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[プリンスリーグ東海]「理想が高すぎる」崩しで好機逸して逆転負け、中京大中京は泥臭さ身に着けて選手権へ

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[8.30 高円宮杯プリンスリーグ東海第10節 清水桜が丘高 2-1 中京大中京高 草薙球]

「汗臭いけれど、泥臭くない」――。中京大中京高は攻撃で主導権を握り、選手同士が連動してパスを動かすチーム。この日の前半はいい流れでボールを動かし、サイドへボールを進めると、連動した崩しやMF富田光(3年)の個人技などで決定機をつくり出す。前半36分には左サイドを抜け出したFW小原羽矢駄(3年)が一気にPA中央まで持ち込みPKを獲得。これを富田が右足で決めて先制した。この後も退場者を出して10人となった相手から完全にボールを握り、攻めたて、幾度となくPAまでボールを運んだ。ただ、ゴール前でのワンツーやヒールパス、囮の動きなど3人、4人が連動した崩しでシュートチャンスをつくりながらも、よりいい形で崩そうとし過ぎたチームは最後のところで必死に足を伸ばし、身体を張るなど、交代出場GK池田海人(3年)中心に守る清水桜が丘から2点目を奪うことができない。

 元名古屋グランパスMF岡山哲也監督が「今年のチームの子たちはトレーニングマッチも含めていい形でフィニッシュまで行けている。それが成功体験として残っていて。でも現実ではなかなかそういう風には行かないじゃないですか。でも理想が高すぎて、全部剥がしてシュート決めようとしてしまう」。清水桜が丘はMF大石竜平(3年)のスーパーミドルで追いつき、カウンターから決勝点を決めた。ゴール前で手数をかけて崩して決めても、ゴール前まで行かなくてミドルシュートで決めて同じ1点に変わりはない。ただ中京大中京の選手は普段から「崩せてしまう」がためによりいい崩しにこだわってしまう。また「絶対に自分が決める」という貪欲さも欠けて、どこか周りに頼った攻撃になっていた。それが泥臭くゴールを狙い続けた清水桜が丘とのわずかな差となり、岡山監督も「つま先でとか、鼻先でとか、胸で(何とか決めよう)とかいうのがない。綺麗好きなんですよ。でもサッカーはそれではダメです。『汗臭いけれど、泥臭くない』。きょうも試合前にそういう話もしたんですけどね。どれくらいできるかだったんですけど、見事に向こうの方が強いですね」と指摘していた。

 主将のMF市川兼伍(3年)は「自分たちのサッカーを貫けたと思うんですけど、(数的優位になったこともあって)余裕を持ちすぎた。(自分たちは崩しの)理想がちょっと高すぎる。練習中でも打てるところで打てなかったり、クドい場面が多いんですけど、それが試合にも出た。(矢板中央に敗れた)インターハイもクドいところがあったり、決めるところで決めきれなかったり、自分たちの時間に決められない」と反省する。そして自分たちのミスやこだわり過ぎた攻撃で好機を逸し、流れを失った試合に市川は「声を出したり、自分はプレーで引っ張るタイプ。でもきょうはできなかった」と唇を噛んだ。

 今年は1月の“裏選手権”でプレミアリーグ勢の流通経済大柏高を3-0、東山高を1-0で撃破するなど準優勝。プリンスリーグ東海では勝ち切ることができずにこの日の敗戦で8位に後退したが、無得点に終わった試合は1試合もなく、攻撃時間の長い試合を続けている。いい攻撃ができている時は守備も安定し、相手に崩されることも少ない。この日何度もチャンスを作り出した連動したパスワークに加え、富田や市川、MF大城佑斗(3年)ら経験豊富な選手たちも擁し、選手権の全国大会で上位を狙う力は十分にある。だからこそ「泥臭く」貪欲にゴールと勝利を目指して、結果に結びつけることができるか。

 まずは周囲からターゲットにされるであろう愛知県予選を勝ち抜くこと。岡山監督は「ウチは負ける時はこういうところ。単純なクリアミスとか、数的有利でやられたり。あと、緊張して自分たちの力を出せなかったとかですね。目標にされることはいいこと。そこで何ができるか。勝ち切ることができるか。こういうところでやり切ることが先の人生にもつながる。もう少し大人になりきれないと。ここで勝って、そういう自信をつけさせたいですね」。中京大中京にとって3年ぶりとなる選手権へ、市川は「自分が高校になって選手権はまだ一回も行ったことがない。最初で最後の選手権。昨年は(県予選)決勝以外は守備はゼロだったけれど決勝は2失点して負けてしまった。不甲斐なかったので、借りを返して、今年こそは絶対に選手権へ行きたい」と誓った。 

(取材・文 吉田太郎)

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