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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第60回:夏の王者に7発(近大附高)

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“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 ゴールを奪う度、喜びだけでなく、楽しさも沸き上がってきた。面白くて仕方がない。快楽だ。夏の王者に7発もぶちこんだ。全国各地の強豪校が参加している「ジャパンユースプーマスーパーリーグ」の決勝戦が1日に時之栖スポーツセンターうさぎ島グラウンドで行われ、トップリーグは近大附高が7-2でインターハイ王者の流通経済大柏高を破って覇者となった。近大附の山田稔監督は「前の3人のプレッシャーがよく効いた。今日は、出来過ぎだけど、自信になったと思う」と手ごたえを話した。

 前半9分に左CKをDF白木原一輝が合わせて先制。その後も3-4-3の布陣で積極的にプレスをかけてボールを奪い、密集の連係からサイドを切り崩して次々にゴールを奪った。夏の王者を圧倒する喜びは、隠せない。後半に入ると、ヒールキックやノールックパスで相手をいなし、味方のシュートのこぼれ球をFW河村慶人が押し込んで5点目、9分後に河村の突破でPKを得て6点目。さらにFKを河村が頭で合わせて7点。終盤に2点を失ったものの、相手選手に「こんな負け方はしたことがない」とショックを与える大勝劇とした。

 近大附の主将、白木原は「(大差での勝利には)自分でも驚きましたが、相手が日本一でも気持ちでは絶対に負けへんというところを押し出して戦った」と手ごたえを語り、2得点を挙げた河村は「良い守備から良い攻撃につなげて、チャンスをしっかり決めることができた。楽しかったです」と喜んだ。

 間違いなく、強い。今季は、春から好調でプリンスリーグ関西では2位につけている。ただ、インターハイ(高校総体)予選では、決勝リーグに進む手前で常翔学園高に足下をすくわれた。ゲームメーカーのMF内田将太は「大阪を獲るのが全国で勝つより大変だと思っている。インターハイは、先を見過ぎたので、一戦一戦進みたい」と勝負の場にかける意気込みを語った。

 2週間後の15日に全国高校選手権の大阪府予選4回戦が行われ、千里青雲高との初戦を迎える。今年の大阪は混戦模様。昨季の選手権4強の東海大仰星高、インターハイ16強の阪南大高、プロ内定選手3人を擁する興國高、プリンス関西首位の大阪桐蔭高……。履正社高や関西大一高も健在だ。それでも、夢舞台の切符は1枚しかない。河村は「この試合をきっかけに、自信を持って臨みたい」と言った。同じ轍は踏まない。王者から奪った7得点の自信を過信とせず、覚悟を持って集大成の舞台に挑む。


■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

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