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[選手権予選]「チーム力ではウチの方が上」日大藤沢が田場V弾で桐光学園の4連覇阻止!:神奈川

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[10.12 全国高校選手権神奈川県予選3回戦 桐光学園高 1-2 日大藤沢高 日大藤沢G]

 第93回全国高校サッカー選手権神奈川県予選は12日、3回戦を行い、4連覇を狙う桐光学園高と7年ぶりの全国大会出場を目指す日大藤沢高が激突。日大藤沢が注目MF田場ディエゴ(3年)の決勝ゴールによって2-1で勝ち、準々決勝進出を決めた。

「日藤らしく、ポイント作って、仕掛けに人数をかけてしっかり崩す。ダイナミックに崩すということができたことが勝因だったんじゃないかなと思いますね。上じゃ通用しない選手たちかもしれないですけど、何をやったらいいか分かる選手たちが多かったので。(選手に伝えたのは)『個人力は相手の方が上だ』と、でも『チーム力ではウチの方が上だ』と。いかにチームで戦うかということを言い続けてつくってきたチーム。チーム力では負けない自信があった。それが1点目の崩しや決勝点に繋がったのかなと思います」。日大藤沢の佐藤輝勝監督は王者撃破にも冷静さを保ちながら勝因について説明した。

 王者相手に自分たちのサッカーを貫いた。そしてベンチワークも含めて全員で掴んだ白星だ。桐光学園は序盤からシュートの意識が高く、遠目の位置からでもフィニッシュに持ち込んできた。5分には左中間からのFKをファーサイドで折り返し、これをMF桑原孝太郎(2年)が右足シュート。8分にもFW小川航基(2年)の落としから桑原が右足を振りぬく。だが、先制したのは立ち上がりから攻守の切り替え速く、テンションも高かった日大藤沢だった。9分、ショートパスがテンポ良く繋がり左サイドまでボールを運ぶと、スルーパスに反応したFW前田純(3年)が右足シュート。そのこぼれ球をMF今井裕太(3年)が右足で押し込んだ。

 ただ王者は動じない。12分、MF安田光希(2年)の左FKをファーサイドのCB井上瑠寧(3年)が頭で折り返すと、左サイドで詰めた小川が左足でゴールへ押し込んだ。あっという間の同点劇。ボールを奪ってから連動したパスワークで前線まで運んでくる桐光学園は、多少アバウトなボールを前線に入れても小川やFW佐藤孝太(3年)が高さ、キープ力を活かして連続攻撃に繋げてしまう。そして右サイドからSB池田友樹(3年)が長い距離を駆け上がってくるなどサイドからの分厚いサポートもあった。28分にはスルーパスで桑原が左サイドを突くと、PAへ入れたラストパスに小川が飛び込み、前半アディショナルタイムには小川の右足FKがゴールを襲うなど、精度と高さで相手に圧力をかけていく。

 ただ、日大藤沢も負けていない。CB小野寺健也(2年)やCB金井勇人(3年)が我慢強い守りで相手のアタックを跳ね返すと、前線で奮闘する前田を起点とした攻撃から、1.5列目に位置するFW中村恒貴(3年)、FW蛭田悠弥(2年)、そして今井がファーストDFをかわすなど足技を駆使しながら攻め返していく。21分には今井の右クロスから中村が右足ボレー。31分には混戦から小野寺の左足シュートがゴールを襲う。33分にもMF佐藤拓(3年)の右足シュートがゴールを襲うと、37分には中村の左クロスをファーサイドの前田が滞空時間の長い跳躍から頭で合わせる。これは桐光学園GK白坂颯馬主将(3年)の好守に阻まれたが、多彩な攻撃で勝ち越し点を狙いに行った。

 桐光学園は後半1分にDFをかわした安田が右足シュートを放つなど、後半も立ち上がりから積極的にシュートを放ち、セットプレーからゴールを脅かした。ただ、試合の軸はわずかに日大藤沢サイドに傾いているように映った。日大藤沢は5分にセカンドボールを拾ったMF西尾隼秀(2年)のスルーパスから今井が右中間を抜け出し、14分には右サイドの蛭田の折り返しから中村が右足を振りぬく。そして20分、日大藤沢は前線でチームを引っ張った前田に代えてFW住吉ジェラニレショーン(2年)を投入。直後に住吉が空中戦で競り勝ち、蛭田が左足シュートを放つと、25分には住吉が西尾とのワンツーでPAへ切れ込んで決定機を迎える。

 そして27分、日大藤沢の佐藤監督は温存していた“日藤のマラドーナ”ことエースMF田場をピッチへ送り出す。圧倒的な個人技を備える田場だが、この日はよりチームを機能させるため、勝つためにベンチスタート。「本当に子供たちを活かすという事が自分のサッカーの理念というか信念なので、チームを活かして最後個人をどう活かしてあげるか。チームが機能したときにはじめて個人が活きると思っている。逆はないんですね」という指揮官は「エースを温存していたのも、『どこで“爆弾”を落とすか』がこの試合のキーだと思っていたので。それを我慢できた。本当はもっと早く使いたいんですけど。結構我慢強いでしょう?(微笑)」。そして勝負どころで投入された“爆弾”、田場が試合を決めた。

 後半28分、日大藤沢は右FKからニアサイドに飛び込んだ住吉が決定的な右足ボレー。これは距離を詰めたGK白坂に阻まれたが35分、中央で住吉が空中戦を競り合うと、ボールがPA内右サイドに落ちる。これにGK白坂と田場が反応。田場が一瞬早くボールをつつくと、GKが弾いたボールを自ら拾い、バックステップから一気に加速してGKを振り切る。そしてDFのマークを外して放った左足シュートがゴール左隅へ突き刺さった。佐藤監督をはじめコーチ陣が拳を突き上げ、ピンクのユニフォームの選手たちが笑顔で10番に駆け寄る。その中でスタンドへ向けて走り出した田場はタッチライン際でスライディングすると、右手を突き上げてガッツポーズ。勝利へ大きく近づいた日大藤沢が熱い応援を繰り広げていた控え部員たちの前で歓喜に舞った。

 全く心折れた素振りを見せない桐光学園もすぐに反撃に転じ、39分には注目FWイサカ・ゼイン(2年)を投入。力ずくでゴールを奪いにいくが、GK鈴木孔明(2年)中心に崩れない日大藤沢に時間も上手く使われてしまい、試合終了の時を迎えた。王者の壁を破り、歓喜に沸く日大藤沢。佐藤監督は試合後、ピッチサイドに集まった部員の前で選手たちにメッセージを送った。「『ディエゴのゴールじゃないんだよ、みんなのゴールなんだよ』。それだけは最初に伝えておきました。それが分かればまだ強くなる」。エースが試合を決めたが、個人ではなく、チーム力で掴んだ白星。田場は「最高ですね。応援があったから。チームで取ったと監督も言っていましたし、チームのおかげです」と語り、今井は「(桐光学園に勝利して)自信つきましたけれど、まだ強いチームはあると思う。淵野辺(麻布大附高)にもトーナメントで2敗しているし、緩まずにやっていきたい」。王者を打ち倒したが、まだ3回戦を突破しただけ。目標の全国へ向けて緩むことなく全員で、全力で突っ走る。

(取材・文 吉田太郎)

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