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内部記者が明かす、スペイン全国紙はなぜ久保建英を1面に使ったのか?

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レアル・マドリーでの活躍が期待される久保建英

 衝撃的なレアル・マドリー移籍、そしてプレシーズンのトップチーム帯同から日に日に日本での注目度だけでなく海外メディアの評価も高めている久保建英。14日には、スペインで発行部数2位を誇る全国紙の『as』が、「KUBO MANIA(熱狂の久保)」との見出しを打って笑顔の久保の写真を1面で使った。同紙のレアル番でツアーにも帯同中のカルロス・フォルハネス記者が、久保を1面に起用した理由や現状をレポートする。

 レアルに加入したMF久保建英が巻き起こす熱狂は、こう言ってはおかしいかもしれないが、マドリー自体にさえ及んでいる。クラブは少しずつ、1~2年をかけて彼を適応させていく考えだったものの、今ある現実を認めざるを得なくなった。つまり、日本の純然たる才能が、自分たちが考えていたよりもトップチームに近い場所に立っていることを。

 マドリーが現在取り組んでいるカナダ合宿で、久保はそうした現実を見せつけた。コーチ陣は久保のレベルの高さ、良好なコンディションを確認し、現地時間20日にヒューストンを舞台に行われるプレシーズン初戦、バイエルンとの試合で起用することも考慮している。

 14日付の『アス』の1面を久保が飾ったのは、以上の理由によってだ。私がカナダ合宿の取材で得た情報をもとにして、編集局はこの日本人FWを全面に押し出すことを決定した。

 昨季、メジャータイトル無冠に終わったマドリーは、今夏に積極的な選手補強を敢行しているが、ここまでネームだけでファンの期待を呼び起こしたのはエデン・アザールのみである。そのために『アス』は、マドリー内部で生じている違う希望を1面で反映させることにした。それが、あの笑みを浮かべる久保の写真だったのだ。

 もちろん、たとえ考えられていたよりトップチームとの距離が近いとしても、今季の久保があくまでマドリーのBチーム、カスティージャの選手ということに変わりはない。彼の立ち位置は、マドリーの未来を担える候補生というところである。しかしながらトップチームを率いるジネディーヌ・ジダンは、機を見て彼を招集することができる。

 リーガ・エスパニョーラ参加チームは、スペイン人とEU加盟国以外の選手を3人しか擁することができず、今季のマドリーであればエデル・ミリトン、ビニシウス・ジュニオール、ロドリゴがその3枠を占める(ミリトンは今季中にEU国籍取得を目指す)。

 そして久保に関して、マドリーは昨季にビニシウスに対して行った施策を繰り返すことになる。久保はフベニール(U-19)のカテゴリーの選手として登録されることになり、その場合はEU圏外枠の選手であってもトップチームでのプレーに支障はない。昨季のビニシウスであれば、フベニール登録のままシーズン途中からトップチームに引き上げられて、その積極果敢なプレーでもって不調に喘ぐチームに希望を灯した。

 無論、ビニシウスは移籍金として4500万ユーロ(約54億6000万円)がかかっており、トップチームでのプレーはある種、義務付けられていたと言える。だがトップチームで通用することを証明したのは、移籍金ではなく彼自身の実力にほかならない。

 さて、今季の久保はどのような軌跡を描いていくのだろうか。少なくともクラブは、終始カスティージャでプレーさせるのではなく、コパ・デル・レイ出場によってトップチームの公式戦デビューを果たさせることを見据えている。それから先のことは、チームの状況と、久保の実力次第となる。

取材・文=カルロス・ フォルハネス/スペイン『AS』レアル・マドリー番記者

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