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試合中の「反差別パフォーマンス」は処分すべき? FIFAの見解は…

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FWジェイドン・サンチョ

 国際サッカー連盟(FIFA)は各国の競技主催者に向け、差別に抗議するメッセージを出した選手にイエローカードを提示するかどうかを検討する際には「コモンセンス」(良識)に基づいて判断するよう求めたようだ。イギリス『スカイ』が報じている。

 先週末に行われたブンデスリーガ第29節では、アメリカ・ミネアポリスで警官に殺害されたジョージ・フロイド氏への追悼メッセージが次々に発された。同様の事案が過去にも起きていることから、世界的に黒人差別の現状を象徴する事件だとされて、抗議運動が巻き起こっている中、サッカー選手たちもこれに賛同した形だ。

 イングランド出身のドルトムントFWジェイドン・サンチョもその一人。この試合でハットトリックを記録した19歳だが、後半12分に1点目を奪った直後、ユニフォームを脱いで「Justice for George Floyd(ジョージ・フロイドのための正義)」と記したTシャツをテレビカメラに向けてアピールした。

 この直後、主審はサンチョにイエローカードを提示した。サッカー競技規則では「競技者は得点をしたときに喜ぶことはできるが、その表現は過度になってはならない。あらかじめ演出されたパフォーマンスは勧められず、時間をかけ過ぎてはならない」と明記。また「シャツを脱ぐ」行為は「警告されなければならない」とされており、これに則った処分が下された形だ。

 また処分こそ受けなかったが、同じドルトムントのMFアクラフ・ハキミも同じメッセージが記されたTシャツを見せた他、ボルシアMGのFWマーカス・テュラムは片膝を地面につくポーズで差別抗議の意を表現。シャルケのDFウェストン・マッケニーは「Justice for George」と記したアームバンドを着けてプレーしていた。

 これを受けて、ドイツサッカー連盟(DFB)のライナー・コッホ副会長は「国際的にそうであるように、試合中はいかなる政治的発言も、いかなる種類のメッセージを含むべきではない」と指摘。選手たちに何らかの処分が下される可能性も示唆していた。

 一方、FIFAはこの流れにやんわりと釘を刺した。『AP通信』の取材に対して「FIFAはジョージ・フロイドの事件を取り巻く悲惨な状況に対し、大勢のサッカー選手が表現した感情や懸念の深さを完全に理解している」と説明。「競技規則の適用は競技主催者に委ねられるが、彼らはコモン・センスを用い、イベントを取り巻く文脈を熟慮すべきだ」としている。

 「コモン・センス」とは単に「常識」というだけでなく、良心や思慮深さといった価値観をも含んだ概念。FIFAがかねがね強調している「反差別」も該当するとみられる。一方、イエローカードや事後処分の基準が明確になったわけではなく、競技団体と審判員は今後より慎重な対応を迫られることになりそうだ。

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