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[新人戦]今年も全国上位の実力、昨夏全国4強の昌平が浦和東との強豪対決制す:埼玉

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前半39分、昌平高FW佐相壱明(左)が先制ゴール

[2.4 埼玉県高校新人大会1回戦 昌平高 2-0 浦和東高 昌平高G]

 躍進は1年で終わりそうにない。平成28年度 埼玉県高校サッカー新人大会が4日に開幕した。選手権予選8強の8チームと支部予選を勝ち抜いた8校の計16チームがトーナメント戦で優勝を争う。昨夏の全国高校総体4強で新人戦連覇を目指す昌平高浦和東高と戦い、2-0で勝った。昌平は5日の準々決勝で聖望学園高と戦う。

 1回戦の注目カードは昌平が快勝を収めた。負傷明けの左SB塩野碧斗(2年)が先発を外れたものの、全国総体4強メンバーのCB石井優輝主将(2年)とCB関根浩平(1年)、GK緑川光希(2年)という守備の3本柱と新司令塔のMF山下勇希(2年)らが先発した昌平は立ち上がりから圧倒的にボールを支配して試合を進めていく。

 藤島崇之監督も「思いの外、ボールが動くなと。やってきたことができていた」と振り返ったように、敵陣でもボールを失うことなく攻め続けた昌平はショートコンビネーションに個の仕掛けも交えて浦和東の守りを崩しにかかる。別格の存在感を示したボランチの山下がファーストタッチでDFを剥がして前進。角度をつけた縦パスやワンツーからPAへ割って入るなど攻撃の中心として君臨すれば、エースFW佐相壱明(2年)や1年生の10番MF渋屋航平が推進力ある動きでシュートまで持ち込んでいく。

 また指揮官が「ポテンシャルはウチにいないタイプ。あの身長で速い」と期待する右MF伊藤雄教(1年)が狭いDF間をドリブルで抜けてチャンスに絡むなど浦和東に圧力をかけた。そして22分、28分と相手の背後を突いた佐相が決定的なシュート。一方の浦和東はインフルエンザの影響で本来の主力数人が先発を外れる状況だったが、押し込まれて崩されながらもGK高草木天平(2年)の好セーブや新チームの中軸として期待されるCB市村悠太朗(2年)、CB片岡瑞樹(2年)がギリギリのところでクリアするなど意識高い守備を維持して0-0で食い下がっていた。

 それでも39分、昌平は左MF原田虹輝(1年)がワンツーから右足シュート。クロスバーに当たって跳ね返ったボールを佐相が右足で決めて先制した。後半も昌平が攻める時間帯が続く。伊藤とSB吉田航(1年)の連係で右サイドを崩し、原田がクロスバー直撃のシュートを放つなど一気に点差を開こうとする。そしてGK緑川が「まだまだですけれども、去年のチームよりは前から守備する意識は強くなったと思います」という昌平はカウンターへ移ろうとする浦和東を高い位置でストップ。山下が立て続けにインターセプトするなど浦和東が攻めきることを許さない。

 守る時間の長かった浦和東だが、地区予選5戦4発のFW小川翼(1年)の高さやMF中野音央(1年)の正確な配球、そして左MF野口滉平(2年)の突破などで反撃。そして後半14分にこの日先発を外れていたチームの柱・CB青木兵吾(2年)を投入して市村を中盤に上げると、徐々にサイドで崩しの形ができていく。体調不良から回復してきた本来の主力選手たちをピッチへ送り出した終盤はMF小林雄太(2年)の突破などでチャンスも。そして31分には敵陣でボールを奪い返すと、左SB笹沼龍也(2年)のクロスをファーサイドの小川が頭で折り返し、MF石塚陸斗(1年)が右足を振り抜いた。だが、シュートは枠上。絶好の同点機を逃した浦和東に対し、昌平は35分に山下のスルーパスを原田が左足で決めて2-0で快勝した。

 昌平はオーシャンカップ決勝で流通経済大柏高(千葉)にPK戦で敗れているものの、新チームは練習試合含めて負け無し。初出場の全国総体で4強入りし、MF針谷岳晃(現磐田)とMF松本泰志(現広島)という2人のJリーガーを輩出するなど躍進を遂げた昨年に続いて新チームも強さを示している。今や埼玉県内では技術レベル高い昌平をリスペクトし、対戦相手が守りを固めてくることがほとんど。藤島監督は「相手が戦略的にケアしてくれることはある意味ステージアップしたと思っている」と語りつつも、そこに満足するのではなく、上手さの部分に加えて、力強さの部分を高めるなど昨年とは違う選手たちで違う色のサッカーを表現し、ゴールを取り切る強さや勝ち切る強さを求めていくことを口にした。

 昨年からの主軸である石井や緑川に加えて、次のブレイク候補である山下や佐相、伊藤と言ったレベル高い攻撃タレントを今年も擁していることを印象づけた。現時点では崩しの精度など昨年に劣るのは確かで、よりプレッシャーの速い相手との対戦や、天然芝でのプレーなど未知数な部分もあるが、十分に昨年以上の成績も期待できる戦力。主将の石井は「5冠全部取るような勢いで、去年の記録を越えようとみんなで言っている。そのためにはまだ弱い。個のスキルであったり、一つ一つの精度とかパスがズレていたりそういうところもある。去年に比べて突出した個はいないですけど、チーム全体でやっていきたい」。目標は県内5冠、そして日本一。新生・昌平が今年も高校サッカーシーンでインパクトを残す。

(取材・文 吉田太郎)

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