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[プレミアリーグ参入戦]「今年プレミア昇格して、来年プレミアで優勝する」横浜FMユースが涙のプレミア初昇格!

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[12.13 高円宮杯プレミアリーグ参入戦2回戦 横浜FMユース 3-0 新潟明訓高 広島一球]

 勝者が16年のプレミアリーグ参入権を勝ち取る高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 プレミアリーグ参入戦2回戦で横浜F・マリノスユース(関東1、神奈川)と新潟明訓高(北信越2、新潟)が対戦。後半にトップチームへ昇格するFW和田昌士主将の2得点と交代出場のFW岩城大助のゴールによって3得点を奪った横浜FMが3-0で勝ち、初のプレミアリーグ参入を決めた。

 今夏には6度目となる日本クラブユース選手権(U-18)大会優勝。Jユースカップ、そして全日本ユース選手権での優勝歴も持つ横浜FMが来年、ついに高校年代最高峰のリーグ戦であるプレミアリーグの舞台で戦う。和田は「今年のうちにプレミア昇格して、来年プレミアで優勝するという共通意識があるんで、後輩たちは来年それを成し遂げてくれると思いますし、それができる力が本当にあると思うんで託したい」と期待。2年生GK原田岳は「常に先を見ながら目の前の試合を大事にしてやってきました。嬉しいですけれど、来年プレミアで優勝すると言ってきたので、ここは通過点。来年は3冠取りたいです」と目標が来年、プレミアリーグで「真の日本一」を勝ち取ることと高校年代「3冠」にあることを口にした。

 スコアは3-0と開いたが、難しい試合だった。注目の10番、MF中村亮太朗を負傷で欠く新潟明訓はブロックディフェンスすることも想定して試合をスタートしたが、開始3分でいつも通りに前からチェイスする守備を選択。勇気を持ってライン設定を高くし、コンパクトな攻守を見せた。ボールは横浜FMに保持されたものの、FW中杉雄貴や和田の飛び出しをスピードあるCB苅部杜行やCB木村風輝がカバー。またオフサイドにかけて決定機をつくらせない。

 横浜FMは23分にMF小松駿太のインターセプトからトップチーム昇格のMF遠藤渓太がPAへ切れこむが、新潟明訓は木村がスライディングで阻止。29分には左のスペースへ抜けだした中杉が飛び出してきたGKよりも早く右足を振りぬいたが枠を外れ、34分にも右CKから中杉が完璧なタイミングでニアへ飛び込んだが、距離を詰めていたGK杉本陸にクリアされてしまう。新潟明訓の統率取れた守りに加え、「負けるのを怖れてしまっていて、受け身になってしまっていた」(和田)という横浜FMは後ろ向きなパス、プレーが増えてしまう。中盤で小松がよくセカンドボールを回収し、DFラインも隙のない守りで前半は相手をシュート1本に抑えたが、攻撃面では42分にMF堀研太の突破から遠藤が右足シュートを放つも枠を捉えず。0-0で折り返してしまう。

 横浜FMの松橋力蔵監督は試合前、「今までの実績は関係ない」「きょうのゲームを左右するのは勝つっていう信念だ」と選手たちに言って送り出したというが、「前半はそういうものが見えなかった。(ハーフタイムには)『後半は負けるのが怖くて、怖気づいて、そういうプレーは見たくない』」と鼓舞。前半欠けていた「心の底から勝ちたい」という気持ち、そして「勝つために自分で削って何かしないのではなくて、勝つために自分の良さをチームに活かせ。ずっと言っている、『個で勝たせろ、自分で勝たせろ』」という部分を選手たちに求めた。

 和田は「ハーフタイムに力さんの言葉があってからは前に前にプレー出来たのでそれが勝因になった。これ(前半のプレー)ではダメだと思いましたし、負けるのが嫌だじゃなくて勝つという共通意識をもってみんなでできたので得点に繋がったと思います」と振り返る。先制点を決めたのはその和田だった。後半6分、左CKのクリアボールを左サイドへ繋ぐと、堀が絶妙なタッチで寄せてきたDFと入れ替わるように抜き去り、グラウンダーのラストパス。ファーサイドで待ち構えていた和田が右足を伸ばしてゴールへ押し込んだ。新潟明訓も後半、ボールを保持する時間を増やし、4分に左サイドから切れ込んだ新潟明訓MF関口正大が右足シュート。10分にはMF加藤潤主将の絶妙な左FKを交代出場のFW中野諒がダイビングヘッドで狙う。連係のいい守備から加藤が何度もボールを奪い攻撃に転じたが、田中健二監督が「切り替えが凄く速くて、人との距離が近かったので切り返すと引っかかってしまう」と評した横浜FMの前に突破を阻まれ、その守備陣形を崩すことができない。

 逆に横浜FMは15分に左クロスから中杉が決定的なシュート。16分にも遠藤がドリブル突破から決定的な一撃を放ったが、苅部にクリアされてしまう。それでも横浜FMは後半20分、スーパーゴールで新潟明訓を突き放す。22分、左スローインからボールを繋ぐと、遠藤が左タッチライン際から左足クロスを入れる。CBの頭上を越えたボールを胸でコントロールした和田が「GK出てきているのが関節視野で見えていて、一瞬の判断で決めることができてよかった」と落ち際を倒れながらの左足ボレー。咄嗟の判断でループ気味に放たれた一撃はGKの指先をかすめてゴールへ吸い込まれた。反撃する新潟明訓はバイタルエリアからのループパスを多用。DFラインのバランスを崩し、こぼれ球を拾ってまた攻撃しようとする。MF高橋怜大が左足シュートを飛ばしたほか、敵陣で獲得したFKから攻めたが、プリンスリーグ関東の終盤戦2試合から3試合連続無失点中の横浜FMに決定的なシーンをつくらせてもらえず。逆に横浜FMは後半アディショナルタイム、右サイドで小松からのパスを受けた和田がPAへスルーパスを通し、これを岩城が右足でゴール。3-0で勝利した。
 
 プレミア昇格が決まると、「公式戦最後の試合で勝てたことは本当に嬉しかったですし、今までやってきたことが本当にこみ上げてきて泣いちゃいましたね」という和田をはじめとした3年生たちは涙。また、遠藤は「試合に多く出ていたのは2年生だし、少ない3年生で怪我人とかもいたんですけど、今回ベンチに入っていない人たちも応援のメッセージもくれたし、その中で(8人の)少ない3年生が頑張って有望な1、2年生にプレミアリーグをプレゼントできて良かったです」。松橋監督は「泣くなんて思わなかったです。それくらい強い気持ちを持っていたのかと」と驚きつつも目を細めていた。

 原田が「全員優しくて背中で引っ張ってくれる先輩」と評した3年生とともに戦った最終戦の後半、勝つために個々がチームのために良さを発揮した。1、2年生には全国連覇を経験した国体神奈川県選抜の主力ら実力者たちがズラリと揃うが、課題も見つかった新潟明訓戦からまたレベルアップしなかれば目標を達成することはできない。一から競争して個で勝つチーム、集団で勝つチームへ。16年、名門・横浜FMユースが“本来、いるべき場所”とも言えるプレミアリーグで力を磨く。

(取材・文 吉田太郎)
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