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[プレミアリーグ参入戦]選手権予選敗退から立ち上がってきた両校の好勝負は徳島市立が制す!

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[12.11 高円宮杯プレミアリーグ参入戦1回戦 徳島市立高 1-1(PK5-4)立正大淞南高 コカ広島ス]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 プレミアリーグ参入戦1回戦が11日、広島県内各地で開催され、プリンスリーグ四国優勝の徳島市立高(徳島)とプリンスリーグ中国2位の立正大淞南高(島根)との一戦は1-1で突入したPK戦の末、徳島市立が5-4で勝利した。参入戦によって来年度のプレミアリーグ参入の権利を獲得できるのは4チーム。徳島市立は13日に行われるアルビレックス新潟U-18(北信越1、新潟)との2回戦で勝利すれば、初のプレミアリーグ参入が決まる。

 徳島市立の河野博幸監督は「ホンマ、最後ですからね。勝っても(計)2試合しかない。そういう意味では我慢強くなったと思いますけれどね。最後よく頑張った」と選手たちを賞賛した。徳島市立と立正大淞南はいずれも選手権県予選決勝で敗退。3年生にとっては高校生活最大の目標を失った。「(選手権の目標を失うと)リバウンドっていうかガクッと来るからね。こいつらもごっつい来とった」(河野監督)というが、徳島市立はそこから必死に切り替えてプリンスリーグ四国ラスト3試合を3連勝で逆転優勝。一方の立正大淞南も参入戦出場圏内をキープしてこの舞台に勝ち上がってきた。
 
 選手権予選敗退後の落胆は両チームともに大きかった。それでも両チームともにこの参入戦で何かを残そうと努力してきた。徳島市立は主将のCB奥田雄大が「どっか(全国へ)出れるだろうとか、甘い考えがあったからこそ負けたと思う。がっかりというか、落胆は大きかったんですけど、その中でも『終わった訳じゃない』という3年生がどんどん出てきてくれて、選手権前よりも活気づいて練習に励むことができた」と振り返り、この日後半残り7分に執念の同点ゴールを奪った立正大淞南の南健司監督も「(選手権出場権を失い)心折れているのに頑張れたから大したもの」と選手たちを絶賛。3年生にとっては負ければ本当に引退という中、互いが持ち味を出しあった好ゲームは徳島市立が制した。

 未明に強雨が降り続いた影響によってかなり水を含んだピッチ。特にタッチライン際でボールが止まる環境の中、徳島市立が幸先良くリードを奪う。前半8分、左サイドから中へ運んだMF吉田顕世が上手く縦にパスを入れると、10番MF岸田大世が小さなドリブルを入れてから右足一閃。DFの間を抜けたボールはゴール左隅へ吸い込まれた。前半はその後も徳島市立が優勢に試合を進める。普段よりも長めのボールを多用した徳島市立は「(相手の)DFラインにいい形でロングボール入れさせたら後ろもしんどくなると思っていた。前線からのプレスはできるだけ行けるように心がけていました」とMF郡紘平が語ったように、前線から献身的にボールを追い続け、またセカンドボールを郡やMF蔭西竜之介、岸田が次々と回収。高い位置から攻撃をスタートさせると、多くの選手が攻撃に絡みながらワンツーなど少ないタッチでのパスワークで立正大淞南の守りを切り崩しにかかった。

 立正大淞南も素早く前線にボールを入れて相手を押し下げ、右MF上村大悟の折り返しをMF白岩直斗が右足で狙うシーンや、白岩のスルーパスに上村が走りこむシーンもつくったが、徳島市立は空中戦、カバーリングで存在感を放つCB奥田やCB上野謙太朗中心に得点を許さない。前半は徳島市立が非常に良い流れのまま45分間を終えた。

 立正大淞南は後半5分、白岩が絶妙な切り返しから出したラストパスがFW杉本龍哉へ通るが、右足シュートはGK佐野雄亮がファインセーブ。 立正大淞南は後半開始から投入されたFW千川原慎や杉本が運動量を駆使してスイッチ役となり、攻撃の圧力を強める中でオープンスペースを取る回数も増やしていった。徳島市立もファーストディフェンスを個人技で剥がしてから連係で一気にPAへ入ってくる郡や岸田、そして身体能力高い攻撃的右SB吉川航平らが2点目のチャンスをつくり出してくる。立正大淞南のCB饗庭瑞生主将やCB武田航太朗に最後の局面で攻撃を跳ね返されていたものの、14分には右サイドでボールを奪い返したMF高畑勇人のクロスに郡が飛び込み、36分には上野が上げた左クロスからFW山本史弥が左足を振りぬいた。

 だが、オープンの撃ち合いは全国総体4強の立正大淞南が勝る。徳島市立の攻撃にミスが増え、逆にクロスがPAの選手に通り出していた立正大淞南はそのクロスから同点に追いついた。37分、左サイドで粘ってボールを繋ぐと、交代出場のFW井上海がグラウンダーのクロス。ニアサイドへ飛び込んだ白岩が1タッチでゴールへ沈めた。3年生中心に大興奮の立正大淞南スタンド。後半に主導権を握り返した勢いそのままに畳み掛けようとした。だが、徳島市立は再び自分たちを奮い立たせて勝ち越しを目指す。40分、山本の右クロスに決定的な形で吉田が飛び込むがシュートは枠上。43分にもゴール前のこぼれ球に山本が反応するが合わせることができなかった。それでも河野監督は「いつもだったら、(追いつかれて)『あぁ』となるところを頑張ったのは3年生の意地なんかな」。1-1の延長前半10分、立正大淞南は杉本とスイッチする形で井上海が決定機を迎えたが、右足シュートは徳島市立DFがブロック。徳島市立は押し込まれながらも耐えぬいてPK戦へと持ち込んだ。

 PK戦で先攻の徳島市立は2人目の吉川と4人目の蔭西が失敗。追い込まれてしまうが立正大淞南は決めれば勝利の決まる4人目・CB武田のシュートがクロスバーを叩き、5人目・杉本のシュートもゴール左へ外れてしまう。これで窮地を脱した徳島市立の6人目、7人目が決めたのに対し、立正大淞南は右サイドで奮闘していた7人目・SB藤井義治のシュートが枠を外れてしまう。この瞬間、徳島市立の勝利が決まった。

 過去に四国勢でプレミアリーグに所属したのは11、12年の愛媛U-18のみ。徳島市立が参入を決めれば、四国の高体連チームとしては初の快挙だ。選手権全国大会を最後の舞台にしたかったが、3年生の思いはラストゲームで勝って後輩たちに財産を残すことで統一されている。その思いを感じ取っている2年生MF郡は「ひとつ勝てたので勢いに乗って行きたいですね。選手権負けてここ一本にして目指してきたので気持ちで負けないように。次はユースとの戦いになる。ユースにも負けていないところがあると思うのでやっていきたい」と力を込め、奥田は「勝っても負けても最後なんで、最後は勝って残したいですし、後輩たちも自分たちをいい反面教師にしてほしいというか、来年ここで終わってほしくない。選手権の舞台で勝って終わってほしいんで。自分たちが全力でやって、来年プレミアで戦って選手権へという流れをつくってもらいたい」と語った。河野監督も「思い切りやるしか無い」というプレミア昇格決定戦。年代別日本代表経験者を複数擁する新潟U-18との試合は厳しいものになることが予想されるが、心折れるような状況から必死に立ち上がってきた徳島市立が全員であと1勝を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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