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シュート練習でJ・フェリックスとも対峙…「あれはもう忘れられない」パリ五輪世代GK小久保玲央ブライアンが明かすベンフィカでの日々

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GK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)

 パリ五輪世代の正守護神候補として期待がかかる柏レイソルU-18出身のGK小久保玲央ブライアンは2019年から、ポルトガルの名門ベンフィカで日々鍛錬を重ねている。ヤン・オブラク(A・マドリー)、エデルソン・モラレス(マンチェスター・C)ら世界有数のGKを次々と輩出してきたクラブで、どのような指導を受けているのか。日本からはなかなか知ることのできないベールの内側に迫った。

――まずベンフィカでの近況を教えてください。
「今季からBチームに上がって、なかなか出場機会には恵まれていないんですが、U-23チームの試合に出たり、トップチームの練習に参加したりというような形です」

――その中で手応えはいかがですか。
「自分の中で一番刺激的なのがAチームのトレーニング参加です。周りの選手が本当に上手いので、そこで自分のやる気やプレーの質が上がってきています。そこに行くのがやりがいなので、Aチームに行くためにというのを毎日思っています」

――ベンフィカというとポルトガルでも有数の名門クラブですが、トップチームの選手になるとすごい存在だと思います。
「結構若い選手が多くて、育成も上手いので、トップチームに行った選手はいろんなチームに行ったりしますよね。国内でも1、2を争うチームなので、そこで試合に出るというのはすごいことだと思います」

――具体的にこのGKがすごい、この選手のシュートがすごいという経験はしていますか。
「『これを止められるの?』というのは後ろからシュート練を見ていても思うので、どうやったら反応できるのかというところがすごいなと思います」

――どのGKですか。
「99番のオーディ(オディッセアス・ブラホディモス)というキーパーがいるんですが、そのキーパーが自分にとって憧れで、見本としている選手です」

――FWと対峙する機会もありますか。
「あります。2年前にジョアン・フェリックスさん(A・マドリー)とやった時に、レベルが全然違って、ここで抜けてくるとか、そっちに打つの?みたいなところが上手くて、あれはもう忘れられないですね」

――どの辺がすごかったですか。
「シュートというよりはテクニックがあって、速くて、あと頭がいいなというのを感じました」

――頭がいいんですね。
「しっかり仲間と連係して…というところはGKから見ていても感じました」

――J・フェリックスと対峙できるというのは、あらためてすごい環境ですね。
「この前までルベン・ディアス選手(マンチェスター・C)とも練習をしていたりしたので、彼らをチャンピオンズリーグなどで見ていたりすると、『わー、俺この選手とやっていたんだ』というのもありつつ、自分が目指さないといけないんだな、目指せる環境にいるなというのを思います」

――そうした環境でトレーニングができることで、日々の意識につながっている部分はありますか。
「ヨーロッパのビッグクラブにいるからには上を目指さないといけないというのは、自分もそうですし、周りもすごく思っているので。みんなで切磋琢磨していて、自分が下に下がったらもう一気に抜かれちゃう世界なので、そこは負けず嫌いじゃないですけど、上に上り詰めていかないといけないなと思います」


――いま自身の実力はどのくらいの水準にあると捉えていますか。
「Aチームの3番手キーパーがBチームの試合に出ることが多いので、いまはBチームのベンチにいて、出場機会を得るのは難しい状況です。ただ、良い練習を提供してくれているので、そこで試合に出られなくても諦めずにやれば、上の世界に行けるのかなと信じてやっています」

――その中で手応えを得られた経験はありますか。
「練習が極端にシンプルなものが多くて、そこでの安定感や落ち着きは高校時代にはなかったので、そこが得られたと感じています」

――どんな環境が成長につながったと思いますか。
「まず施設から全然違って、プールがあったり、練習を終えてすぐにご飯が食べられたりなど、本当に育成のビッグクラブだなと感じています。自分の両親もベンフィカの施設を見ていましたが、一目ですごいねとすぐに感じるような環境でした。自分もすごくいい環境だなと感じています」

――育成年代を過ごした柏レイソルも、日本有数のGKがたくさん育っています。
「レイソルユースのGKコーチの方もすごく上手くて、ドイツなどいろんな国から見て学んだことを自分たちに教えてくださっていたので、レイソルでの6年間はすごくいい経験だったなと思います」

――海外でのプレーにつながる礎を築くことができたと感じますか。
「本当にそうですね。海外のやり方を取り入れてくれていたので、自分がこっちに来てからも初めて取り組むという練習はなかったと思います」

