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盟友との120分激闘制したモドリッチ、指揮官が明かした失点後の訴え「まだ完全にやれると」

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試合中に駆け引きするMFルカ・モドリッチとMFカゼミーロ

[12.9 カタールW杯準々決勝 クロアチア 1-1(PK4-2) ブラジル ドーハ/エデュケーション]

 クロアチア代表はカタールW杯準々決勝ブラジル戦で、ゲームプランを大きく動かす奇策を打ち出した。それはMFルカ・モドリッチによるMFカゼミーロのマンマーク。2人は揃って2012-13シーズンにR・マドリーへ加入し、カゼミーロがマンチェスター・Uに移籍した今夏まで長年共にプレーしていた間柄。共に4度のヨーロッパ制覇を成し遂げた盤石のコンビが、世界一をかけた舞台で異色なバトルを繰り広げていた。

 モドリッチはブラジル戦を翌日に控えた記者会見で、R・マドリーで共にプレーした経験があるFWビニシウス・ジュニオールとカゼミーロについて問われ、あえてビニシウスへの警戒を示していた。「明日は彼を止めるという難しい課題が待っている。チームメートに知識を授けておきたい」。ところが試合に入ると、モドリッチの狙いがカゼミーロにあったのは明らかだった。

 この日のモドリッチはブラジルがひとたびボールを持つと、中盤の底に降りて受けようとするカゼミーロに密着マークを開始。最終ラインの組み立てにはほとんど目もくれず、見知った背番号5の隣を走り続けていた。プレーが切れた際、ボールが遠くにある際にはカゼミーロがモドリッチに駆け引きを試みるが、モドリッチは笑顔で受け流す。そうしてブラジルは、カゼミーロ抜きで攻撃の組み立てを行うことを強いられていた。

 一方、クロアチアのボール保持ではモドリッチが自由なポジションを取り、中央の守備を任されているカゼミーロが追い続けられない場面が散見された。何度かカゼミーロが深追いすることもあったが、そのスペースをMFマテオ・コバチッチ、MFマルセロ・ブロゾビッチ、MFマリオ・パシャリッチらが狙っているとみるや、カゼミーロがマークを受け渡して持ち場に戻る場面もあった。逆にカゼミーロがモドリッチのマークを回避するため、左SBのDFダニーロを使って組み立てる場面も見られたが、その攻撃は散発にすぎなかった。

 そのまま0-0で終わったハーフタイム、二人はピッチ上でユニフォーム交換を行いながらロッカールームに引き上げて行った。会話の内容は定かではないが、ここはW杯の決勝トーナメント。どちらかが敗退するという一発勝負の最中とあり、試合後の心理状況を踏まえての振る舞いだったのだあろう。それはモドリッチが前日会見で語った「それぞれの選手が自分の国のためにプレーする、それが私たちがここにいる理由だ」という覚悟からも垣間見えていた。

 その後も互いが互いの持ち味を打ち消し合う中、0-0のまま消耗戦が継続。先に試合を動かしたのはブラジルだった。延長前半15+1分、FWネイマールがFWロドリゴ・ゴエス、MFルーカス・パケタとのワンツーでペナルティエリア内に走り込むと、最後は再三好セーブを見せていたGKリバコビッチもかわしてゴール右上隅に叩き込んだ。カゼミーロは疲弊した表情を見せながらも喜びに浸っていた。

 だが、ここでモドリッチは諦めていなかった。クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督によると「ビハインドを負った時、中盤の選手を交代することを考えていたが、彼にいまの状況を尋ねたら、まだまだ完全にやれるという言葉が返ってきた」。その言葉どおりにモドリッチをピッチに残したチームは延長後半12分、鋭いカウンターから起死回生の同点弾。前回大会から数えて5回目となるW杯でのPK戦に持ち込んだ。

 PKではカゼミーロがブラジルの2人目、モドリッチがクロアチアの3人目で登場。先に成功したカゼミーロがモドリッチにボールを手渡し、プレッシャーをかける姿も見られた。それでもモドリッチは冷静にシュートを沈め、そのまま全員が成功。次のステージに進む権利を得たのはクロアチア、そしてモドリッチだった。

 試合後、モドリッチは1人目のキッカーとしてPKを止められたFWロドリゴ・ゴエス(R・マドリー)に「最初のPKを蹴る勇気と決断をしたことは、彼をより強くしてくれる」とエールを送りつつ、2018年のロシアW杯準優勝に続く快進撃に「あの時は歴史を作ったけど、もう一度繰り返したいし、できればもう一つ前に進みたい」と決意を語った。

 120分間にわたって相手のキーマンを潰し続け、さらにPKまで沈めた偉大な37歳。そのプレーにはダリッチ監督も「彼があの年齢であのプレーをするのは信じられないことであり、彼は疲れていなかった」と驚嘆しつつ、「彼は世界最高の選手の一人であることを再び示してみせた」と賞賛を惜しまなかった。

(取材・文 竹内達也)

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