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[プレミアリーグ参入戦]見せつけた勝負強さ、エース退場も市立船橋が劇的V弾で関西1位・大阪桐蔭破る!!

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[12.14 高円宮杯プレミアリーグ参入戦1回戦 大阪桐蔭高 0-1 市立船橋高 Eスタ]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2014プレミアリーグ参入の権利を懸けた高円宮杯U-18サッカーリーグ2013プレミアリーグ参入戦1回戦が14日、広島県内各地で行われ、プリンスリーグ関西チャンピオンの大阪桐蔭高(大阪)と市立船橋高(関東3、千葉)との強豪対決は、後半45分に交代出場のFW田山栄次が決めた決勝点によって市立船橋が1-0で勝った。市立船橋は16日の2回戦でアルビレックス新潟ユースと激突。この試合に勝てばプレミアリーグ昇格が決まる。

 これぞ名門、これぞ市船――。後半22分、京都サンガF.C.内定の“スーパーエース”FW石田雅俊がチームメートへかけたということばを主審への異議と取られて2回目の警告で退場。10人での戦いを強いられた市立船橋だったが、堅守と試合終了間際の一撃でプレミアリーグ昇格へ前進した。後半45分、市立船橋はMF室伏航の左CKからニアサイドへ飛び込んだ田山が渾身のヘディングシュートをゴールへ突き刺す。雄叫びを上げながら拳を振り上げた背番号22の3年生FWにブルーのユニフォームが一斉駆け寄り、喜びを爆発させた。

 京都サンガF.C.内定のCB磐瀬剛主将は「(春先の勝負)弱さというのが少しずつ克服されてきた。ひとり少なければ、攻守の切り替えをより早くして、ということが当たり前のようにできていたかなと思います。一人退場しても勝たなければいけなかったですし、やらなければいけないという意識が生まれたのかなと思います」と振り返り、朝岡隆蔵監督は「痺れましたね。ああいうゲームで勝つことが、ある意味での美しさだとボクは思っているので…。劣勢をちゃんとモノにするっていうのはやっぱり大事。(10人になっても)頭の中を切り替えて、受け入れてやれるっていうのは年間通しての取り組みの成果だと思います。(個々の意識が高かったが)チームとしてそういう空気をつくれている。3、4試合低堕落なゲームをしたこともある。でも大事な試合、ポイントポイントで精神的な充実を図ってピッチに立てるようになってきた。きょうも10人になってもすぐにバランスを整えた。ボクは『頑張れっ』というだけで、彼らの心が折れないようにするだけで済む」と劇的な形で白星をもぎ取った選手たちに目を細めていた。

 関西王者と高校総体優勝校・市立船橋の注目対決は両チーム合わせてシュート9本。ともに球際が非常に厳しく、攻守の切り替えも速い。大阪桐蔭が市立船橋自慢のオフェンシブハーフ陣に人をつけてきっちりと対応していたことで試合は膠着した展開となった。前線へ早めにボールを入れる市立船橋だが、瀧田裕馬主将と佐野匠の両CB中心とした大阪桐蔭の守りは堅く、なかなかシュートシーンをつくり出すことができない。ジリジリとした展開の中、先に決定機をつくったのはスタンドから“キング”と声を掛けられていた注目MF久保田和音やFW網島駿が攻撃力を発揮していた大阪桐蔭。25分、PAへ潜り込んだFW奥田陽太が決定的な左足シュートを放つ。だが市立船橋はゴールライン上で磐瀬がクリア。大阪桐蔭は38分にも右サイドからのボールを中央の奥田が頭で落とすと、網島が右足を振りぬいたが、これはU-18日本代表候補GK志村滉がビッグセーブで阻んで得点を許さない。
 
 市立船橋も33分に石田のヒールパスから1年生FW矢村健が決定機を迎えたが、こちらも大阪桐蔭GK石原亮太の好守の前にスコアを動かすことができなかった。市立船橋の朝岡監督は相手の印象について「これは強いなと。大阪桐蔭は気持ちも持っていた。(多くのチームは市船の勢いに飲み込まれるが)ボール際の攻防にもついてこれていた。前半はしっかりともっていましたから」。ただ「(相手は)4バックもしっかりと構えていたので、SBで広げてトップとオフェンシブ(ハーフ)のところで崩しにかかりたいというのが後半の意図だった」という指揮官の言葉通りに後半、市立船橋は右SB篠原良介と左SB山之内裕太が高い位置へ張り出し、ここに攻撃の起点を置いて幅のある攻撃を繰り出す。

 磐瀬と柴戸海の両CBがゆっくりとコントロールしながら長短のパスで攻める市立船橋に対し、大阪桐蔭は徐々に運動量が落ちてきていた。市立船橋は後半9分、右サイドのスペースを突いたMF横前裕大のラストパスを石田が合わせ、11分には石田の好トラップから山之内が鋭いクロスを放り込む。幅のある攻撃で確実に流れを引き寄せていた市立船橋だが、エースの退場によって突如窮地に陥った。それでも「失点しなければPKもある。自分たちのほうが体力があるなと思っていた。延長になれば勝てると思っていた」と磐瀬が話すように市立船橋の心は全く折れない。磐瀬と柴戸、山之内が相手のロングボールやクロスにしっかりと対応。個々がより意識を高め、勝利を目指した結果、劇的勝利を引き寄せた。

 千葉県内のライバル・流通経済大柏や青森山田など高校トップチームたちがプレミアリーグに参戦する中、高体連を代表する名門校の市立船橋はまだ一度もプレミアリーグの舞台に立ったことがない。選手たちは「自分たちは劣っていない」とそれほど意識していなかったというが、高校総体で優勝した夏以降は高校選手権日本一とプレミアリーグ昇格の両方を成し遂げるために戦ってきた。殊勲の田山は「自分たちはプレミアリーグに出ることができないですけど、後輩たちがレベルの高いところでできる。自分たちが残せるものは残してあげたい」と語り、磐瀬は「インターハイ優勝でプレミア上げて選手権も優勝できれば、この先、市船の歴史に残るチームになれると思っているので、目指してやっています」と前を向いた。石田不在の中で迎える16日の2回戦・新潟ユース戦。もう一度底力と勝負強さを見せつけて名門はこの冬のノルマをひとつクリアする。

(取材・文 吉田太郎)
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