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“突然の吉報”に驚き…歴史上初の男子W杯女性審判員・山下良美氏「W杯は夢のまた夢だった」

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山下良美主審

 カタールW杯の審判員に日本人で唯一選ばれた山下良美主審が20日、報道陣のオンライン取材に応じた。女性審判員が男子W杯を担当するのは史上初の快挙。歴史的大役が決まった山下主審は「大変光栄に思っている。日本人としての誇りと責任感を胸に、大会の成功に向けて最大限の準備をしていきたい」と意気込みを語った。

 国際サッカー連盟(FIFA)は19日、カタールW杯を担当する129人の審判員リストを発表。史上初めて山下氏をはじめ6人の女性主審・副審が選ばれた。

 山下氏は19日夜、FIFAの発表を見た海外の審判員からの「おめでとう」という英語メッセージで選出を知った。カタールW杯を女性審判員が担当するという事前発表はなく、急転直下の吉報だった。「W杯は夢のまた夢だったので、正直なところ驚いたというのが本当の気持ち」。それでも家族から祝福されるにつれて、「夢にできる嬉しさ、幸せな気持ち、感謝の気持ちがあらわれてきた」という。

 日本から選ばれたのは山下氏のみで、前回大会を担当した佐藤隆治主審ら男性審判員の選出はなかった。「まずは嬉しい気持ちがあるが、日本人として参加することに関して責任をすごく感じている。複雑な思いというのも正直あるが、私にできることは自分自身のベストを尽くすこと。尽くさないといけないのが参加するにあたっての責任。その責任を担ってベストを尽くしたい」。日本代表と同様、審判という立場から日本を背負って戦う大役を担う。

 2019年の女子W杯、21年の東京五輪など数々の国際大会で笛を吹いてきた山下氏だが、男子のW杯を「目標と考えたことはなかった」。そもそも山下氏は「W杯に限らず、この大会に行こうという目標を置いて活動したことはなかった」。貫いてきたのは“一戦一戦”に向き合う姿勢。「とにかく次の試合をと思っていた。私自身が審判員として活動しようと思ったのも、日本のサッカーがより強くなるように、それに少しでも貢献できるのは嬉しいと思ったから。目標は日本サッカーの向上だった」。その先に夢舞台へのオファーが待っていた。

 女子の世界トップ大会だけでなく、19年には男子のAFCカップ、今年はAFCチャンピオンズリーグを女性主審として初めて担当。近年の世界・アジア両面での国際試合経験は、他の男性審判員を大きく上回っている。「経験やそこで感じたことを持った上で臨まなければならない。国内の試合であってもそうだし、どの試合に対してもそれぞれの大会、それぞれの試合で得た経験を持った上で臨むのが責任。それを自信に変えることもあり、責任に変えることもあり、全てを持った上でW杯に向かいたい」と力を込める。

 また共に切磋琢磨してきた女性審判員の思いも背負ってピッチに立つつもりだ。

「本当に日本でも海外でもそうだが、仲間であったり、先輩であったり、これから始めたい審判員であったり、女性審判員がいろんなところで男性の試合を担当したり、女性の試合を担当したり、信頼を積み重ねている。私は見ていただける機会が多いが、仲間達、先輩方が積み上げてきている信頼がなければW杯もない。本当にそこは信頼を壊してはいけないというか責任は重く持っている。ただ、その責任を持てることも嬉しく思っている」

 一方、W杯は男子でも世界トップの選手が集まる大会。これまでの女子国際大会やアジアの男子大会と比べても、規格外のスピード、駆け引き、インテンシティに向き合う形となる。

「もちろん最高峰の戦い、最高峰の試合なので、スピード、展開力に対応しないといけないのはある。ただ、私たちが普段やっているトレーニングに変わりはない。常に向上を目指して、意地ではなく、より高いレベルをいいパフォーマンスにつながるようにトレーニングしている。そこに変わりはない」。少しでもその水準に近づくべく、質の高いトレーニングを続けていく構えだ。

 前回大会で日本から選ばれた佐藤主審は第4審こそ務めたが、主審担当試合はなかった。W杯のピッチに向けてはここからがまた“狭き門”。「私自身はとにかくW杯に選ばれた以上、笛を吹くことを目指して準備することが私の責任。それに向けて日々を過ごしていきたい」。戦いはすでに始まっている。

■持ち味は「スピード」と「芯の強さ」

 日本サッカー協会(JFA)の扇谷健司審判委員長も20日、報道陣のオンライン取材に応じた。

 扇谷委員長によると、山下主審の強みは“スピード”と“芯の強さ”。「スピードはトレーニングで上がるものではなく、持って生まれたものもあるので魅力的。またレフェリーは自分が思ったもの、見たものを貫いてジャッジしなければならないが、芯の強さはACLを見ていても改めて感じたし、山下さんの素晴らしいところだと思っている」と太鼓判を押す。

 そうした高い評価もあり、山下主審は昨年5月に女性主審として初めてJリーグデビュー。これまではJ3でのみ笛を吹いてきたが、扇谷委員長はさらに高いレベルの担当について「もちろん考えなければいけないが、シーズン初めから海外生活が多く、なかなかそこにタイミングを合わせることが難しいのも現実」とした上で「最終的にはJ1・J2をやることも前提にチャレンジをしてもらっている」とW杯に向けた準備としての割り当ても示唆した。

 前回大会で叶わなかった日本人主審の担当にも期待がかかる。扇谷委員長は「笛を吹く、吹かないはいろいろあるかもしれないが、それも含めてどんな形であれ日本サッカーの大きな貢献には変わらない。そこで得た経験を持ち帰ってきていただきたい。女性審判員がもっと増えて欲しいと思ってい象徴的な存在になっているし、まずW杯行けることが誇らしい。1試合でも2試合でも笛を吹くためにさらにレベルを上げていく必要がある」と期待を寄せた。

(取材・文 竹内達也)
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