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ドイツの歯車を戻した“94分42秒”、『精密機械』の144タッチ目が歴史的逆転弾に

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劇的な決勝ゴールを決めたドイツ代表MFトニ・クロース

[6.23 W杯F組第2節 ドイツ2-1スウェーデン ソチ]

 ドイツ代表を崖っぷちに追い込むミスを犯した『精密機械』は最後の最後で大仕事をやってのけた。明暗を分けたのは94分42秒に記録した珠玉の右足シュート。前回王者の偉大な歴史を塗り替え、そして未来につなぐ結果を導いたスーパーゴールだった。

 MFトニ・クロースはグループリーグ第2節のスウェーデン戦で、合計144回のプレーに関与した。これはドイツ代表チームの歴史において、記録を取り始めた1966年以降で最も多い数だ。

 だが、そんな『精密機械』の異名を持つMFにとって、この大会は満足いくものではなかった。第1戦のメキシコ戦ではマンマークに遭い、自身がポジションを空けた場所から失点。その後も有効な手立てを講じることができず、開幕戦を黒星で発進するという事態に陥った。

 そして迎えた第2戦、クロースはスタートポジションこそ4-2-3-1の3列目だったが、3-2-5の最後尾で球出し役を任された。第1戦の相手とは異なり、低く構えるスウェーデン守備陣に対し、ボールを散らしながらゆっくりと前進し、徐々に存在感を高めていった。

 ところが前半32分、機械の“歯車”が狂った。中盤で前を向いたクロースは斜め前へのパスコースを選択。しかし、これがFWマルクス・ベリに読まれ、カウンターを受けてしまう。ボールは右サイドに展開され、MFビクトル・クラーソンがゴール前に浮き球を供給。戻れなかったクロースの頭上を越え、FWオラ・トイボネンが胸トラップから流し込んだ。

 敗れればグループリーグ敗退が決まるドイツにとって、どん底に追い込まれる一撃。それも最も精確なプレーを繰り出す大黒柱のミスから生まれた失点だった。その後、後半3分には自身の持ち上がりから左サイドを破り、MFマルコ・ロイスのゴールで同点に。だが、焦りを重ねるチームはDFジェローム・ボアテングの退場で、10人で戦うことになってしまった。

 そのまま時は流れて後半アディショナルタイム5分、誰もが引き分けに終わってしまうと思った時間帯だった。クロースは敵陣左寄りでボールを持つと、左サイドのロイスに展開し、ゴール左斜め前でFKを獲得する。すぐさまボールを受け取った背番号8は、ここを自らの見せ場と見定めたようだった。

 PA左約30度という角度のない位置。クロースが選んだのは脇に立つロイスへのパスだ。同点弾を奪ったMFがピタリと止めると、そこに再び走り込んだクロースが右足を一閃。壁を避けたボールは真っすぐな軌道でゴール右隅へ。ドイツのW杯の歴史で最も遅い94分42秒、最も多い144タッチ目での劇的な逆転弾だった。

 その後は相手キックオフで試合が再開され、攻撃は相手のハンドで終了。自陣からのFKが与えられると、一度は位置についたクロースだったが、GKマヌエル・ノイアーにキックを譲った。大きく蹴り出したところで試合終了。前回王者のドイツ代表は、土壇場で決勝トーナメント進出の望みをつなげた。

 試合後、就任12年目のヨアヒム・レーブ監督は「われわれが緊張感を失っていなかったこと、失点した後にパニックにならなかったことに感銘を受けた。勝てるという希望を失わず、最後まで信念を示した」と勝因を指摘。そんな奇跡の逆転劇を牽引したのは、珍しいミスから立ち上がった『精密機械』だった。

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