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[総体]私学の壁破った和歌山北が26年ぶりに「夏の全国」挑戦

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 平成25年度全国高校総体「2013 未来をつなぐ 北部九州総体」サッカー競技が、8月1日から7日まで福岡県のレベルファイブスタジアムなどで開催される。和歌山県代表の和歌山北は1987年以来26年ぶりの全国総体出場。91年の田辺を最後に、出場権を“独占”してきた初芝橋本、近大和歌山という“私学勢の壁”を四半世紀ぶりに突破した和歌山北は久々となる「夏の檜舞台」に全員サッカーで挑戦する。

 1963年創立の和歌山北は、1964年4月に全国で2番目に設置された体育科(2012年以降の新入生はスポーツ健康科学科)を持つ。体操競技で揃ってロンドン五輪に出場した田中和仁、田中理恵、田中佑典の田中3兄弟の出身校としても有名だが、他のスポーツも軒並み全国レベルで今年は7月上旬の時点ですでに98人の生徒が全国総体出場を決めているという。そこに今年は古豪サッカー部も加わった。

 サッカーにおいて和歌山で私学勢の壁を突破することは簡単ではない。選手権でも、1994年以降で全国大会に公立校で出場したのは和歌山北の2度だけだ。昨年度の選手権で7年ぶりの全国大会出場を果たした和歌山北も今年はレギュラー11人が全て入れ替わり、経験値の乏しい世代。総体予選開幕前に行われたプリンスリーグ関西2部では私学2強の一角、近大和歌山に0-7で大敗を喫するなど苦戦が予想されていた。

 ただ、中村大吾監督は「(昨年に比べて)完全にチーム力が劣ることは彼らも分かっていたと思う。ただ、ボク自身もこの子らで『もう一度行ってやろう』と思っていました」と振り返る。またFW木原脩斗(3年)主将が「1年の時は言われていたんですよ。(この世代は和歌山県で)『ベスト8も入れないくらいだ』と、結構プレッシャー掛けられていて、それがバネになったのはあります」と語り、CB笹文哉(3年)も「去年も全国へ出たってことで自分たちも先輩たちに負けたくないという気持ちだった」と胸を張ったように、選手たちも地道に努力を重ね、力をつけてきていた。

 予選では大一番となった準々決勝で近大和歌山に2-0で雪辱すると、GK榎本勝仁(3年)が「2-0で勝って、そこから勢いに乗ることができた。それまでは『行けるかな?』くらいだったんですけど、『行けるんちゃうん!』という感じになった」と説明したようにチームは完全に勢いに乗る。準決勝では新人戦優勝の桐蔭を1-0で撃破し、決勝の相手は06年全国総体準優勝の初芝橋本。FW新居典樹(3年)が「私立の近大と初橋がずっと(インターハイへ)行っているのは知っていた。公立の北高が勝って歴史を塗り替えようと思いました」と意気込んだ試合をMF福島陸(3年)の決勝点と今大会全試合無失点を遂げた守備陣の奮闘によって1-0で制し、26年ぶりの全国切符を勝ち取った。

 GK榎本を中心に守備面で集中力を発揮し、また攻撃面ではシンプルに得点を獲るポイントを絞って、それを逃さなかった。カウンター中心の攻撃だが、場面によっては新居や福島、MF田畑康平(3年)といったドリブルの得意な選手たちが局面を打開してゴールヘ襲いかかる。公立校らしく地元の中体連出身の選手が多く、チームワークも武器のひとつとなっている。今年はプリンスリーグ関西2部でなかなか結果が出ずに選手、コーチングスタッフも悩みながらの日々だが、全国へ向けて攻撃のテンポやコンビネーションといった課題を修正すること、また、先行して優位に試合を進めて行くことが全国大会での上位進出へのカギになる。木原は「気持ちがブレたらダメだと思っている。正味、代表とかいてないし、田舎の方のチームなんで、みんなでやらないと勝てない」と力を込めた。

 全国大会ではよりレベルの高い相手との戦いが待っている。わずかなミスが敗戦につながり、逆にそのミスを突いたり、相手を上回るスピード、精度の崩しを発揮できれば勝利を引き寄せることができる。指揮官は「何とか自分たちのペースへ持って行って勝ち切りたい」と語り、「勝負は一瞬なんで。シューズ選びもいわば、戦いのうちのひとつじゃないかと思います」と説明した。

 足元を固めることも勝利を引き寄せるための重要な要素となる。練習取材日にはadidas JAPANのスタッフによる「正しいスパイクの選び方講習会」が行われ、「ジャストフィットのスパイクを選ぶこと」「正しい位置で屈曲しているスパイクを選ぶこと」「より自分のプレースタイルに合った靴紐の結び方をすること」についての説明が行われていたが、より自分の力を引き出したい選手たちは真剣な表情で耳を傾けていた。

 そしてadidas社製の最新鋭フットボールスパイク、「nitrocharge」「predator lethal zones」「adipure 11 pro」「adizero F50」の4シリーズが相手との差をつけるための武器となる。圧倒的な運動量と球際のハードな攻防でゲームをリードする”エンジンプレイヤー”のために開発された「nitrocharge」、最高のフィット感を持ち、走攻守すべてのプレーでチームに貢献する“バランサー”をサポートする一足「adipure 11 pro」、あらゆるボールスキルを追求する“ボールマスター” に向けた「predator lethal zones」、そしてハイスピードでの自在なプレーを可能とする超高速スパイク「adizero F50」。選手によって特長は違う。正しいスパイクの履き方を学び、自分の武器をより引き出すスパイクを知った選手たちは全国でより個々、チームの良さを発揮してくれるはずだ。

 全国総体初戦ではU-18日本代表FW宮市剛擁する中京大中京(愛知)との対戦が決まった。注目FWを擁し、パススタイルで相手を揺さぶってくる強豪との1回戦。木原は「みんな強い方が燃える。めちゃくちゃデカイ壁ですけど、その方がみんな固まるかなと思う」と期待し、CB高出天晴(3年)は「まずは中京大中京に勝つ。宮市選手となかなかできないと思うので、楽しみながら勝ちを目指していきたい」と言い切った。26年ぶりの夏の全国。私学の壁を全員で破った和歌山北が、全国でもひとつの塊になって強豪の壁をぶち破る。

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(取材・文 吉田太郎)

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