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[関東大会予選]駒澤大高は強力攻撃陣が後半怒涛の6発も、葛飾野の勢いに劣った前半を猛省:東京

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[4.20 関東大会東京予選準々決勝 葛飾野高 1-6 駒澤大高 駒沢第2]

 平成26年度高校サッカー関東大会東京都予選準々決勝が20日に行われ、駒澤大高がFW安藤丈(3年)の3得点など後半の6ゴールによって都立勢の葛飾野高に6-1で勝利。成立学園高と対戦する準決勝進出を決めた。

 0-0で折り返したハーフタイム、駒大高のベンチ前にできた選手たちの半円はなかなか解かれなかった。武南高(埼玉)FWとして全国準優勝、日本高校選抜選出などの経歴を持つ大野祥司監督を選手たちは非常に真剣な眼差しで見つめ、その言葉一つひとつを噛みしめていた。前半、駒大高はCB須藤皓生(3年)のヘディングシュートやMF鈴木隆作(3年)の絶妙な展開からMF山口将広(3年)が放った決定的なシュート、右SB荒井佑太(3年)のロングスローなどで得点機をつくっていたが、決めきることができず。逆にキレのあるドリブルやパスで十分に対抗していたFW染谷裕樹主将(3年)をはじめ、MF小野寺健吾やFW岸孝介(ともに3年)が思い切った仕掛けを見せる葛飾野に押し返されていた。鈴木は「相手の方が一歩早く動いていたり、(自分も)集中しきれていなかった」と振り返り、安藤は「前半はチームのためにとか、(応援してくれる)他の部員のためにという思いが足りなくて、球際とかでも行けていなくて、ミスとかも多くて、そこは本当に大野先生に言われた通り。気持ちの部分でも足りなかった」と唇を噛む。ゴール前でも空中戦を必死に跳ね返す葛飾野のCB染谷礼勇(2年)やCB有坂龍乃介(3年)の前に1点を奪えないまま40分間を終えていた。

 大野監督が厳しく指摘したのは技術面ではなくメンタル面についてだ。「前回の暁星戦もそうなんですけど、技術の上手い下手じゃなくて、一発勝負だから相手も1対1でガーッという気持ちで来るし、ウチの子がいい子過ぎて飲まれちゃうんですよね。跳ね返せない。きょうのハーフタイムも技術的なことをいっぱいメモって書いて言おうと思ったんですけど、そこは何も言わずに『技術ひとつ出すのも、こっちがメンタル強くないと、それが引き出せない』という話を。『相手の気持ちに飲まれて、潰されて、技術が出てこないじゃないか』ということで、後半は少し気持ち入って行ったんでできたと思うんですけど、ウチの子は言われないとやらないんです」と指揮官は首を捻りながら残念そうに語っていたが、駒大高は4強入りへ闘志を燃やす葛飾野の勢いに後手を踏んでしまった前半を猛省。ただ、このゲキで「変わった」選手たちは後半、見違えるような迫力と闘争心に、アイディアも交えて大量6ゴールをたたき出した。

 まずは後半開始直後、左オープンスペースでボールを受けたエースFW安藤が切り返しから利き足と逆の右足を一閃。鮮やかなコントロールショットがゴール右隅へと突き刺さる。球際の攻防戦で気持ちの入ったプレーが連続した駒大高は、ロングボールのセカンドボールを拾うと、足技巧みな山口のドリブルや鈴木が左右両足から放つ正確なパスなど敵陣では積極的に足下での勝負を挑んでいく。そして15分から怒涛の3連続ゴール。山口の左CKのこぼれ球を安藤が左足でゴールへ押し込み2-0とすると、1分後の16分にはハーフウェーライン手前でボールを持った鈴木が前方に出ていたGKの頭上を越える約50mの超ロングシュートを決めて3点差とする。さらに17分にも左サイドでキープしたMF平井康介(3年)の折り返しを10番MF柳澤歩(3年)が狙いすました右足シュートをゴール右隅に沈めて4-0と突き放した。

 もはや手の付けられない駒大攻撃陣は大野監督が「凄くいいリズムでドリブルをする。昨年の富一の左SB竹澤くらいになってもらえるといい」と期待を寄せる左SB吉田一貴(3年)が抜群の突破力を披露。絶妙な間合いからDF2人の間を抜けて決定機を演出するなど存在感を示したSBは、29分に左サイドを個で攻略して山口のゴールをアシストする。そして34分には左サイドを抜け出した安藤が一気にゴールへ迫り、そのまま左足シュートを決めてハットトリック達成。1年生2人を投入した終盤、中盤で不用意にインターセプトされた後の寄せが甘く、葛飾野の染谷にループシュートを決められてしまう。また後半にはFW斧澤遼(3年)に左足シュートへ持ち込まれるシーンもあったが、それでも気合十分だった駒大高は「変わった」後半に相手を圧倒して4強切符をもぎ取った。
 
 駒大高は今季、T1リーグ(東京都1部リーグ)で昨年の優勝チームである横河武蔵野FCユースに3-1、成立学園高に5-2、そしてFCトリプレッタユースには8-3で圧勝するなど無敗の進撃を続けている。この日3得点の安藤らが繰り出す攻撃の爆発力は確か。大野監督が「守備がまだ良くないですね、T1も6試合で8点、1試合1点以上取られてしまっている。相手も完成していない状態なので(自分たちも)取れているけれど、我慢比べで負けてしまうと冬は多分やれない」と指摘するように、伝統的な堅い守りが構築される必要性がある。そして攻守に安定感が高まればという期待が膨らむが、それも強いメンタルを持ち、しっかりと力を発揮できてこそ。指揮官は「(現在は結果的に白星が続いているが)進化を続けないとほかに追い抜かれてしまう」と語り、安藤も「自分たちはまだ前半みたいに気持ちが全体的に弱い。まだまだ弱いと思って謙虚にやっていかないと、1回負けたら崩れちゃうと思うので気持ちの面から変えていきたい」と力を込めた。大きな可能性を持つ駒大高はメンタル面で絶対に相手に負けず、力を発揮して上へ。そして全ての試合で貪欲に勝利を目指す。

[写真]後半1分、安藤(右)の先制ゴールを喜ぶ駒澤大高イレブン

(取材・文 吉田太郎)

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