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満身創痍で巻き起こしたモロッコ旋風…敗戦も万雷の拍手に包まれ「全てを出し切った」

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0-2で敗れたモロッコ代表

[12.14 カタールW杯準決勝 フランス 2-0 モロッコ アルホール]

 準決勝での敗戦後、ピッチ上での円陣を解いたモロッコ代表を待ち構えていたのは、深紅に染まったスタジアムからの万雷の拍手だった。ワリド・レグラギ監督は「選手たちはピッチ上で全てを出し切った。世界中にこのチームの良い印象を与えてくれたと思う」と選手たちを労った。

 アフリカ勢、アラブ世界の代表として初めて辿り着いたW杯準決勝の舞台。目の前にはかつての宗主国であり、前回王者のフランスが立ちはだかったが、勇敢なチームは真正面から立ち向かった。

 立ち上がりから積極的にボールを動かし続け、名手GKウーゴ・ロリスのビッグセーブに阻まれたMFアゼディン・ウナヒ(アンジェ)のミドルシュートを皮切りに、放ったシュートは合計13本。FWハキム・ツィエク(チェルシー)、DFアクラフ・ハキミ(パリSG)が鮮やかに絡む右サイド攻撃は何度も決定的な場面をつくり、世界トップの相手にも通用する武器を見せつけた。

 一方、連戦による消耗は明らかだった。負傷明けで当初先発に名を連ねたDFナイフ・アゲルド(ウエスト・ハム)はウォーミングアップで再発し、急遽出場を取りやめた。準々決勝で負傷しながら強行出場したDFロマン・サイス(ベシクタシュ)も前半20分にピッチを去り、同じく負傷明けのDFヌセア・マズラウィ(バイエルン)もハーフタイムに退いた。それでも代わりに出場した選手たちは主力不在を感じさせない奮闘を続け、世界王者にほとんど自由を与えなかった。

 しかし、最後はわずかな差に屈した。前半早々の1失点目、後半の2失点目ともに、身体を張った守備を見せながらも、二次攻撃を決められたという形。一方、モロッコの攻撃は何度もゴール前には届きながらも、最後の決定打が足りなかった。試合が動いた時間帯も含め、フランスの強さを突きつけられた。

 試合後、「フランスにおめでとうと言いたい。彼らを応援したい」と自身も二重国籍を持つ勝者を称えたレグラギ監督は「選手たちはピッチ上で全てを出し切った。世界中に非常にいい印象を与えてくれたと思う。クオリティーの高さも見せ、できる限りの力を発揮してくれた」と選手たちの戦いぶりを称えた。

 さらに「われわれは本気で歴史を変えたかったが、W杯は奇跡では勝てない。ハードワークしなければいけない。それがこれからわれわれがやっていくべきことだし、われわれはハードワークを続けていく」と将来への意気込みを示した。

 母国の代表を率いて9試合目。W杯準決勝が初黒星となった指揮官は、この躍進劇を一過性のもので終わらせるつもりはない。

「サッカーのトップ国というのは常に戻ってくる。ブラジル、スペイン、ドイツより上に行けたのは素晴らしいことだ。ただ、われわれはアフリカで普段からそうしたところを見せる必要がある。モロッコが世界のサッカー地図に載ろうと思えば、それはブラジル、フランス、イングランドほどではないかもしれないが、常にW杯に出続けて、存在を示し続ける必要がある」

「そうすることで将来的にはモロッコにとってW杯という舞台が当たり前のものになるだろうし、イングランドのようにトップ層に手が届くようになるだろう。続けることが大切だ。われわれはこれからも常に証明し続ける必要がある」。

 17日には準決勝から中2日で、クロアチアとの3位決定戦が控えている。あらためてチームの価値を証明するための一戦となるが、選手たちはすでに満身創痍。指揮官は「もちろん勝つために努力するが、回復しなければならない選手がたくさんいる。今日の敗戦の後では計画を立てるのは難しい。回復のため、何が起きたかを分析するため、少し時間が欲しい」と葛藤を明かし、「ただあまりプレーしたことのない選手たちに出番を与えて、力を発揮させてあげたい。彼らは素晴らしい貢献をしてくれているのにこれまでピッチに立てなかったから……」とメンバーの入れ替えも示唆した。

 それでも最後は力を込めた。

「もちろん勝てるように努力する。3位決定戦で国に誇りをもたらせるように頑張りたい」

(取材・文 竹内達也)
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