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[プレミアリーグ参入戦]キッカー計34名!壮絶PK戦を15-14で制した桐光学園がプレミアリーグ昇格!!

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高円宮杯U-18サッカーリーグ2012プレミアリーグ参入戦
[12.17 プレミアリーグ参入戦 北海道大谷室蘭高1-1(PK14-15)桐光学園高 味フィ西]

 17日、高校年代の全国リーグである高円宮杯U-18サッカーリーグ プレミアリーグ参入戦が味の素フィールド西が丘(東京)で行われ、プリンスリーグ北海道優勝の北海道大谷室蘭高と同関東1部優勝の桐光学園高(神奈川)が激突。1-1で突入したPK戦は17人目までもつれ込む壮絶な展開となったが、これを15-14で制した桐光学園が来季のプレミアリーグ参入を決めた。これで来季、プリンスリーグからプレミアリーグへ昇格する4チームは桐光学園、JFAアカデミー福島(福島)、ガンバ大阪ユース(大阪)、大津高(熊本)の4チームに決まった。

 全国リーグへの道はとてつもなく高く、険しい――。そう感じさせる110分間の攻防戦と、PK戦での死闘だった。PK戦は後攻・大谷室蘭の1人目・MF小栗和也主将(3年)のキックがクロスバーを直撃したのに対し、桐光学園の2人目・CB小松勇樹(3年)のシュートもクロスバーを叩いてしまう。ただ、この後は両チームのキッカーが非常に高いキック精度を見せ、全員が成功。7-7で迎えた9人目、桐光学園SB中島駿(2年)の左足シュートを大谷室蘭GK福澤英昭(3年)が足でストップするが、勝てば勝利の決まる大谷室蘭MF深井祐希(1年)の右足シュートを今度は桐光学園GK長津大裕(2年)が「無心でした。集中していた」と左ヘ跳んで弾きだした。

 そして11人目となった両GKが鮮やかに決めると、ついにPK戦は2巡目に突入。「PK戦は楽しんでいました。2巡目来た時点でヤバイなぁ、と」とゲーム主将の右SB大田隼輔(3年)が語った桐光学園が確実にシュートを流し込めば、大谷室蘭もプレッシャーのかかるキックを次々と決めていく。12人目、13人目、14人目…と互いに譲らない。両チームの全国舞台への思いを強く感じさせた激戦。だが17人目、ついに決着の時を迎えた。先攻・桐光学園・MF菅本岳(3年)の右足シュートが左ポストを弾いてゴールラインを越える。一方、大谷室蘭CB長屋燎(3年)の右足シュートは右へ跳んだ長津が完璧に反応してストップ。文字通り死闘となった一戦を制した桐光学園が雨中のピッチに舞った。
  
「(17人目のPK決着を経験したことは)ない。選手が良くやってくれました」と桐光学園・佐熊裕和監督。プリンスリーグ関東1部最終節の横浜FMユース戦では後半アディショナルタイムの劇的同点弾で優勝を決め、2-1で勝った磐田U-18との1回戦から中1日で迎えたこの日は壮絶PK戦を制した。大谷室蘭の注目CB廣瀬智行(3年)も「勝負どころは桐光さんの方が1枚上だった」と悔しがる勝負強さ。これが全国リーグ参入の権利を手に入れる最大の要因となった。

 試合は序盤から球際で強さを発揮し、特に攻撃面での正確なパスワークが印象的だった大谷室蘭が先にスコアを動かす。前半5分、敵陣中央から小栗が右前方へループパスを送ると、対応が遅れた桐光学園DFより先にボールへ走りこんだFW内山北斗(3年)が右足ダイレクトでニアサイドのゴールへ先制弾を叩き込む。

 強烈な先制パンチを浴びせた大谷室蘭はその後も“要注意人物”小栗と深井のダブルボランチを起点に、前線で身体を張ってボールを収める内山やパワーのあるFW海藤健二(3年)、右サイドで攻撃力を発揮したSB黒田勇統(3年)らが迫力のある攻撃を見せていく。一方の桐光学園も徐々に運動量を増やすと、組織力の高さを活かしたパスワークからFW野路貴之とFW市森康平(ともに3年)の2トップに良い形でボールを入れていった。そして流れの良いまま迎えた22分にMF松井修平(3年)の左CKをファーサイドの野路がゴールへ押し込み、1-1の同点に追いついた。

 ただ追いつかれても大谷室蘭は怯まない。チャンスの数で上回る桐光学園がMF橋本裕貴(3年)の個人技や、大田の攻撃参加でゴールに迫ったが、大谷室蘭は大型CB廣瀬中心に非常に集中力が高く、セカンドボールへの反応も速くて桐光学園に決定機をつくらせない。リスクを負って攻め出した桐光学園は後半10分に大田の右アーリークロスに市森が飛び込み、13分には松井の絶妙な縦パスを好トラップした野路が決定的な形で抜け出すが、ゴールを破ることが出来ない。後半半ばを過ぎると、ガチガチの攻防戦に。ただ、互いにここで差をつけることはできず、計20分間の延長戦へ突入した。

 桐光学園は縦へのスピードを高めて勝ち越しゴールを狙い、大谷室蘭もカウンターから決定機をつくり出す。延長前半6分、大谷室蘭は敵陣でのインターセプトから海藤が左足シュート。延長後半2分に右CKのこぼれ球から桐光学園DF中島の放った決定的なヘディングシュートを必死にかき出した大谷室蘭は、逆にアディショナルタイムにカウンターから海藤が左中間を独走し、アーリークロスに反応したDF大森健太(3年)が決定機を迎えた。だが、シュートを枠に飛ばすことができず、壮絶なPK戦の末に力尽きた。

 両チームの選手たちが感じたプレミアリーグ昇格の厳しさと難しさ。その壁を乗り越えて神奈川県勢初となるプレミアリーグ参入を決めた桐光学園の佐熊監督は「高校年代、ユース年代で一番レベルの高いリーグ戦に参入できるというのはいろいろな意味でボクら、選手にとっても勉強になる。勉強だけで終わらせてはいけないが、(いろいろな)経験をできる唯一のリーグだと思うので、そこに参入できるのは非常に光栄なこと。『参入して、頑張って終わりました』ということではなくて、1年終わった後に何らかの収穫を与えられるようにしていきたい」。

 プリンスリーグでは最もハイレベルな関東1部での戦いを経て自信を身につけた“巧者“桐光学園。悪い流れでも崩れなくなったチームはこの日、経験値の高さを活かして最終的に相手を上回った。大田は「また上のステージで後輩たちができるのはボクたち3年としても誇らしいですし、ぜひ来年チャンピオンシップの舞台に立てるように頑張っていって欲しい」。今年以上に高いレベルの中で戦うこととなった来季。Jクラブユース勢などを連破して昇格を決めた桐光学園は、プレミアリーグで自分たちのレベルをより引き上げて、個人・チームの目標達成につなげる。

(取材・文 吉田太郎)
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