア人に『パスタ』って言わないでしょ?それを『スシ』って言われているのと一緒やから。スシボンバー?向こうからしたら愛している証拠なのかなと思うけど、僕は好きじゃない。対等に扱ってほしいと思っているので」

―いきなり外国人と言い合えるメンタルに感心します。強さは持って生まれたものだと思いますか?
「兄貴(堂安憂)が厳しかったから、負けないようにずっとついていっていたからだと思います。私生活でもしょっちゅう泣かされていたので、そういう環境が強くしたのかもしれません。いろんなところで活かされてると感じますしね。日本人としての誇りは持って海外に行っているつもりですし、なめられてたまるかという気持ちでやっています。向上心とか反骨心、それこそ『オレヲミロ』のメンタリティに繋がってくると思いますけど、サッカーに関して言うと、ボールを持てば日本人は上手いので、あとはメンタルのところが大事になってくるのかなと思います」


 堂安は17年夏の移籍でオランダ・エールディビジのフローニンゲンに移籍。1年目から29試合9得点を記録。10代選手のクラブ記録となるFWルイス・スアレス(バルセロナ)らの10ゴールまであと1点と迫った。“若手版バロンドール”と呼ばれるコパ・トロフィー候補10名にもノミネートされた。G大阪から完全移籍を果たした2年目は、ビッグクラブへの移籍も視野に入れた活躍が期待された。

―移籍記事は鼻で笑えるようになった―

―2年目はリーグ戦32試合で5得点という成績でした。昨シーズンを振り返ってください。
「この1年は僕の21年間で一番変化した年だったと思っています。まずは日本代表に選ばれたことが大きく、小さい頃からの夢が叶った年になった。でもそれと同時に応援の声も大きくなって、批判も聞こえるようになった。いろんな気持ちの変化があった中で戦えたので、すごく充実していたと思います。言うなれば成長できるチャンスをくれた年だった。でも化けた年ではなかったと思うので、感じた壁や挫折を次へのバネにしたいと考えています」

―夏の市場が注目されている。
「これから僕だけじゃなく色んな市場が動いてくる時期になると思うけど、オリンピックの1年前ということがある。たくさんの方から試合に出られるところに行った方がいいと言われていますけど、自分はそうじゃないと思っている。自分は攻めていきたいし、壁にぶち当たってもいいんじゃないかなと思っています」

―オランダの強豪クラブはもちろん、イングランドやロシアのクラブが獲得に興味を示しているという報道もされた。
「オランダのトップクラブはいいクラブがありますが、オランダというよりもオランダ以外でプレーしたいという思いはあります。でも最近はそういう記事を見て、鼻で笑えるようになりましたね。ビッグクラブへの移籍を言われますけど、僕自身ブランドにこだわりはない。自分が一番うまくなるところ、刺激を貰えるところ、そして自分を必要としてくれるところでプレーしたいなと常に思っています」

―移籍市場でも堂安選手に対する見方が大きく変わってきている。
「まだ取れていないけどシーズン二桁得点を取れば、オランダやからという声もなくなると思う。この2年間でやっとヨーロッパのクラブであったり、スカウトに名前を憶えてもらえたので、本当に新シーズンは大事になってくる。アジアでは今はソン・フンミン(韓国代表、トッテナム)が抜けていると思うけど、まずはアジアで1番の選手になりたい。チャンピオンズリーグ優勝するというキャリアの最高の夢に向けた一歩目として新シーズンは大事になるなと思っています」

―来年には東京オリンピックが迫っている。期間中は代表に拘束力がないため、移籍するクラブによっては出場できない可能性がある。
「今まではA代表を目指すことがオリンピックにもつながると思ってプレーしてきました。ただその目標が叶った今、どうオリンピックへのモチベーションを持ち続けるかということをよく言われるけど、それは母国でメダルを獲るということしかないと思っている。東京オリンピックは出たいに決まっている。そこの気持ちは持ち続けたいし、それについてはクラブと話し合うしかないなと思っています」

―三好康児、久保建英といった同年代、同ポジションの選手もどんどん頭角を現して、結果を残している。
「単純に楽しみですね。この状況を楽しめないとサッカー選手としてトップに行けないと思っています。もちろん彼らには彼らにしかないものを持っているし、タイプも違う。僕は僕にしか出せない色を出して、監督に信頼して貰えるようなプレーを続けるだけかなと思っています」


●堂安律
1998年6月16日、兵庫県尼崎市出身の21歳。小学校時代は西宮少年SSでプレーし、中学校入学と同時にガンバ大阪に入団。2年生だった2012年には史上初のジュニアユース3冠を達成した。高校2年生の時にトップチーム2種登録。15年5月27日のACLのFCソウル戦で公式戦デビュー。16歳344日でのトップチームデビューはG大阪では最年少記録だった。17年夏の移籍でオランダ・エールディビジのフローニンゲンに期限付き移籍。翌年完全移籍。2年間でリーグ戦通算61試合14得点を記録した。

(取材・文 児玉幸洋)
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