――逆に日本で育ったGKだからこそ難しかった部分はありますか。
「自分はそんなにないですね。レイソルはもともと結構つなぐチームで、ベンフィカよりもっとつないでいたんですけど、自分はあまり気にならなかったです」

――日本と欧州のGKでここが違うなとギャップを感じた部分はありますか。
「サイズや厚みが全然違うなというところはあります。でもそれほどプレーの面では気にならないというか、あまり誰が下手で誰が上手いとかはないと思います。日本でやっていても上は目指せると思うし、あまり変わりはないなと思います」


――壁があるとすればコミュニケーションの部分くらいですか。
「そうですね。海外に来て1年目は何も話せず、英語がもともと喋れないのでちょっと苦労した部分はありました。ただ、ポルトガル人のチームメートもすごく優しいので、みんなで話して、レッスンとかもあったので徐々に覚えて、半年後くらいには指示を出せたり、少しコミュニケーションが取れたりするようになりました。これから挑戦する方はやっぱり言語を喋れないと、初めはちょっと難しいかなというのはありますが、徐々に慣れていくとは思います」

――いまポルトガルに渡って2年ちょっと経つと思いますが、コミュニケーション面はいかがですか。
「レッスンを週3でやっているので、ポルトガル語も覚えてきて、まだ本を読んだりはできないですけど、日常会話なら話せるなと思いますね」

――そうなるとピッチ上のパフォーマンスにもつながりますか。
「GKコーチが細かく言いたかった時、昔は何を言いたいかわからなくて、自分からアクションを起こして話すこともできなかったんですが、いまは『そこ違うよね』と言われたら『なんで?』というところでディスカッションができるようになったので、そこは喋れた方が絶対にいいと思います」

――現地での経験を伝えてくださって、読んでいるGKも刺激を受けるのではないかと思います。逆に日本代表はどれくらい意識していますか。先日は東京五輪代表も発表されましたし、A代表にもつながる道筋もあると思います。
「日本代表は意識しますね。やっぱりA代表に選ばれるのが自分の中での夢なので、今回五輪に選ばれなくて悔しい思いもありますが、次はパリ五輪もありますし、そこまでもう3年もないくらいなので目指して頑張っていきたいと思います」

――世代別代表で出場を目指していたU-20W杯がコロナ禍でなくなってしまいましたが、大舞台に出たい思いはありますか。
「他の選手はみんな悔しがっていました。みんなその舞台に出て、海外に出るというのが一つの夢だったので、すでに海外に出ることができている自分より、他の選手が可哀想だなという思いがありました」

――小久保選手自身はすでに目の前に挑戦すべき舞台があるということですね。
「そうですね。はい」


――なかなかプレーを見られないファンの方もいると思いますが、いまのご自身の強みはどのような部分だと捉えていますか。
「シュートストップは強みにしていきたいと思っています。あとは身長を活かしたハイボールや、足元でのビルドアップへの積極的な参加は自分の強みかなと思っています」

――身長は昨年の世代別代表キャンプの資料に190cmとあったんですが、もう少し高く見えます。
「いまは193cmくらいですね。ベンフィカに来てからも1cm伸びました」

――ベンフィカでも大きいほうですよね。
「2番目に大きいですね」

――そこは強みになると思いますか。
「どうですかね。180cmでもシュートストップが上手い選手もたくさんいますし、サイズは必要だと思いますが、なくても大丈夫なんじゃないかなと思っています」

――ちなみに理想とするGKはいますか。
「自分はテア・シュテーゲン選手(バルセロナ)が昔から好きです。あの落ち着きと、あのシュートストップと、あのバネのあるセービングが好きで、昔からお手本にしています」

――ベンフィカにいれば、テア・シュテーゲンが出ているような舞台、CLなどにつながっていくと思います。今後の目標を教えてください。
「まずはBチームでレギュラーを取って定着して、そこから一日でも早くAチームに昇格して、Aチームで定着することが自分の目標です」

――長期スパンの目標はありますか。こういうサッカー人生を歩みたいという。
「夢は30歳くらいまではヨーロッパで頑張ってやって、そこから日本に戻ってきて、還元していきたいなという自分の中での夢があります」

――思ったより早かったです。
「ちょっと早かったかもしれないです(笑)。32歳くらいですかね。それまで海外でやって、そこから戻ってこっちでプレーしたいなと思います。家族とか友人の前でプレーしていきたいなという思いがあります」


(インタビュー・文 竹内達也)

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