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2冠メンバーに加えた勢い。青森山田はファインゴールの中山ら選手権サブ組たちも輝く

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後半38分、青森山田高は交代出場の左SB中山純希(右)が4点目のゴール

[1.20 練習試合 青森山田高 4-0 ストラカンFF セント・ジョージズ・パーク]

 青森山田高の指揮を執った上田大貴コーチは「選手権でもサブに甘んじたメンバーだったり、最後ベンチから漏れてしまったメンバーだったりという子がいたんですけれども、彼らが最後に本当に戦うというところを示してくれたのが良かったなと思います」とこれまで大舞台での出場機会に恵まれていなかった3年生たちを賞賛した。今回のイングランド遠征で青森山田はGK廣末陸(3年、FC東京)、10番MF高橋壱晟(3年、千葉)、MF郷家友太(2年)、CB小山内慎一郎(2年)という2冠メンバーの主力4人が不在。MF住永翔主将(3年)をはじめとした主力組と、選手権の登録メンバーだった3年たちを中心としたメンバー構成で臨んでいた。

 その中で選手権ではサブ組だったFW佐々木快(3年)とCB工藤聖人(3年)が2試合ともに先発。この日は佐々木が絶妙な右クロスで先制点をアシストし、工藤は2試合無失点の立て役者となった。加えて選手権では選手登録こそされていたものの、ベンチに入っていなかった選手たちが躍動。この日右MFで先発した永島卓徒(3年)は身体を張ったボールキープによって敵陣でFKを獲得するなどアグレッシブなプレーを見せ、初戦で先発したMF小堀雄大(3年)は左足を駆使してこの日もチャンスに絡んだ。またCB新村隆司(3年)や右SB新井健太郎(3年)はゴール前での身体を張った守備など責任感を感じさせるプレーでチームに貢献。そして選手権でサポート役だったFW黒田凱(3年)と伊藤翼(3年)はイングランドのピッチで存分に走り回った。

 3年生たちの全力プレーが光ったが、その中で結果を残したのが、左SB中山純希(3年)だ。後半から出場した中山は38分に混戦から右足シュートをゴール右隅へ突き刺した。左利きの中山だが「右苦手なんですけど、(中学から通じて)6年間山田にいて、ずっと練習してきた成果がここで出せたなと思います。自分守備なんで全然点取る選手なんかじゃないんですけど、最後の最後あそこで点取れたのはいい仕事したなと思います」と微笑むファインショット。そしてゴールでチームを興奮させた中山は「最後上田さんも言っていたんですけど、100パーセントでやる中でああいうレベル高い相手とやれて、その中で楽しめたというのが自分にとって一番いい経験になったかなと思っています。(主力メンバーたちとプレーして)自分の良さが出せた。良い試合になったと思います」と喜んだ。

 選手権ではAチームに帯同していたものの、プレーで貢献することができなかった選手たちが思いをぶつけた。新井は「選手権中は自分と新村と小堀(雄大)が同じ部屋で3人でずっと『試合出たい』と話していて、優勝したんですけど、自分たちたち素直には喜べなくて、悔しい気持ちでこの遠征に懸けていました」と語る。プレーで主力組に劣るのは確か。それでも強い思いを持つ彼らはチームに勢いをもたらした。住永は「トップのチームじゃなくてBのプリンス(リーグ東北)とかに出ていた選手は、技術よりもそっち(声、元気)の方が強いので彼らが出てきたことで試合が活気づきましたし、それは持ち味だと思います。俺らはボールの動かしとか技術の面でカバーして、彼らが気迫とかで相手を圧倒して、両方で相手は嫌だったんじゃないですか」と説明し、その力がチームを後押ししたことを認めていた。

 主力組にとっても、サブ組だった選手にとってもこれが高校生活ラストゲーム。そこで選手権に出場していなかったサブ組の選手たちが好プレーを見せたことは、また青森山田の層の厚さを印象づけた。それは特別な思いも加えて表現された輝き。中山は「いつもAでトップでかかわれていない。最後の最後アピールしようというのがあって、気持ち出した結果だと思います。やっていて楽しかったです」。主力組とこれまでサブ組だった選手の力を融合させた青森山田が、最終戦で90分間を楽しんで白星を勝ち取った。

(取材・文 吉田太郎)

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