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[プレミアリーグ参入戦]歴史に名を刻む世代へ!市立船橋は総体日本一、プレミア昇格果たして「あとひとつ」

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[12.16 高円宮杯プレミアリーグ参入戦2回戦 市立船橋高1-0新潟ユース Eスタ]

 16日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2013プレミアリーグ参入戦2回戦が広島県内で開催され、全国高校選手権優勝5回の名門校・市立船橋高(関東3、千葉)と北信越の雄、アルビレックス新潟ユース(北信越2、新潟)が激突。前半30分にMF室伏航(3年)が決めた決勝点によって市立船橋が1-0で勝ち、プレミアリーグ参入を決めた。
  
 名門の歴史に名を刻む世代へ――。市立船橋が第2の“ノルマ”もクリアした。今年、全国高校総体優勝、プレミアリーグ昇格、そして全国高校選手権優勝を目標に掲げている市立船橋は、すでに全国高校総体優勝で“第1関門”突破。そして今大会ではプリンスリーグ関西王者の大阪桐蔭高(大阪)との初戦を1-0で制し、実力派の新潟戦も初戦で退場したエースFW石田雅俊(3年、京都サンガF.C.内定)を欠きながら再び1-0で勝ち切った。京都サンガF.C.内定の日本高校選抜DF磐瀬剛主将(3年)は「目標のひとつめがインターハイで優勝するということで、ふたつめがプレミアリーグに昇格するということ。それが達成できて嬉しいです。選手権に向けてひとつひとつ勝ち切っていって、最後に目標である選手権優勝というものを成し遂げられればと思っています」と力を込めた。

 この日3バックを選択した市立船橋は落ち着き払ったボールコントロールの室伏と攻守に豊富な運動量を発揮していたMF横前裕大(3年)のオフェンシブMFコンビやバイタルエリアを的確に突くMF成田悠冴(3年)、初戦決勝ヘッドのFW田山栄次(3年)が絡む流れのいいパスワークを見せる。前半10分に左MF山之内裕太(3年)のクロスをファーサイドで折り返し、中央の田山が左足で狙ったほか、右サイドを駆け上がったMF篠原良介(3年)が切り返しから放った左足シュート、山之内の左足ミドルなどシュートの本数を増やしていった。

 そして前半30分にスコアが動く。市立船橋はU-18日本代表候補のGK志村滉(2年)が非常に珍しいキックミス。これを拾った新潟FW渡邉新太(3年)が一気に中央突破して抜けだしたが、出足の速かった志村が1対1をストップして自らのミスを取り戻す。先制点はこの直後のカウンター攻撃から生まれた。篠原のギャップを突くパスを受けた横前が中央を持ち上がり、左サイドの山之内へはたく。山之内の1タッチクロスをファーサイドの田山が頭で折り返すと、最後はゴール前のこぼれ球にフリーで反応した室伏が右足ダイレクトでゴールへと沈めた。

 ただ後半、市立船橋は守備のバランスが崩れたところを的確に突かれて劣勢を強いられる。相手のロングボールを警戒したダブルボランチが下がってしまい、新潟のボランチやSBへのプレッシャーが緩くなってしまった。新潟はそこを逃さずに少ないタッチのパスを正確につないで攻め込んでくる。そして左SB小池裕太(2年)や左MF飯野七聖(2年)、右MF吉川佳介(2年)がクロスまで持ち込んできた。そして18分には右中間の渡邉が左前方を走る飯野へ絶妙なラストパス。これを飯野が左足ダイレクトで合わせる。ボールはGKの横を抜けたが、DF田代圭亮(3年)が何とか足に引っ掛けて大ピンチを逃れた市船。22分にも左クロスのこぼれ球にいち早く反応した渡邉に決定的な右足シュートを放たれたが、これもゴール上方へ越えて事なきを得た。

 守備のバランスが悪いため、いい形でボールを奪えない市立船橋は攻撃面でもチャンスらしいチャンスをつくれない時間帯が続いた。後半半ば過ぎ頃から大きなサイドチェンジを交えた幅のある攻撃で何とか立て直したが、35分にゴール左隅を捉えた室伏の右足シュートがGK本田渉(3年)の好守に阻まれるなどスコアを動かすことができない。それでも終盤は磐瀬、DF柴戸海(3年)を中心とした持ち前の堅守が徐々に新潟の焦りを生んで2試合連続の1-0。新潟は切り札のFW山本礼利(3年)が左サイドでパワフルな仕掛けを見せるなどあきらめずに攻めていたが、最後まで相手ゴールを破ることができなかった。

 “スーパーエース”石田不在の中で、しぶとく勝ち切った市立船橋。高体連を代表する名門にとってひとつ足りなかったプレミアリーグ参入を同リーグ開始から4年目となる来年、ついに手にすることになった。磐瀬は「来年、後輩たちがどんなふうに戦ってくれるか分からないですけど、(同じ千葉県内のライバルの)流経(流通経済大柏)が今年プレミアを獲っているので来年、再来年と負けじと一番上のリーグで市船が戦って、日本一を獲ってくれるようになってくれると嬉しいです」と後輩たちに期待した。2年生MFの打越大樹は「自分たち下級生は何もやっていなくて、3年生が引っ張ってくれて、上げてもらった。それを来年は無駄にしないで、やるからにはチャンピオンシップも出たい。初めてで、大変なことは多いと思うけれど、そんなことは言っていられない。優勝を狙いたい」と力を込めた。

 この後は、新たに何かを加えるのではなく、ゆっくりと確認、コンディション調整に重きを置いて「選手権モード」へシフトチェンジする。試合後に守備面の整理の必要性を口にした朝岡隆蔵監督だが、「2試合、いい経験をさせてもらってありがたい。厳しいゲームを勝ち切れた大阪桐蔭戦、きょうもある意味劣勢なゲームの中で粘り強く勝てた。かつてのウチらしい戦いもできた。集中力も高かったし、(選手権へ向けて)もう少し攻撃の厚みや相手によって変化させていく調整力がでてくればいい」と最大目標の高校選手権へ向けて前向きに捉えていた。高いノルマを2つ達成して“あとひとつ”。悲願のプレミアリーグに昇格させ、総体、選手権も獲るという、市船の歴史の中でも輝かしい成績を残した世代になる。

[写真]優勝後“恒例”となっている2年生GK星野(手前)を中心とした記念撮影

(取材・文 吉田太郎)
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