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[MOM984]静岡県ユース選抜FW北川航也(清水ユース、2年)_圧巻の2得点、日本高校選抜も脱帽

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[3.9 静岡県ヤングサッカーフェスティバル 日本高校選抜2-2静岡県ユース選抜 藤枝総合]

 敵も味方も観客も――会場に駆け付けた誰もが認める、別格の働きだった。9日に藤枝総合運動公園サッカー場で行われた第29回ヤングサッカーフェスティバル男子の部は引き分けに終わったが、最もインパクトを残した選手の選定に迷う人はいないだろう。静岡県ユース選抜の一員として日本高校選抜と対戦し、2得点を挙げたFW北川航也(清水ユース)は、ストライカーとしての高い能力を存分に見せつけた。

 セットプレーから日本高校選抜に先制点を奪われた直後の前半17分、静岡県選抜が中盤でボールを奪うと、左MFで先発した望月大のスルーパスに北川が抜け出た。清水ユースのチームメートとの連係は抜群だ。スピード感あふれるランニングで相手最終ラインの裏を急襲。カバーに入って来た相手DFを切り返しでかわすと、ゴールとGKの位置を確かめて冷静にシュートを流し込んだ。

 そして前半21分には上原力也(磐田U-18)の低く鋭いクロスをニアサイドに飛び込みながら右足で合わせて2点目を奪った。稀代の点取り屋は「1点目は自分の特徴である裏への抜け出しができたというか、ほとんどカウンターのような形だったけど、相手の動きを見てかわして点を取れたのは大きい。2点目は、もう一度やれと言われても難しいシュート。とっさに足が出た。泥臭くゴールを狙っていくことが目標だったので、気持ちが出てゴールに入って良かった」と2得点の感触を語った。

 スピードとタイミングの良さを兼ね備えた飛び出しの迫力は、絶品だ。1学年上の選手が中心の日本高校選抜も、北川のプレーには賛辞を惜しまなかった。山田耕介監督は「北川君の動き出しにDFラインが付いていけなかった。後半は、北川君を最初に狙ってくるんだということを意識してどうにか防いでいた」と苦笑い。後半はCBとして対応にあたった柴戸海(市立船橋高)も「北川君は抜け出しが速くて、タイミングも良い。それに足下に入ってからも上手い。後半は彼の動きをすごく意識した」と舌を巻いた。

 しかし、高校在学中のトップチームデビューを狙っている北川に満足感はない。後半、チャンスメークにフィニッシュにと奔走したが、チームに勝利をもたらす3点目は奪えなかった。「(ゼロックススーパーカップの前座で行われたネクストジェネレーションマッチで)U-18 Jリーグ選抜では日本高校選抜に負けてしまったので、静岡県ユース選抜では勝ちたかった。勝ち切れなくて悔しい。チームではハットトリックができても選抜チームだと取り切れない。そういうのは、精神面や体力面の弱さだと思う。相手は日本高校選抜という看板を背負っているし、球際の強さなどで負けて少し押し返される時間帯もあった。そういう強さは見習いたい。僕は、最後まで走り切ることができていなかった」と自ら課題を指摘。「今季はユースでもトップでも必要とされる選手になりたいし、1日でも早くトップに上がって(ホームの)アイスタで点を取りたい」と目標を語り、意識の高さを示した。誰もが認める働きを、もっと上のステージで――その期待は北川のみならず、この日のプレーを見た観客も思い描いたのではないか。トップチーム昇格が楽しみな逸材だ。

(取材・文 平野貴也)

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