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[プリンスリーグ東海]「憎らしいほど強いチームへ」初の選手権、プレミア昇格狙う浜松開誠館が3発2位浮上!

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[8.30 高円宮杯プリンスリーグ東海第10節 浜松開誠館高 3-2 藤枝明誠高 藤枝明誠高G]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プリンスリーグ東海は30日、第10節を行い、3位の浜松開誠館高(静岡)と10位の藤枝明誠高(静岡)との一戦は、3-2で浜松開誠館が勝利。浜松開誠館はプレミアリーグ参入戦進出圏内の2位へ浮上した。

 静岡県西部地区、静岡県中西部地区をそれぞれ代表する私立校対決。09年度に高校選手権と全日本ユース選手権でともに8強進出している藤枝明誠を今年の新人戦静岡王者・浜松開誠館が破った。序盤、まずは浜松開誠館がそのダイナミックな攻守で攻勢に出る。「プレミアリーグは上がっても自分たちはプレーできないですけど、この開誠館というクラブの歴史を変えるというか、もう一個上の舞台に行けば注目度も変わるし、後輩たちのサッカーに懸ける想いとかも変わってくると思う。そのためにもプレミア昇格はプレゼントとして残したい」と意気込むU-18日本代表CB松原后主将、静岡県選抜の左DF袴田裕太郎(ともに3年)、そして初先発の右DF大場正輝(2年)の長身3バックに支えられたチームは、飛び出しとロングスローが光るMF平山郁居(2年)やMF橋本泰志(3年)ら中盤やDFラインの選手も前線を追い越す動きを繰り返す。そしてセカンドボールを拾って連続攻撃を展開した。

 対する藤枝明誠は清水エスパルスジュニアユース時代に日本クラブユース選手権を制し、U-15世代の「オールスター戦」メニコンカップメンバーにも選出されているMF大塚聖磨主将(3年)が大黒柱。キープ力の高さを発揮する大塚を起点に左サイドから高速クロスを上げるSB井上彬と個人技光るMF佐藤諒の2年生コンビの攻撃力を活かして攻め返した。ただ、先にスコアを動かしたのは、ややゴール前での精度こそ欠いていたものの、果敢にアタックを繰り返す浜松開誠館だった。19分にパス交換からMF加藤衛司嘉(2年)が放った決定的な左足シュートはわずかにゴール右へ外れたものの25分、MF山崎俊輝(3年)の右クロスをファーサイドで受けたMF三好遼(3年)が再びクロスを入れると、これに反応した橋本が頭で合わせて先制した。

 その後試合は攻め合いに。ビルドアップ能力高いCB加藤啓太とCB新川海里(ともに3年)を起点にボールをつなぐ藤枝明誠は30分にパス交換から左サイドを突いた井上がクロス。42分には個人技で右サイドを破った大塚のクロスにMF芳野航(3年)が飛び込む。さらに43分にはFW宮木敬理(3年)のスルーパスから佐藤が抜け出しかけるシーンもあった。一方、浜松開誠館は元清水エスパルスFWの青嶋文明監督が「(前線の選手は)自分が一発というところがあった。大きな花火を打ち上げるような感覚でやっていた。パンパンパンとロケット花火のような感覚でやらないといけない連中なので今年の子たちは。それはハーフタイムに言いました」が振り返ったように、やや一発狙いの攻撃に陥りかけていたが、後半再び仕掛けの回数を増やして相手を突き放す。

 8分、最終ラインでインターセプトした袴田が一気にシュートレンジまでボールを運んで左足シュート。そして9分には右ロングスローから加藤が逆サイドのゴールネットへファインショットを突き刺す。さらにインターセプトから加藤が決定的なシュートを放つなど攻める浜松開誠館だったが、藤枝明誠も12分にGKからビルドアップして攻めると、右サイドから仕掛けた大塚が左足で鮮やかなミドルシュートを叩き込んで1点差とする。エースの一撃で勢いに乗った藤枝明誠。だが、田村和彦監督が「押されていても相手にストロングポイントを出させないこと。洞察力がついていないと拮抗した試合ではこうなってしまう」と指摘したように、ミスから相手に長所を出させてしまい、突き放されてしまう。

 22分、浜松開誠館は「ロングスローワー」平山の左ロングスローから交代出場のMF刑部天斗(3年)が左足シュートをゴール右隅へ突き刺した。青嶋監督が「人とリズムが違うことが特長」という10番の貴重な一撃で3-1。こちらも前線に仕掛けられる選手揃う藤枝明誠も大塚や宮木中心に反撃するが、浜松開誠館は打点の高いヘッドと素早い対応で背後への攻撃をケアする松原や1対1の守りで健闘した山崎らが得点を許さない。藤枝明誠はアディショナルタイムに右CKのこぼれ球をFW大石宏海(3年)が決めて1点差。だが同点に追いつくだけの時間は残されておらず、浜松開誠館が逃げ切った。 

 松原や袴田らタレントと、チームとしての総合力も高い今年の浜松開誠館。創部9年目で2月の新人戦を初制覇しプリンスリーグではジュビロ磐田U-18や現在首位の清水桜が丘高を破るなど優勝争いを演じているが、期待された総体予選では優勝した東海大翔洋高に0-1で敗れ、まさかの初戦敗退を喫した。その浜松開誠館は今夏、指揮官が「試合数を減らして練習をたくさんやりました。遠征に行っちゃうとコンディションの部分も気にしなければならなくなる。今年は練習をやり込みたかったので。ウチが狙っているベーシックなところをやりました」と説明したように、遠征にほとんど出ることなく、地元でのトレーニングで鍛え上げてきた。ルーズボールを自分たちに引き寄せる予測と動き、そしてどんどん縦に割って入っていく攻撃など中心にレベルアップ。この日はまだ攻守ともにゴール前での精度や一瞬の判断の部分が欠けていたが、松原が「敵が入っちゃうとミスが起きる。でも全国のトップレベルに入っていくには、ゴール前でのダイレクトの質、GKと1対1にさせるような一本の質を上げていかないと、そこに食い込めない」と語るように、選手権で初の全国出場を果たし、プレミアリーグ昇格も視野に入れるチームは妥協せずにそれに取り組み続けるつもりでいる。

 袴田が「(きょうは)3-1になった時点で3-1のまま勝ち切らなければいけないし、失点しないチームにならないと選手権も勝ち切れなくて終わってしまう。失点ゼロで行けるチームにならないといけない。(また)これからチームでそれぞれが高い意識もって、最終的には個人がレベルアップする必要がある。自分のウィークポイントや武器を伸ばさないといけない」。歴史を変えるためにはやらなければならないことはまだまだある。ただ、青嶋監督は「選手たちは良くやってくれている。試合が動く場面での精度、対応さえしっかりしてくれば、『憎らしいほど強いチームになる』とボクは思っていまして。試合を動かす力がつけば、横綱相撲を取りながら勝ち上がっていけるチームをつくっていけると思っています」。浜松開誠館イレブンはその期待に応えるべく成長し、この秋、冬に結果を出す。

(取材・文 吉田太郎)

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