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新ルールのゴールキックはPA内がポイント。先行導入のU-20W杯、各国の対応は?

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U-20W杯出場国のゴールキックは…

 ポーランドで開催中のU-20ワールドカップでは、世界中の大会に先駆けて2019-20シーズン向けの新競技規則が適用されている。新ルールではゴールキックの手続きも変更され、攻撃側の選手(ボール保持側)はPA内でボールを受けることが可能になった。では、果たしてどれだけ多くのチームがルール変更を生かしているのか。国際映像を通して調べてみた。

 サッカーのルールを定める国際サッカー評議会は今年3月、欧州スケジュールの19-20シーズンに向けた競技規則の改訂を決議し、大幅なルール変更を発表した。ゴールキックとペナルティエリア内でのFKはこれまで、攻撃側選手がエリア内でボールを受けると蹴り直しになっていたが、新たなルールではこれが認められるようになった。

 変更の主な狙いは時間稼ぎを防ぐことだ。しかし、守備側(ボール非保持側)の選手はこれまで同様エリア内に入ることが許されないため、攻撃側の選手はフリーでボールを受けやすくなる。一方、エリア内でボールをつなぐ場合は一つのミスが致命傷となるため、リスクも伴う選択となりそうだ。

 今回はいち早く新ルールが導入されているU-20W杯で、このルール変更がどのように活かされているかを調べた。国際映像は全試合放送中の『J SPORTSオンデマンド』を使用。もっとも、国際映像ではゴールキックのシーンにリプレーが重なる場合が多いため、全てのケースを確認することはできず、例に出した国はあくまでも一例だ。

 U-20W杯のゴールキックでは、大きく分けて以下の4パターンが見られた。

①GKがロングキックを蹴る
 ルール変更が行われたものの、約半数の参加国はGKがロングキックを蹴るというスタイルを採用していた。おそらく競技規則の改訂前から、GKをポゼッションの起点として位置づけていないチームであろう。

 むしろ開幕2連勝を果たしたアルゼンチンは、徹底してエースFWアドルフォ・ガイチにロングボールを放り込んでおり、GL第2節のポルトガル戦ではその戦術が奏功。ガイチが競り勝ったところから右サイドを崩し、試合を優位に進める先制点が生まれた。

 本来であれば自陣からボールをつなぐ戦術を取っているチームも、試合終盤になるとロングキックを蹴っていく傾向が目立った。また、相手のプレッシングに合わせ、ロングボールを使わざるを得ない場面も見られた。

②エリア内に2人のCBが入る
 ルール変更を活かした陣形の中で、最も多かったのがこの形だ。センターバック2枚がGKの両斜め前に広がり、エリア内でパスを待つ。これは4バックを採用しているチームに多く見られ、GK若原智哉からDF瀬古歩夢やDF小林友希につなぐU-20日本代表をはじめ、カタールやサウジアラビア、ポルトガルなどが該当した。

 もっとも、アンカーの選手もエリア内に入ってくることがあるメキシコ、片方のセンターバックだけエリア外に出ることがあるポーランドやホンジュラスなど、発展形もいくつか見られた。また3バックを採用するウクライナ、ノルウェーもこの形。その場合はストッパー2人がエリア内に入り、リベロはエリア外に出て縦パスを待つ。

③エリア内に1人のCBが入る
 センターバック2人がエリア内に入る②の形に対し、1人だけが入る形もイタリア、韓国が行っていた。共通点はいずれも3-1-4-2のシステムを採用していること。リベロの選手がGKの至近距離に位置取り、エリア内を起点に前後左右へとボールを散らしていく仕組みだ。

 もっともイタリアはストッパー2人までエリア内に入り、GKの前方左右に3つのパスコースをつくるという場面もあった。なお、韓国はGL第1節のポルトガル戦ではこの形を採用したものの、GL第2節では基本フォーメーションを4-4-1-1に変更していたため、①や②の形に近くなっていた。

④エリア両脇で2人のCBがパスを待つ
 ルール変更が行われたにもかかわらず、これまでどおりにエリア外でショートパスを受けるチームもあった。確認できた限りではコロンビア、フランスの2か国だ。大きく幅を取ってエリアの左右に両センターバックが待つこともあれば、相手のプレスがない場合は大きく前に出てパスを引き出すこともあった。

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 ここまでGL第2節を終え、各チームの傾向は明らかになった。その一方で、GL第3節や決勝トーナメントでは互いの戦術を踏まえた対応も進むとみられ、これまでと異なる形を採用するチームや、これまでなかった形にトライするチームもあるかもしれない。欧州では来季、Jリーグでは8月から導入される新競技規則だが、今後のゴールキックの変化を見極める上でもU-20W杯の事例は重要になりそうだ。

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