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[関東大会]昨年度選手権全国4強の日大藤沢、今季無敗の西武台を破って関東制覇

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 平成27年度第58回関東高等学校サッカー大会は、1日に味の素フィールド西が丘でAグループ、Bグループの決勝戦を行い、1都7県の予選優勝チームで構成されたAグループは、昨年度全国高校選手権4強の日大藤沢高(神奈川)が3-1で西武台高(埼玉)を破って優勝を飾った。西武台は、公式戦12試合全勝と好調だったが、決勝戦は後半に失速し、今季初黒星を喫した。

 連係力の西武台と、破壊力の日大藤沢。前半は好対照な特徴が示される展開だった。序盤からリズム良く攻め込んだのは、西武台だった。とりわけ、2年生ボランチの今井祐太朗からサイドへと展開し、ボールと人が流れるように動きながらゴール前でシュートへ持ち込む攻撃が目を引いた。3トップの頂点に入ったFW川田航平も中盤に顔を出しては、ポストプレーとターンを巧みに使い分けて好機を演出した。

 しかし、日大藤沢には「一発」があった。25分、敵陣右サイドでパスを受けたMF興膳和希は、右への展開をフェイントに使って正面の相手を動かすと、すかさずミドルシュート。ファーサイドへ豪快に突き刺して1チャンスを物にした。しかし、西武台のリズムは狂わなかった。トップ下の山口大輝が左の橋本陸、右の新行内一輝と連係して次々にサイドを打開。前半終了2分前の38分、右サイドを押し込み、新行内が戻りながら送ったセンタリングに逆サイドの橋本が飛び込み、ヘディングシュートで同点とした。橋本は「空中戦の得意な3番とまともに体をぶつけても勝てない。ニアかファーで体を当てずに行こうと狙っていた」と日大藤沢のCB小野寺健也の背後に入り込んだ狙いを明かした。

 この試合内容に怒ったのが、日大藤沢の佐藤輝勝監督だった。「気持ちが引けている。ラッキーな1点で勝ち切れる試合じゃない。相手の11番(得点した橋本)のマークは、右DF福屋なのに、CBの小野寺に任せていた。GKの鈴木孔明もあと一歩前にいれば、弾いたボールはゴールの中ではなく外にあったはず。相手の監督が『下げたところを狙え』と言っている。オレは下げろなんて言っていない。お前たちはパスを戻すだろうと見られているんだぞ、それでいいのかと選手に言った」と3連戦の最終日で攻守の積極性を失ったチームにゲキを飛ばした。

 これが効いたのか、後半10分に「二発目」が飛び出した。左DF西尾隼秀のロングパスに反応したFW菅原大雅が連係ミスで釣り出された相手GKの鼻先でボールをさらい、一度は左サイドに流れたものの体勢を立て直して右足でシュート。「なかなかシュートを打てていなかったので、絶対に自分で打とうと思った。ファーとかを狙うのではなく、コンパクトに振ろうと思ったら、相手の股下しか空いていなかった」と振り返った菅原のシュートは、ニアサイドを鋭く射抜いてゴールネットを揺らした。菅原は、この試合が今季の公式戦における初先発。前日の準決勝で主力FW住吉ジェラニレショーンが負傷したことがきっかけで得たチャンスで結果を残してみせた。180cm超のがっしりとした体躯を誇り、佐藤監督も「仲間にもラグビーのゴールにシュートするなと言われるほど力を持て余しているけど、使いこなせるようになれば楽しみ」と期待を寄せる2年生ストライカーの一撃は、試合の流れをガラリと変えた。

 変化が如実に表れたのは、西武台の攻撃だった。左MF橋本は「取り返さなければと焦ってしまい、サイドの選手が中に入り込んだり、後ろから前線へ蹴ってしまったりして、うまくいかなかった」と悔しがった。急激に失速した西武台を尻目に、日大藤沢はカウンターでさらに揺さぶりをかけた。19分、先制点を挙げた興膳のスルーパスに右FW矢後佳也が抜け出し、GKとの1対1を決めてダメ押しの3点目で勝利を決定付けた。西武台はなかなかシュートに持ち込めない時間が続き、終盤は主将のCB小川匠を前線に上げたがパワープレーも実らず。左CKのこぼれ球を狙ったMF山口のシュートが防がれたところで、試合終了のホイッスルが鳴った。

 敗れた西武台は、今季初黒星。小川は「もう一度挑戦できる場に立てるように、高校総体で埼玉県の予選を勝たないといけない。もうすぐ予選が始まる。気落ちしないようにチームをまとめ直して、もうひと踏ん張りしたい。県予選で負けてしまっては、この大会でここまで来た経験も意味がなくなる」と13日に初戦を迎える高校総体予選に向けて、仕切り直しを誓った。一方、タイトルを勝ち得て弾みをつけた日大藤沢も同13日に高校総体の神奈川県予選で初戦を迎える。ドリブルなどで攻撃の起点となっていたMF蛭田悠弥は「目標は、昨季の全国ベスト4を超えること。まずは、神奈川を勝って、高校総体の全国大会に出場したい。そこで勝利に貢献して自分の評価も高めたい」と意気込みを話した。関東の舞台で互いの力を出し合った両チームの全国大会での再会はあるのか。これから佳境を迎える高校総体予選が注目される。

(取材・文 平野貴也)

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